韓国の経済を支え、人びとの重要な「足」となっているのがソウル地下鉄。
これは1974年に開通し、今年でちょうど50周年を迎えることから、いまソウル歴史博物館が「ソウル地下鉄開通50周年記念展」を開催している。
韓国では1960年代に「漢江の奇跡」といわれる急速な経済成長があり、首都ソウルでは交通渋滞が深刻な問題になっていた。
その解決として、地下鉄の建設が本格的に議論されるようになったが、『KBS WORLD Radio』の記事によると反対の声も多かったようだ。(2024-08-23)
「ソウルに地下鉄を建設したら、国が亡びる」と経済副首相が言ったほど、当時の韓国の経済規模と技術力では、とうてい無謀な計画と思われたからです。
ことし50周年を迎えたソウル地下鉄の歴史
このとき、資金と技術の面でサポートしたのが日本だ。
地下鉄建設のために、日本は韓国に8000万ドルの借款(低金利で長期に資金を貸し付ける)を行った。
ソウル地下鉄1号線の車両や信号などは日本の技術協力により建設され、初期の電車は全て日本製だった。
また、韓国や日本での指導を通じ、地下鉄運行に必要な知識や技術を伝えた。だから、(最近になって変更がなければ)韓国の駅員も日本式の指差し確認をしている。
ソウル地下鉄の建設における日本の支援については、韓国語版ウィキペディアの「서울 지하철」(ソウル地下鉄)にも書かれている。
もちろん日本は縁の下の力持ちで、主役は韓国の人たちだ。
こうして1974年に初めて地下鉄が開通すると、韓国社会にこんな変化があらわれたという。
それまで韓国の人たちは時間にルーズで、それは「コリアンタイム」と言われることもあったが、時間通りに運行される地下鉄のおかげで、時間を守る意識が定着した。
そして、バスに比べると快適なため、車内で本を読む人が増えた。読書の文化がうまれたことで、地下鉄駅には新聞売り場や小さな本を売る店ができ、出版業界にも影響を与えたという。
韓国に何十年も住んでいて、韓国事情にくわしいジャーナリストの黒田勝弘氏も、ソウル歴史博物館の「ソウル地下鉄開通50周年記念展」を取り上げ、コラムを書いた。
黒田氏が注目したのは、そこにあった「日本からの借款導入、技術協力によって建設に着手した」という説明だ。
先ほど指摘したように、ソウル地下鉄の建設には日本からの資金や技術援助があったが、黒田氏の経験からすると、韓国でそれが公に明記されることはほとんどないらしい。
産経新聞のコラム『ソウルからヨボセヨ』にこう書いている。(2024/9/14)
韓国の歴史記述では従来、日本からの支援や協力の事実は意図的に無視、軽視する〝日本隠し〟がもっぱらなのでこの記述は正直で珍しい。
ソウル地下鉄史の正直
黒田氏はこの説明を評価して、「お互い日韓協力史を正直に振り返りたいものだ」と言う。
ちなみに当時、日本では自民党が韓国の地下鉄建設を支援しようとすると、野党や北朝鮮寄りの勢力に「日韓癒着」と非難されたという。
現在では歴史問題について、野党が自民党側に「もっと韓国に配慮しろ」と求めていることを考えると、本当に時代は変わった。
日韓の友好親善を目的に日本人と韓国人が集まって、グルメや観光情報を投稿するSNSグループはいくつもある。
個人的に以前から見ていたグループがあって、少し前に「ソウル地下鉄開通50周年記念展」を取り上げた人がいた。その人は、日本からの資金や技術援助があったという説明に感激し、「日本と韓国が協力すれば大きなことができますね」と投稿した。
それに対して、韓国人メンバーからは「そうですね」という同意だけではなく、こんなコメントも寄せられた。
「日本が韓国を植民地支配して、人や社会に大きな被害を与えていなかったら、地下鉄はもっと早く完成していた。」
「当時の日本が韓国に支援できるほど裕福だったのは、朝鮮戦争によって大もうけしたからだ。」
ソウル地下鉄の建設は、当時の韓国の経済規模と技術力からすると無謀な計画で、副首相でさえ「国が亡びる」と思うほどだった。
日本の支援でそれを可能にしたことは間違いない。
しかし、韓国では、日本の協力や貢献が事実だったとしても、感情的にそれを認めたくない人がいる。全体的には、そういう人の方が多い気がする。
韓国の博物館やメディアも、そんな国民情緒に配慮して「日本隠し」を行ってきた。それが普通で、記念展の説明は例外的なのだ。
2021年に韓国である裁判官が、『漢江の奇跡』について、日本の貢献があったことを指摘した。これは歴史的な事実だ。
しかし、韓国ではたとえ事実であっても、国民感情や自尊心を傷つける情報を開示すると激しく叩かる。日本のネットでいう「事実陳列罪」だ。
この裁判長も国民から、「反国家、反民族的」、「売国奴」と非難された。
日韓協力の素晴らしさを訴えた上の投稿は、いつの間にか削除されていた。
やっぱり、日本と韓国の関係はむずかしい。
韓国人は「日本は自分たちに被害を与えた絶対的な悪の加害者」という前提から抜け出すことが出来ないようです。
その設定が無ければ分裂しやすい国民をまとめることが出来ず、不満は内部に向かっていずれ爆発してしまうからでしょう。
韓国の政治家がそんなことで国民をまとめたいのであれば、そうすればいいでしょう。