ウクライナと日本の伝統衣装 ヴィシヴァンカ&ヴィノク・着物&かんざし 

ロシアとの戦争が始まってから、日本はウクライナからの避難者を受け入れ、現在では約2000人が日本の各地で暮らしている。
その中の1人(20代の男性)と会って話をしたので、今回はウクライナの伝統衣装について中心に書いていこう。

 

ヴィシヴァンカを着た女性

 

ーー日本の伝統衣装には主に夏は浴衣、冬は着物があって、特別な機会ではなく、今でも日常的に着ることがある。
それで、あるアメリカ人が「きょう、着物姿の女性がマクドナルドで食事をしていた! こんな光景を見られるのは日本だけだよ!」と興奮していた。それは浴衣だったと思うけど。
ウクライナにはどんな伝統衣装がある?

ヴィシヴァンカ」が有名だ。これは美しい刺繍のあるシャツで、よく若い女性が着ている。5月の第3木曜日は「ヴィシヴァンカの日」になっていて、世界中のウクライナ人がヴィシヴァンカを着て、民族のアイデンティティや団結を示すことになっているんだ

ーーインカ帝国の都市・ビルカバンバは知っていたけど、それは初めて聞いた。いま調べてみたら、とんでもなく長い歴史があって、紀元前5世紀にはスキタイ美術の中に、現在のヴィシヴァンカにつながる刺繍が存在していたらしい。(Vyshyvanka
現代の日本の着物の起源は古代中国の唐の衣服といわれているから、千年ちょっとの歴史しかない。完敗だ。

*着物の起源を「小袖(こそで:袖口が小さい着物)」に求める説もあって、これだと弥生時代にまでさかのぼる。

 

花輪の髪飾り「ヴィノク」

 

ヴィシヴァンカを着るときには、花輪の「ヴィノク(Вінок)」を頭にのせることが多い。この頭飾りもウクライナの代表的な伝統文化なんだ。「イワン・クパーラ」という夏の祭りで、ヴィシヴァンカとヴィノクを身に着けた女性を見ることができる。ふだんの生活でも、結婚式でその格好をする人もいるけどね。

ーー話を聞くと、浴衣を着て夏祭りに行く日本人女性と重なるな。やっぱり、祭りには伝統衣装が似合う。小さい女の子がヴィシヴァンカを着てヴィノクをかぶると、妖精みたいだ。数人の女性がその姿で、マクドナルドでハンバーガーを食べていたら、外国人は「こんな光景を見られるのはウクライナだけ!」って興奮するだろうね。

日本の伝統文化で、ヴィノクみたいな飾りはないの?

ーーそれは思い当たらない。日本人は昔から花が好きだったけど、それを輪にするという文化は知らない。クリスマスリースとかの花輪はヨーロッパ的な発想で、アジアではあまりないんじゃないかな。
日本の髪飾りなら、簪(かんざし)がある。ヴィシヴァンカとヴィノクみたいに、着物とかんざしはセットになっていることが多い。

(かんざしの写真を見て)観光地のお土産屋で見たことあるけど、名前は知らなかった。かんざしはきれいなアクセサリーで、本当に日本的だと思う。

ーーかんざしの始まりは縄文時代にさかのぼることができる、ということをいまネットで調べて初めて知った。古代の日本人は、先のとがった棒には“呪力”が宿ると信じていて、それを髪にさすことで魔よけになると考えていたらしい。
かんざしは江戸時代に発展して、ふだんの生活ではそれで頭をかいたり、ピンチになったら相手を攻撃するという話もある。そういえば『銀魂』で、月詠ねえさんが髪飾りを武器にして戦うシーンを見た気がする。
名前だけなら、絶対「ヴィノク」のほうが強そうだけど、これで相手を攻撃することはできないよね?

いや、実はあれをほどくとムチのようになるから、それで敵を攻撃できんわっ!

 

ヴィシヴァンカを着て、ヴィノクをつけた女性。
ウクライナの伝統文化を体現している。

 

 

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