日本の「ご近所さん」には韓国と台湾があって、日本に統治されていたという共通の歴史をもっている。
どっちも観光旅行などで日本と活発な交流が行われているが、韓国と台湾では日本に対する見方は違う。そのため、両者に対する日本人の見方にも「温度差」がある。
2011年の東日本大震災が発生すると、韓国はすぐに救助隊を日本へ派遣したり、民間でも募金運動が始まったりして、支援の動きが盛り上がった。当時の李明博大統領はソウルの日本大使館を訪れ、哀悼とお見舞いの言葉を述べた。これは前代未聞と言っていい出来事だったのでは？
韓国メディアもこの時は歴史や領土問題を棚上げし、災害の状況をくわししく報道し、日本を励ますような論調で紙面が埋められた。『東亜日報』は「がんばれ、日本！」と日本語のメッセージを掲載した。韓国の全国紙の紙面で、デカデカと日本語が登場したというのはちょっと記憶にない。
韓国も台湾と同じぐらい、日本を支援してくれたと思う。しかし、それから約15年が過ぎた現在の様子を見ると、そこには明らかな“違い”がある。
台湾では今でも毎年、3月11日になると、日本の民間人が台湾の支援に感謝するイベントを開いていて、日台のキズナを深めている。
それに対し、日本人が韓国に同じことをしているという話を聞いたことがない。在韓日本大使館が感謝の気持ちを伝える行事をしたことはある。しかし、そんな公的なものではなく、民間人が毎年「感謝イベント」を行って、日韓のキズナを深めている気配はない。日本人も韓国人も、もう気持ちが冷めているように見える。
その原因のひとつにあると思われるのが「横断幕事件」だ。
地震発生から半年後の2011年９月、韓国で行われたサッカーの試合（セレッソ大阪 vs 全北現代）で、ある韓国人サポーターが「日本の大地震をお祝いします」と書かれた横断幕を会場で掲げた。
＊「お祝いします」と書こうとしたが、「し」が抜けていた。
この行為は日本のメディアで大きく報道され、国会でも取り上げられるほどの騒ぎになった。
「韓国で開催されたプロサッカーの試合において東日本大震災を中傷する横断幕が掲げられた件に関する質問主意書」
この愚行には韓国側も驚いた。韓国サッカー協会は「韓日両国の友好にひびが入ってはいけない」と日本に謝罪したが、これによって、韓国の支援に感謝する気持ちが吹き飛んだ日本人は多かった。
ほかにも、韓国の全国紙・中央日報が東日本大震災を報じる記事で、「日本沈没」という見いだしを付けたことも日本人を怒らせた。
それは例外的なことで、韓国人の一般的な認識を表すものではない。しかし、これはそうでもない。
ハンギョレ新聞（2016-04-21）
「2011年の東日本大震災時に誠意をもって援助したのに、返ってきたのは、歴史歪曲、戦時性奴隷制（日本軍慰安婦）に対する国家犯罪の否定だけだ。今度は絶対に助けてはならない」という感情的な反発だ。
［記者手帳］韓国政府が日本に地震救援物資・救援要員を送らない理由
2016年４月に熊本地震が起きると、韓国社会では東日本大震災の時とは違い、市民の間で募金運動をする動きが見られなかった。冷めた空気が広がった背景には、上記の理由があると韓国人記者が指摘した。
この14年間で、これと同じ論調の記事やコラムは何度も読んだし、SNSでも韓国の人たちが日本の「恩知らず」を非難するのを何回も見た。
日本人には受け入れることができない考え方でも、これに共感する韓国人はきっとたくさんいる。
これと対照的だったのが台湾だ。
台湾の総統に就任する予定だった蔡英文氏は「日本の友人たちみんなが無事であることを願っています」とメッセージを発信し、官民を挙げて募金など日本を支援する動きが広がった。
これにはワケがある。その年の２月、台湾で地震が発生したときには、日本人が全力で支援して台湾の人たちを驚かせた。
お互いに恩返しを行う「幸せの連鎖」で、日台のネット上で「本当にありがとう」「永遠の友達」といったポジティブな言葉が飛び交うようになった。
日本に統治された歴史があっても、台湾が災害支援を政治的なカードにすることはない。
「震災時に誠意をもって援助したのに、返ってきたのは国家犯罪の否定だけだ。今度は絶対に助けてはならない」という感情的な反発には、日本からも感情的な反発が返ってくるから「負の連鎖」になってしまう。
韓国人としては「日本は歴史の加害者だから、被害者の声と誠実に向き合うべきだ」という思いなんだろうけど、日本人の立場からすると、援助を受けたとしても歴史問題で譲歩することはできない。そもそも、その二つはまったく別の問題だ。
台湾は歴史問題を主張して日本と対立することがなく、災害支援と過去を結びつける発想もない。
この差が現在の３月11日の違いにつながった。
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