【約束の地】ユダヤ人がパレスチナに建国した理由

 

イスラエルがイスラム武装組織「ハマス」の奇襲攻撃を受けて、1000人以上が亡くなり、3000人以上が負傷者した。
これに対し、イスラエルは遺憾の意を表明した、というレベルで済むわけない。
イスラエルはすぐに報復を宣言し、ハマスの拠点のあるガザを爆撃して現在は戦争状態に入っている。
ハマスは地獄の門を開けてしまったのだ。

2023年パレスチナ・イスラエル戦争

 

イスラエルでは、ユダヤ教は国教に指定されていないが、この宗教はイスラエル社会に大きな影響を与えている。
20年ほど前に旅行した時、イスラエルのマクドナルドではチーズバーガーが無いと聞いてビックリした。
理由は、ユダヤ教の聖書に「母の乳の中で子ヤギを煮てはならない」と書かれているため。
ミルクと肉を混ぜた食べ物は禁じられているから、チーズバーガーはユダヤ教徒にとってNGフードになる。
*ユダヤ教の教えに沿って調理されたチーズバーガーならいい。

ユダヤ教徒が「チーズバーガーと親子丼」を食べられない理由

無宗教の自分からすると、聖書とマクドナルドが結びつくというのは新鮮なカルチャーショック。

 

 

上がハマスの襲撃で、下がイスラエルの報復攻撃

 

 

75年前まで、自分たちの国がなかったユダヤ人は、ヨーロッパの各国で「居候(いそうろう)」のような弱い立場にいて、迫害を受け続けてきた。
第二次世界大戦中にはそれがピークに達し、ナチス=ドイツによって600万人が殺害される。
ユダヤ人には、安全を保障してくれる国がどうしても必要だったため、1948年にイスラエルを建国した。
歴史の「タラレバ定食」はお代わり自由でキリがないのだけど、もし、ユダヤ人が地球上の別の場所にイスラエルを建国していたら、現在のパレスチナ問題は起こっていなかった。
でも、ユダヤ人にその選択肢は無く、パレスチナは唯一無二の土地だったらしい。

イスラエルを旅行中に出会ったユダヤ人と話をしていると、彼はこの場所(パレスチナ)以外はダメだと強調した。
もし、これが単なる土地の問題なら、別の場所でイスラエルを建国し、ユダヤ人がそこに住むこともできた。そうしていれば、今のようアラブ人との争いもなかっただろう。
でも、この地は神がユダヤ人に与えた特別なところだから、ほかの地域に国をつくることはできないと彼は主張する。

「なるほど。チーズバーガーと同じで、建国の根拠も聖書の記述か」と発想の違いに驚いた思い出がある。
こういう考え方は日本人にはない。
日本人が土地の領有権を主張する場合、その根拠は法律で、古事記にある神話を持ち出す人はいないだろう。

でも、ユダヤ人は違う。
2019年に、イスラエルの国連大使が国連安全保障理事会で、ユダヤ人がパレスチナの地を領有する根拠として、聖書の記述を挙げた。
大使は実際に聖書を掲げ、「神がカナンの地(パレスチナ)をあなた(ユダヤ人)の子孫に与え、永遠の所有物と認めた」と話す。
そして彼は、「これが私たちの土地の証書です」と胸を張る。

もちろん、イスラエルの大使は聖書のほかにも、歴史や国際法の観点からも、パレスチナがイスラエルのものである理由を説明した。
彼のと主張によると、イスラム教の聖典であるクルアーン(コーラン)も、イスラエルの土地をユダヤ人に与えるという神の行為(契約)を認めている。

 

宗教を根拠にして、実際に聖書を持ち出して国連で自分たちの正統性を主張する発想は、日本人のものじゃない。
ただ、無宗教の日本人の常識からすると違和感しかなくても、このやり方はユダヤ教・キリスト教・イスラム教の世界では現実的で効果的かも。
そう思わなかったら、イスラエル大使は国連安全保障理事会の場に聖書を持ってこなかったはずだ。
「神が与えた約束の地」という言葉は、ボクには異世界冒険アニメのセリフにしか聞こえないが、ユダヤ人はそれに基づいてイスラエルを建国した。
それは「神聖な行為(divine deed)」だから、絶対に譲ることはできない。
かといって、パレスチナ人がそれに納得するわけないから、対立は終わらない。

 

おまけ

先日、在東京イスラエル大使館が「x」にこんな投稿をした。

 

キリストの幕屋(まくや)」は戦後の日本でうまれたキリスト教系の新宗教で、イスラエルを重視し、ユダヤ人を支援している団体らしい。
イスラエルという国はいろんな面で宗教と結びついる。

 

 

”ゆとり世代”でも分かるパレスチナ問題の説明。

ユダヤ教徒のイスラエル人は、京都の先斗町で何を思う?

日本人の誇り・ユダヤ人を助けた杉原千畝と樋口季一郎。

ナチスによるユダヤ人迫害の実態・”絶望の航海”とホロコースト

”国のない民”ユダヤ人とクルド人①日本にはないディアスポラ

日本とイスラエル:なんでユダヤ人は飛騨高山に行くのか?

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。