ベトナム人から見た日本 安全大国だからこそ“闇落ち”の危険

 

知人のベトナム人女性は日本に来たころ、理解できない光景を見た。
彼女がコンビニへ買い物に行くと、駐車場にはエンジンがかけっぱなしの原付バイクが停まっていた。周囲には誰も見当たらない。
これは彼女にとって理解を超えた、ちょっとしたホラーな光景だ。
でも、コンビニから持ち主が出てきて、バイクに乗って走り去っていくのを見て謎がとけた。
*ちなみに、エンジンを止めないのは道路交通法違反になるからアウト。

こんなことができるのは、日本が安全大国だから。
ベトナムで同じことをしたら、バイクを盗まれるのは当然として、親や友人から「何やってんだバカっ!」と説教をされるのは確実。盗まれるようなスキを与えるほうも悪い。

ただ彼女には、エンジンを止めない理由が分からなかったから、友人の日本人に聞くと、「たぶん面倒くさいからでしょ」と言われて驚いた。
ほかにも、冷房や暖房を切りたくないから、車のエンジンをかけっぱなしにしてコンビニを利用する人もいると知って、彼女は自分が来たのは異世界だったと実感する。
彼女がそんな話をしていると、「日本は本当に平和な国ですから、ベトナム人にとっては危険なんです」と言う。
ウン、どういうことだ? と思ったら、日本には高級品でも管理があまく、その気になれば簡単に盗むことができるものがよくあるから、ベトナム人の感覚だと悪の誘惑にかられ、「闇落ち」してしまう可能性があるからだという。

 

別のベトナム人とハイキングをしていた時にも、同じような話を聞いた。
ハイキングコースに沿ってたくさんのみかんが実っていて、手を伸ばせば簡単に取れる環境にあったから、

「これは危ないですね。ベトナム人がこれを知ったら、みかんを盗むためにここへやって来る人もいますよ。日本は安全ですけど、それでも、もう少ししっかり防犯対策をした方がいいと思います」

と、彼はみかん農家のことを心配した。
先ほどのベトナム人女性から聞いた話をすると、彼もその意見に完全同意する。
日本にはスキや誘惑が本当に多いから、ベトナム人が仕事を失ったりしてお金がなくなると、犯罪行為に手を出しやすくなることは十分想像できると言う。
生活に困るようになると、悪いことをしやすくなるのは日本人も同じだが、ベトナムとはもともとの基準が違うのだ。

 

逆に、日本人がベトナムへ行った場合は、盗難には十分すぎるほど注意するようになる。
前にSNSの投稿で、ベトナムの工場で管理職として働くようになった日本人が、引き継ぎ事項を聞いてウンザリしたとグチをこぼしていた。
その人は特に注意することとして、「換金性の高いものの扱いに気をつけろ」と言われた。
ベトナムでは銅が人気(換金性が高い)だから、工場内にある避雷針の銅線ケーブルはよく盗まれる。ノコギリや電源コード、延長コードのほか、いろいろな測定器もいつも狙われている。
だから、油断しないで、それらをしっかり管理しないといけない。
国籍や宗教に関係なく、誰にでも「魔が差す」瞬間はあるから、盗まれないようにすると同時に、盗もうと思わせないことも大切だとアドバイスをもらった。
その人は日本にいた時、「盗ませない環境づくり」なんて真剣に考えたことがなかったから、前途多難の未来しか見えなかったという。

今までそんな話を何度も聞いていたから、もはやこんなニュースを聞いても驚かない。

産経新聞の記事(2024/7/31)

「日本は簡単に盗める」雑貨店バイヤーから高級自転車泥棒へ“転身”したベトナム人

以前はまじめに働いていたベトナム人が日本で生活しているうちに、日本人の防犯意識はゆるく、高級自転車でも簡単に盗めることに気づき、窃盗犯に「ジョブチェンジ」してしまった。
盗んだ自転車をベトナムへ運び、ネットオークションで転売すると、高く売れるからかなりもうけていたらしい。
記事の中で捜査幹部が盗難対策として、「ある程度値が張っても頑丈なワイヤ錠を使ったり、屋内に止めるなどしてほしい」と話している。
日本が「平和ボケ」できるほど安全だったから、このベトナム人は「闇落ち」してしまったようだ。

「そんなモラルのないヤツは日本に来るな!」と、日本人がネットで怒っても現実は変えられない。
日本人がもっと防御力を上げるほうが現実的だ。
普通のベトナム人をダークサイドに転身させないためにも、日本人が防犯意識を高めたほうがいい。
バイクや車のエンジンを切らないというのは論外として、自転車をいつも建物の中に入れておくぐらいのことを面倒くさがってはいけない。

 

 

日本 「目次」

日本でのベトナム人失踪・犯罪、背後にある「送り出し機関」

【日本人の偏見】インド人・ベトナム人を困らせる短絡的発想

【無知な善人】インド人・ベトナム人を怒らせた日本人の一言

外国人の「日本人あるある」。またかよ!と思わせる5つの質問

 

1 個のコメント

  • 韓国人は日帝時代(1910-1945)までを日本から過酷な植民統治を受け、人権が抹殺された状態で収奪と搾取を受けた期間と記憶しています。それで徴用されて産業現場で働くようになったのもすべて強制労働だと思います。「徴用」という言葉自体が強制性を内包していますが、奴隷のように強制労働をしたわけではなく、報酬も受けて仕事をしましたが、韓国ではそれを認めません。
    日本から徴用された事実は当時の帝国主義時代の歴史と認識しなければならないのに、韓国人はそれを日帝が行った不法だと規定しています。過去の歴史と現在を区分できないのです。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。