ベトナムのホーチミン市を旅行中、ベトナム戦争について伝える博物館を訪れた。
日本語ガイドの説明を聞きながら館内を歩いていたところ、彼女が下の写真を指さしながら、こんな話を始める。
「ベトナムを侵略した国の中には、同じアジアの韓国もいたんです。韓国は日本に歴史について何度も謝罪を要求していますよね？ しかし、韓国はベトナムについては黙殺しています。」
当時、ベトナム戦争に参戦した韓国兵が民間人を虐殺したり、女性に性暴行を行ったりしたことが大きな問題になった。
くわしいことは、「韓国軍によるベトナム民間人虐殺事件」で確認するように。
つい先日、その中の一つ、フォンニィ事件について、韓国司法が被告のベトナム人女性の訴えを認め、韓国政府の責任を糾弾する判決を言い渡した。
韓国政府の立場としてはこの戦争犯罪を認めたくないし、ベトナム政府もいまは経済発展を優先しているから、韓国と歴史でもめ事を起こしたくない。ということで、ベトナム戦争については、どちらも積極的にふれようとしないのが現状だ。
しかし、民間レベルでは、日本語ガイドのように韓国軍の蛮行を憎んでいる人は今でも多い。
昨年末、ベトナムのニュースを伝えるサイト『VIETJO（ベトジョー）』が掲載した記事には、そのネガティブな感情が表れている。（2024/12/30）
「イカゲーム」シーズン2、登場人物がベトナム戦争賛美で批判殺到
世界的にヒットした韓国ドラマ『イカゲーム』で、ある人物が会話の中で、自分の父親がベトナム戦争に兵士として参戦していたと言うと、それを聞いた人が「立派な方だな」と答えるシーンがあった。
このセリフに対し、ベトナムでは、「ベトナムに対する尊重がない」、「もう見ない。これが正しい判断だ」、「ベトナム戦争に従軍したから立派な父親？ 誇れる部分はどこ？」といった批判コメントが殺到し、ネットでボイコットを呼び掛ける事態に発展。
この事態に、ベトナム文化・スポーツ・観光省が動く。『イカゲーム２』の内容について、法に照らし合わせ、違反があった場合は処分する方針を示した。
その後、これがどう判定されたのかは知らない。
韓国のネットユーザーの意見は分かれ、「やっぱり共産国だな」「ベトナムに派遣されたのは誇らしい大韓民国の軍人だ」といった逆批判もあれば、「過ちはきちんと謝罪すべきだ」「世界中の人が見るんだから、映画やドラマを制作する時は配慮をする必要がある」といったベトナム人の感情に沿ったコメントもあった。
「歴史を歪曲（わいきょく）している」や「戦争を賛美している」とか、ふだん日本に言っていることを、今回ベトナムの人たちに言われてしまった。
日本の加害行為は厳しく指摘するが、自身の行為はスルーしようとすることについて、その都合のいい二重基準を批判する声は韓国内でもある。
韓国では日本には、「歴史を直視しなければいけない」や「被害者が“もういい”と言うまで、謝罪を続ける必要がある」といったことを言い続けてきた。それが、立場が変わるとおそろしく鈍感になるらしい。
先日、朝鮮日報にこんな記事が掲載されていた。（2025/02/27）
「ベトナム戦争参戦」と書かれた帽子かぶった韓国人、現地で入国拒否…罰金45万円科される
「Vietnam War Hero Korea（ベトナム戦争参戦勇士）」と書かれた帽子をかぶりながら、堂々とベトナムへ入国しようとした韓国人が入国を拒否され、この帽子をかぶっていたグループには罰金 3000ドル（約 45万円）の支払いを命じられた。
ベトナムではベトナム戦争に参戦した韓国兵に対して、「内戦に加担した外部勢力であり、残酷な行為をした戦犯だ」という認識があるため、こんな帽子をかぶって街を歩くと、トラブルを引き起こす可能性がある。
この出来事を知って、韓国人からは「『知らなかった』と弁解するには無礼すぎる行為だ」、「旭日旗が描かれたものを日本人が身につけて独島を訪問しようとしているのと同じだ」といった批判的なコメントが寄せられたという。
現在のベトナムでは韓国の歌、ドラマ、化粧品の人気は高く、全体的に韓国に対して好印象を持つ人が多い。しかし、過去を変えることはできないから、
「ベトナムを侵略した国の中には、同じアジアの韓国もいたんです。しかし、韓国はベトナムについては黙殺しています。」
と怒りを表す人もいる。
韓国が「歴史歪曲」という地雷を踏んで痛い思いをすることで、日本に対する自分たちの対応について考え直してくれると助かるが、その可能性はまず無いか。
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