初めて地震を経験したアフリカ人、日本人の見方が一変する

 

日本の学校で9月というと、一般的には夏休みが終わって、授業がはじまるウツな時期。
でも、日本の大学に留学している外国人の中には、この時期に卒業する人も多いから、彼らにとっては涙のシーズンになる。
知人のルワンダ人留学生がことしの9月に大学を卒業して、母国へ帰国すると聞いたから、その前に彼と会って話をした。
ということで今回は、彼が日本で初めて経験したことや日本人の印象を紹介しようと思う。

 

でもその前に、「ルワンダという国を聞いたのが初めて」という人もいるだろうから、基本情報を確認しておこう。

面積:2.63万平方キロメートル(九州の面積のおよそ7割)
人口:1,263万人
首都:キガリ
民族:フツ、ツチ、トゥワ
言語:ルワンダ語、英語、フランス語、スワヒリ語
宗教:キリスト教(カトリック、プロテスタント)、イスラム教

ソース:外務省ホームページ「ルワンダ共和国(Republic of Rwanda)基礎データ

 

西アフリカのセネガル

 

ルワンダ人の彼が日本で初めて経験したことは、寿司やラーメンを食べる、茶道体験をする、高速鉄道(新幹線)に乗るなどいろいろある。
これらはポジティブなもので、きっと日本の良い思い出になる。
ネガティブな初体験は少ないが、彼にとって、いちばん印象に残っているのは地震で、これはすでにトラウマになっているらしい。
ルワンダには津波も地震もないから、彼の地震耐性はゼロ。

ある日、彼が寮の部屋で寝ていると、午前3時ごろに異変を感じて飛び起きた。
夢…じゃない。間違いなく、部屋が揺れている。これは地震だ!
彼は初めての経験にとんでもない恐怖を感じて、裸足で外へ出ようとしたが、この建物は耐震性が高いと聞いたのを思い出したから、そのまま部屋にいることにした。
「どうしたらいい? オレはここで死ぬのか?」と考えているうちに揺れは収まる。
でも、その後は、彼は興奮してまったく眠ることができず、そのまま朝になったから大学へ行った。

日本人の友人に、あの地震が発生したときに何をしたのか聞くと、

「ああ、地震があったみたいだねー。気づかなかったから、そのまま寝てた」

と笑って言うから、彼は本当に驚いた。
彼にはまだ恐怖と興奮が残っていたから、あの揺れの中で寝ていたというのは信じられない。

別の日本人に聞くと、彼は「ボクは気づいたよ。朝3時に起こされるとかマジ迷惑」と不機嫌そうに言うだけで、あの揺れに対する恐怖はまったくない。
地震対策についてについて尋ねても、2人とも特に備えをしていなかったから、「そういうのは市のウェブサイトを見て。外国人向けに英語で書いてあるから、それを見た方が確実」と言うだけ。
日本に住むなら、早く地震に慣れたほうがいいとアドバイスをもらったが、このアフリカ人は「納豆なら可能性はあるが、あれは絶対に不可能だ!」と腹が立った。

 

2回めの地震は、日本人の友だちのアパートにいたときに来た。
だから、今度は1人じゃなくて仲間がいる。
それでも、揺れを感じると彼は緊張し、恐怖で体がこわばった。が、日本人の2人はリラックスした感じで、

「この揺れなら、震度2か3かな。大丈夫、たぶんすぐに収まるから」

といったことを言う。
実際、すぐに地震は消え、友だちは何事もなかったように、ニコニコしながら会話を楽しんでいる。
彼には信じがたい光景だ。

アフリカ人の彼からすると、日本人は声が小さく、目もしっかり合わせないし、自信がないように感じることがよくある。
でも、この場ではそれが逆転した。
おびえているのは自分だけで、2人はとても冷静で平然としている。
彼らを見ていると、1人でいた時とは違って心が落ち着いてきた。
友人が自分よりも強そうに見えたのはこれが初めてで、このルワンダ人の中では、日本人に対する印象が変わった。

 

世界的な先進国である日本では、とても便利な生活ができて、ルワンダの水準からすると未来社会だから、この国を離れることには残念な気持ちがある。
でも、地面が揺れる恐怖を考えると、ルワンダに戻ることには大きな安心感を感じる。
だから、ある意味、地震は彼の日本への未練を断ち切ってくれたことになるらしい。

ほとんどの日本人は、アフリカを「恐ろしいところ」と考えていると思う。
もし会社で上司から、「君にはアフリカに住んでもらう」と言われたら、間違いなく「メ」ではないと分かったら、転職を考えるだろう。
でも、じつは日本にも、アフリカ人にとってはトラウマレベルの恐怖が存在するのだ。
少なくとも、初めて地震を経験したこのルワンダ人にとっては。

 

たまたま『クォーラ』で、外国人によるこんな質問を見つけた。

「日本人は地震に慣れているから驚かない。もしあなたが外国人で、日本で地震を経験したことがあるなら、どのくらい怖かったですか?」

これに対して、日本で地震を経験したアメリカ人がこう答えた。

「It was indeed quite scary, and I grabbed the dog and dove under a table when my wife yelled to do so. I come from Texas, so I hadn’t experienced a quake before at all.」

(それは本当にとても怖かった。妻の叫び声を聞いて、私は犬をつかんでテーブルの下に飛び込んだ。テキサス出身なので、地震はこれまで一度も経験したことがなかった。)

でも、その場にいた日本人の娘は、ベッドの上で笑っていた(sat on her bed laughing)。
きっと彼女には、大した揺れじゃないのに、大人たちが必死になっている様子が面白かったのだろう。
地震のときの日本人の頼もしさは異常。

 

 

日本はどんな国? 在日外国人から見たいろんな日本 「目次」

アフリカ人と日本人の宗教観 神社で「恐怖」を感じたわけ

【白人の責務】アフリカ・中東で直線の国境が多い悲しい理由

【ルワンダ虐殺】責任は認めるが、謝罪は拒否するヨーロッパ

日本にいるルワンダ人の話 有名なもの・治安・驚いたこと

 

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ABOUTこの記事をかいた人

今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。