もうすぐ始まる関西万博の目玉のひとつに、世界各国の「らしい料理」がある。たとえば、
韓国館の隣にあるレストランでは有名な参鶏湯(サムゲタン)のほか、「オニャンプルコギ」という、日本ではあまり知られていない焼き肉料理を味わうことができる。
韓国には彦陽(オニャン)群があって、そこで食べられている彦陽式のプルコギをオニャンプルコギというらしい。
もうちょっとがんばって、オニャンコポンプルコギにしたら、別の層からの流入が期待できたのに。
メキシコやアフリカ料理などに比べたら、日本と韓国の料理は食材や味が近いから、参鶏湯もオニャンプルコギも日本人の口に合うはずだ。しかし、日韓の食文化にはさまざまな違いがあって、そのひとつに味覚とは別に「おひとりさま文化」がある。
知人の韓国人女性がこれに驚いた。
15年ほど前、大学生だった彼女に京都を案内していたとき、日本の大学を見てみたいというリクエストがあったので、母校の大学に連れて行くと、今度は「おなかが空いた」と子どものようなことを言い出したので、学食を食べることになった。
トレイの上に自分の好きな食べ物を乗せていくやり方や、殺風景な食堂などは彼女の大学とよく似ていて、特に違いは感じられなかった。しかし、雰囲気がまったく違うと言う。
韓国では複数の人で食事をするのが常識なのに、そこでは一人だけで食事をする学生が何人もいた。彼女の感覚だと、「ひとりめし」をする人は、友だちがいなくても気にしない強者か特別な事情のある人だから、薄気味悪さを感じて引いてしまうらしい。
空席が目立つなか、黙々と食べる学生たちの様子を見て、「この光景が普通だなんて、信じられないですね。なんか悲しい気持ちになます」と衝撃を受けていた。
関西万博で「オニャンプルコギ」を一人で食べている人を見れば、この気持ちが分かるかもしれない。
それから時が流れ、きょねん彼女と話をしていたとき、この学食の話題が出てくると、「あ〜、そんなこともありましたね。あの時はトレイを落としそうになりましたけど、今ならそんなに驚きませんよ」と言う。
それは何ゆえ?
ワケを聞くと、最近は忙しくて時間のない人が増えたり、日本でも人気の『孤独のグルメ』にハマる人が続出したりして、一人飯を恥ずかしい意識が薄れてきたからだとか。そんなことで、韓国でも周囲の目を気にしないで、目の前にある食べ物に集中する人が増えたという。
だから、彼女の中であの学食の風景は、今となっては「そんなふうに考えていた時期が私にもありました」という思い出に変わった。
そんな話を聞いたから、ボッチ飯に対する否定的なイメージは薄れて、「もう韓国ではタブーではなくなったんだな」と思ったら、実はそうでもないらしい。
中央日報の記事(2025.03.14)
「1人前はやってない」韓国飲食店で冷遇を受けた日本女性…韓国旅行ユーチューバー「私が謝る」
ある日本人女性のユーチューバーが韓国を旅行中、ソウルにある美味しいと評判の食堂に足を運ぶと、門前払いも同然のひどい扱いを受けた。
まず、店に入るとオーナーのおじさんから人数を聞かれ、彼女が「1人です」と答え、プデチゲを食べたいと伝えると、オーナーは「1人前はやっていない」と吐き捨てるように言った。彼女が2人前を食べると言うと、彼はため息をつきながら席に案内し、面と向かって「もともと1人前は売っていない」と文句を言う。
凍りついた雰囲気で食事をすることになり、動画には「悲しい気分」、「怖くて心臓が痛くなってきた」という言葉が出てくる。焼酎を注文すると、オーナーから「あ~、もう何だよ、酒までくれだって」、「昼間に酒は出さないんだよ」と不機嫌な口調で言われ、さらに肩身が狭くなった。
彼女はその動画のタイトルを『韓国1人ご飯中、食堂の社長が怖すぎて泣きそうになりました』にした。
この動画が公開されると韓国で注目を集め、店主の接客態度に視聴者が怒り、批判が殺到する。以下のコメントは韓国語を日本語に訳したもの。
・客に対する態度がクソですね。料理の味はともかく、あんな食堂には二度と行くべきではありません。
・あ〜、本当に腹が立ちます。
・客にあんな態度で接客するんだったら、商売やめろよ。
・「一人客は受け付けない」って、下劣な商売人マインド。
・客の眼の前であんな態度をしてはいけないですよ…..。それでも完食する姿には尊敬しますね~。私ならケンカして店を出たと思います。
韓国の有名ユーチューバーも反応して、「私が代わりに謝ります。申し訳ないです」とコメントする。
きっとソウルの若い世代を中心に「ひとり飯」が増えているが、地方では相変わらず冷たい視線を浴びそうだ。韓国全体では今が過渡期で、だんだんと日本に近づきつつある。
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