【堺事件】幕末にもいた迷惑外国人。しかし、日本は弱かった…。

最近、海上保安部が迷惑外国人にレッドカードを突きつけ、世間の喝采を浴びた。
「アイスポセイドン」という外国人ユーチューバーの集団が日本旅行中、新幹線の車内で騒いだり、喫煙禁止の公共交通機関であえてタバコを吸ってその様子を配信したりして、多くの日本人を怒らせた。
そんな彼らが鹿児島でフェリーに乗ろうとすると、船会社が鹿児島海上保安部に通報し、駆けつけた保安官が英語で乗船を拒否。保安官は「迷惑行為なんてしていない!」というウソを認めず、毅然とした態度で対応し、「アイスポセイドン」のメンバー全員をフェリーに乗せなかった。
これがニュースで報じられると、鹿児島海上保安部がとまどうほど、全国から称賛の声が殺到したという。
まぁ、ポセイドンを名乗るなら泳いで行けって話だけど。

 

3月8日は1868年に、堺事件が発生した日だ。
いわゆる「迷惑外国人」は幕末にもいた。
この日、大阪の堺で、上陸したフランス海軍の兵士たちが好き勝手なことをやり始め、住民が苦情を訴えるほどの騒ぎとなった。
このときのフランス兵の様子については、日本語より英語版ウィキペディアに詳しい説明があるから、そちらを引用しよう。

水兵たちは無断で寺や家に侵入したり、女性に嫌がらせをしたり、商人を怖がらせたりして、手に負えなくなった。警備を担当する土佐藩士に住民の苦情が届くと、彼らは現場に向かい、場を収めようとした。

Complaints soon reached the ears of the Tōsa samurai responsible for security that the sailors had become unruly, intruding into temples and homes without invitation, harassing women, and frightening the merchants.

Sakai incident

 

土佐藩士で警備隊長だった箕浦 猪之吉(みのうら いのきち)は水兵たちに、軍艦に戻るようにながすと、フランス兵の一人が土佐藩の旗を奪って逃げた。これは「重大な侮辱(grave insult)」だったため、藩士は追いかけて旗を取り返した。しかし、これによって乱闘が始まり、フランス側が先に発砲し、日本側が応戦したという。 結果、11名のフランス兵が死亡する。
言葉がうまく通じなかったせいもあるが、とんでもないコトになってしまった。

1868年(慶応4年)は日本にいた外国人にとっては受難の年で、これをふくめ、神戸事件とパークス英公使襲撃事件と、外国人が殺傷される事件が三回も発生した。その中で、最大の犠牲者を出したのが堺事件だ。

 

和泉国で起こった堺事件(1868年3月8日)

 

フランス側の見方は180度違う。
自分たちは何もしなかったのに、とつぜん日本側が銃撃をしたと主張し、箕浦ら土佐藩士の処刑や賠償金として15万ドルを要求しやがる。

そもそもの原因はフランス兵が日本の民間人にド迷惑をかけたことで、会津藩士に許されない侮辱を与えたことにある。
これは一方的な要求だったが、このときの日本はまだまだ弱く、フランスと戦争をしても勝ち目はなかった。きっとワンチャンすらなかった。
イギリスに仲裁を頼んだが、「ムリ」と門前払いをされ、日本は不当で屈辱的な要求を受け入れるしかなく、11名の藩士が腹を切り、15万ドルをフランスに支払った。
しかし、箕浦は武士の意地を見せた。
彼は切腹の際、自分の腹に手を入れて腸を取り出すと、その場にいたフランス人に見せつけたという。そんな凄惨な光景を見て震えたせいか、本来は20名が処刑されるはずだったのに、フランス側は11名でやめさせた。
堺事件は日本が弱小国だったころに起きたことで、いまの日本は違う(はず)。

 

おまけ

堺事件では、日本の庶民が“歓喜”する場面があった。
20名が切腹する予定で、死体を入れるために20個の大きな甕(かめ)が用意されていたけれど、9個が不要になる。
「命が助かった9名は、とんでもない幸運を持っていた!」と人々は考えて、そのラッキーにあやかろうとした。その方法は、死体を入れるはずだった9個の大甕に入るというもので、この臨死体験(?)が大人気になったという。

 

 

外国人から見た不思議の国・日本 「目次」

【汚職】幕末の外国人が感心し、今は世界10%内にいる日本

【差別ダメ】幕末の「侍テロ」と、現代日本の「外国人嫌悪」

外国人には“謎”。世界で日本だけの「幕府」はいつ始まった?

【ではどうする?】幕末と現代、日本人の「外国人嫌い」

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