朝鮮出兵で今の日本人に責任はない → 韓国人の反応は?

 

きょう10月30日は1598年に朝鮮半島で、薩摩の島津義弘が率いる軍が明・朝鮮の連合軍と戦い、勝利した日。
この合戦は豊臣秀吉が起こした朝鮮出兵の中で行われたもので、「泗川(しせん)の戦い」という。実はこの時、秀吉は病気で亡くなっていたのだけど、明・朝鮮軍にその秘密を隠し続け、日本軍はひそかに撤退の準備を進めていたのだ。
この後、日本軍が撤退すると朝鮮海軍が襲いかかり、同年12月16日に露梁(ろりょう)海戦が始まり、この戦いで現在の韓国で国民的英雄とされている李舜臣が亡くなった。
この露梁海戦の結果はユニークで、日本も朝鮮も自軍が勝利したと伝えている。

朝鮮出兵で日本軍は倒した敵兵の耳や鼻を刃物で切り取り、それを戦功の証拠として持ち帰った。戦国時代の合戦では敵将を討ち取った後、その首を見せて報酬を得ることが慣習となっていた。しかし、朝鮮出兵では、日本へ首を持ち帰ることは難しかったため、耳や鼻を削いで持ち帰っていた。

なんて野蛮で残酷な行為! と思うのは当然。しかし、16世紀にはその時代に応じた常識や価値観があったことは理解しないといけない。これは当時の武士にとって重要な仕事の一部で、やらないわけにはいかなかったのだ。
ただ、当時の武士たちもそれが非人道的な行為であることは認識していたから、京都で耳や鼻を埋めて「耳塚」をつくり、亡くなった敵兵を供養している。
過去に起きたことを正しく知り、理解することはとても大切だが、21世紀の人権感覚を戦国時代に当てはめて、一部を切り取って「残酷だ!」「400年前にしては優しさがある!」と当時の人間を非難したり、擁護したりしても意味はない。
そんな見方は日本では通じても、韓国ではそうもいかない。
韓国で朝鮮出兵は「朝鮮侵略」と呼ばれ、それを行った豊臣秀吉は忌み嫌われている。耳を切り取った行為も、許しがたい蛮行と認識されている。

 

耳塚で手を合わせていた韓国の人たち

 

嫌韓や反日を敵とし、日韓の友好親善を目的に両国の人たちが集まって語り合うSNSグループで、京都を旅行した韓国人メンバーがその感想を投稿した。
彼は、金閣寺や清水寺は良かったし、料理もおいしく、とても満足できたけれど、耳塚に行ったら悔しさや怒りが込み上げてきたという。
韓国人はいまでもあの侵略を許すことができず、心を痛めているのに、現代の日本人は加害の歴史を直視しようとしない。日本が反省し、間違った歴史認識を正さなければ、韓日の真の和解は実現しない。

そう主張する韓国人に対して、韓国語のできる日本人のメンバーがこんな返信をした。

「그 후손인 지금 사람들에겐 책임이 없는 것입니다.미워하는 것은 개인의 자유입니다만,상관 없는 사람을 욕하는 것은 어떡하냐고 생각합니다.」
(その子孫である今の日本人に責任はありません。憎むのは個人の自由と思いますが、関係ない人を罵倒するのはどうでしょう)

 

以下、韓国人メンバーから寄せられたコメントを日本語で書いていこう。

・その責任をとることは難しいかもしれませんが、申し訳ないと思う気持ちはあってもいいのではないでしょうか? 両国の過去について正確な事実を認識し、反省と謝罪が必要な部分はしっかりした方がいいと思います。それが両国の友好と未来のためにも必要です。

・日本と言えば、悪口ばかり言う人たちには共感しにくいです。ですが、「過去と現在の日本はまったく違う国だから、責任も関係もない」と思っている人にも共感しにくいですね。
あなたが言ったように、今の日本人は朝鮮を侵略した日本人の「子孫」であり、今の韓国人はその朝朝鮮人の「子孫」であることは明らかな事実ですから…。

・豊臣秀吉を「英雄」と思う日本人は韓国人と仲良くなれません。

・400年前の罪と罰を、現代の子孫に問うことは合理的ではないと思います。お互いに正しい歴史を認識しているかどうかが一番重要だと思います。

・子孫に先祖の罪と責任を持てとは言わないけれど、国が歴史教育を素直に行い、分別を持つべきでしょう。日本が侵略戦争を正しいと言い張れば、殺害された私たちの先祖はどうなりますか?

数は少ないが、コメントした日本人の考え方に近い韓国人もいた。

・意見はいろいろありますが、結論は、罪は憎むが人は憎まないということです。歴史は考え次第ですので。
・過去は過去、今は今に満足しましょう。
・そもそも朝鮮と大韓民国は別の国であり、数百年前に私と関係のない朝朝鮮人がどれだけ死んでも関係ありません。第二次世界大戦、近いところではベトナム戦争で数十、数百万単位で殺し合った国々も、今は利益のためにお互いに仲良くやっています。

 

韓国人のコメントを見ていると、朝鮮出兵について「今の日本人に責任はありません」という部分に引っかかった人が多い。それについて異論や反論が噴出したけれど、日本人メンバーからのコメントは一切なし。
この日本人の意見に賛成すれば、それが燃料となってさらに炎上するだろうし、かといって韓国人メンバーの意見には同意しかねるから、「スルー」を決め込んだと思われる。
朝鮮出兵などの過去史について、日本人と韓国人の見方は“いつも”と言っていいほど合わない。しかし、正しい歴史を学ぶことが最も重要という点では、日韓の見方は完全に一致している。問題は、「正しい」の中身がそれぞれで違うということだ。

日韓の認識のズレは、どちらも自分を勝者とした露梁(ろりょう)海戦のころからあった。舞台は海上からネット上に移り、400年以上たった今でも日韓戦は行われている。日本軍と明・朝鮮軍の兵士は、それを草葉の陰で見て「そろそろ終わりにしない?」とか思っていそうだけど。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。