最近、隣国では厄よけや運を良くするものとして、スケトウダラのお守りが人気だ。このスケトウダラの像は手のひらに乗るくらいの大きさで、かわいい見た目が若い人たちの心をつかんだ。
韓国の民俗信仰では、スケトウダラは神と人間をつないぐ特別な生き物で、災厄を消滅させ、幸福をもたらす象徴とされていた。そういう考えがもとになって、就職活動がうまくいくようにと、スケトウダラの運を良くするグッズがちょっとした流行になっている。
【韓国文化】スケトウダラが厄よけ・開運グッズとして人気の理由
日本にも厄よけや開運のグッズはたくさんある。
知人のアメリカ人の推しは宮城県南三陸町の「オクトパス君」だ。このタコの像を机に置くと、試験にパスするという日本語と英語(Octopus)の分かりやすいダジャレが彼のつぼに入った。
韓国のスケトウダラのように、日本人も特定の魚を魔よけとしてを使うことがある。
2月の初めの節分のとき、柊(ヒイラギ)の枝に鰯(イワシ)の頭をつけた「柊鰯(ひいらぎいわし)」を家の門に飾ると、柊の葉のトゲが鬼の目を刺したり、焼いた鰯から鬼の嫌うにおいが出たりするから、邪悪な鬼は家に入ることができない。それによって、家族が健康で安全に生活することができるという考えだ。
(柊鰯が鬼をブロックする理由には別の説もある。)
イワシの頭は普通は捨てる部分で、柊もあまり価値がない。冷静&客観的に見れば、柊鰯はゴミと変わらないのに、それでも大切に思う人がいる。こういうことから、「イワシの頭も信心から」のことわざができたという。
イワシは庶民でも簡単に買える安い魚だったから、この習慣が広まったとされる。韓国も同じで、スケトウダラは誰でも買えるような安い魚だったから、魔よけや運を良くするシンボルになったという。
こんな魔よけや開運の考え方は世界中にあって、受験シーズンになると縁起ものに人気が集まる現象は海外にもあると、そんなふうに考えていた時期が俺にもありました。
アメリカ人やドイツ人などキリスト教の文化圏の人の話では、受験生が個人的なラッキーアイテムを身につけることはあっても、多くの人が共通して持つ縁起ものは無いらしい。
一神教のキリスト教では、神以外の人や生き物、モノなどを神聖視することは厳禁されていたから、魔よけや開運の文化は発達しなかった。キリスト教の信者がイエスやマリアの像に向かって、手を合わせている姿を見たことがあるかもしれない。でも、彼らは像に祈ったり、崇拝したりしているわけじゃない。崇拝の対象はあくまでも神様だけで、マリアなどに手を合わせる行為は崇敬(すうけい)と呼ばれる。
日本では仏像やご神体に祈ることが一般的だから、日本人に崇敬という考え方はなじみがなく、理解もむずかしい。
キリスト教徒にとって、スケトウダラやイワシはただの魚で、それ以上の意味はない。だから、それを神聖視して、魔よけや開運のシンボルとして使うことはない。といっても、ラッキーアイテムが皆無というわけではなくて、欧米では「ウサギの足」が知られている。
欧米のキリスト圏の国と違って、日本と韓国には一神教が支配的になった歴史はなく、さまざまな神や鬼を信じてきた。そんな伝統的、文化的な違いが合格グッズにも表れている。
日本人には難しい一神教の“神”、外国人には難しい神道の“神”
コメント