「経済大国」の終了 変わる日本と東南アジア諸国の関係

 

では、クエスチョン。
ASEAN(アセアン:東南アジア諸国連合)を構成する国を5つ挙げてほしい。

 

 

答え:インドネシア、カンボジア、シンガポール、タイ、フィリピン、ブルネイ、ベトナム、マレーシア、ミャンマー、ラオスの中の5つを言えたらOK。
このところ ASEANの経済成長はウナギのぼりどころか、昇龍拳のように上昇していて、世界的にも注目されている。
それで、日本人も意識を変えないといけないようだ。

 

カンボジアの「キズナ橋」
日本の支援を受けて建設されたことを示している。

 

ことしは日本とASEANが交流をはじめて50周年になるから、それを記念して東京で特別首脳会議が行われた。

ASEANは約6億7千万人の人口を抱えていて、経済力(GDP)は数年以内に日本を上回るという試算もある。
そんなことから、「日本が支援する側に立つだけの時代は終わった」と朝日新聞の社説が意識改革をうながした。(2023年12月19日)

日本とASEAN 学び合う関係へ深化を

日本も ASEANの活力を認め、ときには学びながら真のパートナーシップを築くべきだと主張する。

読売新聞も社説で ASEANとの関係を取り上げた。(2023/12/19)

日ASEAN 50年で培った信頼生かしたい

読売新聞も同じように、日本が ASEANに一方的に援助するという考え方はもう古いと指摘。
これからは対等なパートナーとして、豊かな経済・社会を共に創る「共創」という理念が重要だと。
日本はこれまで政府開発援助(ODA)で ASEANを支援してきた。
その取り組みは高く評価され、日本は東南アジアで大きな信頼を得ている。
この財産を生かして、日本と ASEANは経済や安全保障などの分野で協力し合うべきと読売新聞は訴える。

 

日本をテーマにして作られたタイのカフェ「モミジ」
タイの人たちは昭和の日本が好きなのか?

 

東南アジアに対する日本人の見方は、その人の年齢や経験によって違うはず。
25年ほど前は、日本が経済的には圧倒的に優位な立場にいたから、普通の大学生だったボクがタイやマレーシアへ行くと、とつぜん物価が安くなってプチ金持ちに変身した。
当時は円が強く、一泊200円以下でゲストハウスに泊まることも可能。
大学生の分際で、タクシーをバンバン使って移動したり、5つ星ホテルのバイキングで食事を楽しんだりして、優雅で快適に旅行することができた。

「日本の支援で〜ができました」みたいな感謝の気持ちを伝える看板を見たり、現地の人から「日本の支援で生活がラクになった」と聞いたりすると、日本の影響力の強さを感じて誇らしく、うれしかった。
こんな経験をしたボクは、「もうそんな時代は終わった」と認識を変えないといけないストライクゾーンの真ん中にいる。

 

日本の経済的な優位性が無くなりつつあることは、タイやマレーシアでセカンドライフを送っている日本人の SNS投稿から気づいていた。
現地では物価高がどんどん上がり、円の価値はそれと反比例するように下がっているから、彼らの生活は底なしで厳しくなりつつある。
ある日本人は、こんな状況はまったく想像していなかったと不満をもらし、フィリピンやタイでセカンドライフを考えている人は、もう一度よく検討したほうがいいとアドバイスした。
思い描いたとおりの生活を送れる人は少なくなっているらしい。
そんな投稿にタイにいる日本人が、自分はいままでは東南アジアに対して「上から目線」だったと気づいたとコメントする。
これにはボクも同感。
自分の国を自慢や誇りに思うことを「ホルホル」と言う。
いまの日本人はそんなことができる状況にない。

 

最後に東南アジアを訪れたのは10年ぐらい前だけど、現地に住んでる日本人が SNSで生活苦を訴えることが多くなっていたから、だいたいの雰囲気や日本のパワーダウンは知っていた。
それでも、ことしの夏ごろ、京都でタクシードライバーをしている人の投稿にはビックリした。
そのドライバーが言うには、最近、東南アジアから旅行に来た若者が普通にタクシーを使い、 6000円を超える額を払っている。
こんなコトはこれまでなかったという。
ドライバー的にはうれしい反面、日本の地盤沈下を感じて、この国の未来が心配になると書く。
この投稿だけを見ると、かつての自分と立場が逆転したようだ。

 

もちろん、いまでも日本は ASEANに対して経済的には上位にいる。が、それはもうすぐ過去形になりそう。
日本が成長するためには、東南アジア諸国を対等なパートナーとして関係を築き直し、その力を利用しないといけなくなった。
読売新聞が指摘したように、日本は東南アジアで信頼されているから、その財産を積極的にいかすべき。
アジアに対して、日本はまだ経済大国と思っちゃってる人は、古い意識や情報をアプデしたほうがいい。

 

 

東南アジアを知りましょ! 「目次」 ②

「人前でキス」の感覚は日本人≒東南アジアで、韓国人とは違う

東南アジアで見つけた日本の支援。誇らしく感じた7つのもの。

日本はどんな国?外国人(インドネシア人)の感想、違いや特

東南アジアと韓国(と日本)の人たちは、お互いをこう見てる

「反日」暴動もあったけど、今は90%が日本好きのインドネシア

 

コメントを残す

ABOUTこの記事をかいた人

今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。