15年ほど前、中国人と話をしていて、中国の言葉でゲイの人たちを「人妖」と呼ぶと聞いて、ビックリした。
ただ、日本語で「愛人」という言葉が中国語では「妻」を意味するように、日中では同じ漢字でも意味が違うこともある。
しかし、辞書を調べると、人妖には「人と化け物の中間」という意味があるから、日本の感覚からすると、これは差別的で NGワードになるだろうなと思った。
最近、SNSを見てたら、もう「人妖」は使われなくなっているという投稿があったから、中国でも人権意識は高まっているらしい。
21世紀の世界では、人種、性別、宗教、障害などに対して差別的な意味を含まない、公正で中立的な言葉を使うことが重要視されていて、そんな考え方を「ポリティカル・コレクトネス」という。
この「ポリコレ」の影響から、特定の性別を示す職業名は使用不可になった。
それで、カメラマンは「フォトグラファー」、保母や看護婦は「保育士」や「看護師」、スチュワーデスは「キャビンアテンダント」と呼ばれるようになる。
いまの日本では、“ポリコレ警察”がそこら中をパトロールしているから、政治的に正しい言葉を使わないと、ポリコレ棒で頭を叩かれるだけならまだいいほうで、下手したら、立てなくなるほどタコ殴りにされる。
この「ポリコレ意識」は韓国でも高まっていて、最近、あるユーチューバーがそれに引っかかり、炎上騒ぎを引き起こした。
たとえば、日本人女性のユーチューバーが、フィリピン人を演じる日本人女性とこんなコラボ動画を作ったとする。
「みなさんこんにちは! 今日はフィリピンから日本へ嫁いできた方をお招きして、一緒に料理を食事を楽しみことになりました〜」
という紹介の後、フィリピン人を名のる日本人が、たどたどしい日本語でこんなふうに話す。
「日本のみなさぁんコニチハ。わたしフィリピン人のニトンです。フィリピンでは農家をしてましたよ〜」
そして動画には、「フィリピンと日本のすごいコラボ」という字幕が表示されている。
韓国人のユーチューバーと、フィリピン人のフリをした韓国人が、面白おかしくそんなやり取りをして、視聴者に笑ってもらおうとした。
そしたら、「これは人種差別じゃないか。動画を削除して謝罪しろ!」といった批判コメントが殺到する。
このケースではまず、発展途上国のフィリピン人が韓国人男性と結婚し、韓国へやってきたという設定がフィリピンに対して侮辱的と見なされた。
さらに、もっと深刻な問題は、別の人種のキャラクターになり、言葉を茶化して笑いを取ろうとしたこと。
この行為は、先進国ならどこの国でも一発アウトになる。
まったく笑えないし、ポリコレ棒でぶったたかれるのも当然。
消火不可能なほど炎上した結果、ユーチューバーは「心からおわびを申し上げます」と謝罪し、動画を削除した。
まぁ、ここまでの話なら、韓国内の騒動で日本人には関係ない。
でも、それを報じる朝鮮日報の記事を読んで、気づいたことがある。(2024/2/12)
この「タナカさん」をめぐり、日本人を笑いものにしているという指摘も一部にはあり、「時代錯誤的なお笑いだ」との批判も出た。
人種差別的「物まね」でフィリピン女性侮辱…韓国「930万ユーチューバー」が映像削除・謝罪
そう言えばいたな、日本のホストを演じる「タナカさん」ってユーチューバーが。
彼は韓国人で、「日本で有名なホストバーでホストしてました」という設定で、たどたどしい韓国語を話して笑いを取る。
日本ではたくさんの「たなかファン」がいて、彼は有名テレビ番組にも出演した人気者だ。
しかし、韓国では、そんなネガティブな評価があったというのは初耳。
確かに、ぎこちない韓国語を話す「偽フィリピン人」の韓国人と、「タナカさん」は本質的には変わらない気がする。
でも、日本で好意的な見方が多く、「人種差別的『物まね』で日本人を侮辱」なんて記事が出る気配はない。
これはポリコレ感覚が鈍感というより、日本人は心が大らかで寛容ということなんだろう。
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