令和の日本で「大塩平八郎」待望論 彼のしたこと・日本に与えた影響とは?

昨年の夏ごろには、すでに米の値段が上がって手に入りにくくなっていた。農水省の「秋に新米が出回れば落ち着く」というセリフは実際には不幸フラグで、秋が終わって冬になってもそんなことはなく、春になって備蓄米を放出してもコメの価格は上昇を続け、一年前に比べて約2倍になってしまった。
ネットでは、スーパーで5kg5千円超えの米を見て衝撃を受けた人や、よく行くラーメン屋でライスの無料サービスが終了して肩を落とす人がいた。ホテルの朝食バイキングでは、客がタッパーに食べ物を詰めてスタッフともめたというケースもあった(これは関係ない?)。
ことし1月、江藤農水相は「コメは国内の消費を十分まかなえる量が生産されている。異常な状況だ」と国会で話していた。コメの高騰を背景に、過去最高の利益を上げた企業もあることから、いま日本では「農家から消費者に届くまでに誰かが米を抱え込んでいるのでは?」という疑惑が浮上している。それと同時に、日本米が「白いダイヤ」となりつつある今、ネットではあの人物がよく登場するようになった。

・令和の大塩平八郎助けて😭
・大塩平八郎がアップを始めました
・大塩平八郎さんに頑張って貰わないと
・今日本に必要な人材
・江戸時代だったら大塩平八郎がSNSに「大塩平八郎動きます」って言い出してもおかしくないからな

いま日本国民の期待が集まっている大塩平八郎とは、一体どんな人物だったのか?

 

大塩平八郎(1793年〜1837年)

 

きょう5月1日は、1837年に大塩平八郎が自害した日、つまり彼の命日になる。
大塩平八郎が中心になって起こした「大塩平八郎の乱」とは、ざっとこんな出来事だ。

まず、1833年から、江戸の三大飢饉のひとつ「天保の大飢饉」が発生し、食べ物が無くなり、多くの人が餓死したり、病気で亡くなったりした。その後の5年間で、日本の人口が約125万人減少したというデータもある。
大塩平八郎がいた大坂も米不足に陥り、民衆は困っていたが、豪商は米を買い占めて米価は高騰し、餓死者が出るほど事態は深刻化していく。
大塩平八郎は大坂町奉行所の役人をしていて、その後、陽明学者として弟子を教育していた。彼は人々の困窮を見るに見かね、自分が持っていた5万冊の本を売り払い、そのお金で人々を助け、また奉行所に救済策を提案した。しかし、奉行所にそれを拒否されるという塩対応をうけ、ついに彼は挙兵を決意する。
*ただし、大坂町奉行は庶民を“見殺し”にしていたのではなく、米を食べられるようにさまざまな対策をしていた。

大塩と彼に賛成した農民たちは「救民」を掲げて反乱を起こしたが、幕府側の軍にすぐに鎮圧され、その後、平八郎とその息子は自害した。

 

この乱で彼が書いた檄文の内容が、現在の日本国民の心に刺さっている。

「現在、米の価格は高騰する一方である。人々が苦しんでいるにもかかわらず、奉行や役人たちは、人が等しく持たねばならないはずの仁を忘れ、私利私欲に駆られて、自己本位の政治を行っている」
「商人たちはとくに酷い。彼らは大名たちに金を貸し付けていて、その利子として莫大な金銀や扶持米をかすめ取ってきた。彼らはかつてないほどの裕福な暮らしをしている」
「カネや米、つまり、驕れる者たちが貯め込んでいるものを分配することによって、当面の飢饉の難儀を救いたい」

大塩平八郎らが起こした武力蜂起では、「豪商らに天誅を加える!」と焼き討ちを行い、その結果、大坂市中の5分の1が焼失し、270人以上が焼死したと言われている。
乱はその日のうちに終わった。しかし、元役人であった彼が幕府の直轄地である大阪で乱を起こしたことは、日本に大きな影響を与えた。幕府の権威は低下し、その後、彼の遺志を継いで「大塩残党」を名乗る者が現れ、世直しを求める「打ちこわし」などが全国で起こった。こうして倒幕の機運が高まり、大塩平八郎の乱から約30年後、幕府は滅亡する。

令和7年のいま、日本国民は武力行使や破壊行為には共感できなくても、彼のように民衆を救うために本気で活動し、社会を変えるような「英雄」を求めている。

 

 

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この記事を書いた人

今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。
また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。

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