サービスを提供する側が無神経な対応をして、客を怒らせて炎上する出来事は世界中で発生している。
異なる国で仕事をするのなら、相手国の国民感情に配慮しないと炎上し、ビジネスは大失敗してしまう。きょねんの夏、日本で公開された米映画『バービー』のように。
アメリカで『バービー』が公開された日に、原爆開発をテーマにした映画『オッペンハイマー』も公開されたことから、2つを結びつける「バーベンハイマー(Barbenheimer)」という社会現象が生まれた。
それで、ファンの一人が原爆のキノコ雲を背後に、笑顔を浮かべるバービーの画像を作ってネットに投稿すると、『バービー』の公式アカウントが「 😘💕」と好意的に反応した。
その一環として、アメリカのファンの一人が原爆のキノコ雲を背景に、笑顔を浮かべるバービーの画像を作りネットに投稿すると、『バービー』の公式アカウントが「 😘💕」と好意的に反応しました。
しかし、日本人にとって、20万人以上の命を奪った原爆投下は計り知れない大きな悲劇で、二度と繰り返してはいけない惨劇だ。
それを連想するものに対し、公式が「💕」と無邪気に反応したことで日本人の神経を逆なでし、『バービー』の日本での興行収入は大爆死となった。
日本でビジネスをしたいのなら、日本の国民感情に配慮しないといけない。
もし、日本人が外国で仕事をするのなら、同じように配慮しないといけない。それに欠けて炎上し、手痛い失敗をした企業もある。
第一次世界大戦中、日本は中国に対して「21カ条の要求」を出した。
この内容は中国を日本の保護国にするも同然だったから、欧米からは反対され、中国では激しい反発を招いた、という記事をきのう書いたのですよ。
当時、中国国民はこの要求を受け入れた5月9日を「国恥記念日」と呼び、抗日精神が大いに盛り上がった。
ただ、すべての中国人が同じ気持ちだったわけではない。
この要求を受諾した袁世凱は日本を強く非難したが、孫文は「21ヶ条要求は、袁世凱自身によって起草され、要求された策略であり、皇帝であることを認めてもらうために、袁が日本に支払った代償である」と袁世凱を強く非難している。
中国側でも、さまざまな受け止め方があったのだ。
日本の受験生なら、第一次世界大戦と対華21カ条の要求は覚えておかないといけない。
中国人と付き合いのある人、特に中国で仕事をする人なら、5月9日が「国恥記念日」であることを知っておく必要がある。
中国の人たちがこの日や21カ条の要求についてどう考えていたのか、戦前に中国で使われた教科書の内容を見てみよう。
「五月九日の国恥 同胞よ、記憶するか 民国四年五月九日を
日本は二十一ヶ条の不法な要求を 提出して、ついに承認させた
同胞よ、記憶するか 民国四年五月九日を」
「我が中国は未だ滅びることはないが、受けている痛苦は亡国よりも数倍も酷いものだ。これはすべて不平等条約の結果である。我らは同心協力して、先ず日本の帝国主義を打倒し、二十一ヶ条を取り消さなければならない。」
「君たちは忘れたのか、民国四年五月九日を
恨むべし 東隣の日本国は
不条理な要求二十一ヶ条を提出し
国賊と結託して私的に授受をなす
君たちは忘れてはならない 民国四年五月九日を」
*「国賊」はきっと袁世凱を指している。
「痛苦、亡国よりも数倍も酷い、忘れるな国の仇 、自由を奪われた 、真に恥ずべし、我が同胞よ、起って戦え」
ソース:東亜経済調査局『戦前中国の排日教科書 歴史編: 満州事変以前の反日感情 忘れられた日中関係史 (Kindle 版)』
こんな抗日精神は現在の中国人にも引き継がれている。
だから、普段は意識しなくても、5月9日になると中国国民なら、
「忘れるな国の仇 二十一カ条、真に恥ずべし、国権は失われた、わが同胞よ、起こって戦え」
といった気持ちがこみ上げてくるはずだ。
実際、中国メディアはそんな感情を引き出すような報道をしている。
いまの中国で「国恥日」は5月9日のほかにも、満州事変がはじまった9月18日と、日中戦争(盧溝橋事件)がはじまった7月7日がある。
中国に関係する日本人なら、苦い経験をしないように、この日が近づくと中国の抗日精神が高まることを知っておく必要がある。
2021年の6月30日に、日本の大手電化製品メーカーが「7月7日に新製品を発表します」と告知した。
中国人にとって7月7日は、日中戦争の導火線となった盧溝橋事件が起きた日だから、「日本企業が国恥日に新製品を発表するとか、舐めてんのか!」といった批判が殺到。
メーカー側は翌7月1日に広告を削除し謝罪したが、それだけでは済まなかった。
人民の愛国心を逆なでした「罪」によって、政府当局から罰金として約 1800万円の支払いを命じられた。
新製品の告知をしたら、こんなむごい未来になるなんて、メーカー側は1ミリも想像していなかったはずだ。
アメリカ人が日本人を相手にビジネスをするなら、原爆投下に無神経であってはいけないし、中国人を相手に仕事する日本人なら、「国恥日」を忘れてはいけない。
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