日本で有名なインドの「CCB」と言えば、カレー・カースト・仏教の3つがある。日本で有名なインドの「CCB」と言えば、カレー・カースト・仏教の3つ。今回取り上げるのは、その中で2000年以上の歴史があるというカースト制度だ。
話を進める前に、ひとつ注意がある。
学校で「バラモン(僧)、クシャトリヤ(王や戦士)、ヴァイシャ(平民や商人)、シュードラ(隷属民や農民、労働者)」の4つで構成される身分制度を「カースト」と習った人は多いと思う。しかし、それは過去(昭和?)の話で、現在の教科書ではそれを「ヴァルナ」と書かれている。ヴァルナの中には多くのサブカースト(ジャーティ)があり、ヴァルナとジャーティからなる身分制度が「カースト」と呼ばれる。もし、知らなかった人は情報をアップデートしておこう。
4つのヴァルナの中で最下層に位置するシュードラのさらに下には、「触れると穢れる」と蔑視・差別された不可触賤民(ダリッド)と呼ばれる人々がいて、カーストヒエラルキーにおいて、この不可触賤民が最も低い身分とされている。
この身分制度では、伝統的に下位の者は上位の者に仕えることが当然とされ、不平等が常識とされていた。しかし、戦後インド憲法でカースト差別は禁止され、人権意識が発展するにつれ、下位カーストの立場は強くなっていき、自由や権利を手に入れられるようになった。はずなのに、インドでは地域や年代によって、今でもカースト差別は強く残っている。15年ほど前、インドを旅行したときにそれを実感した。
不可触賤民(ダリッド)の中には「チューラー(Chuhra)」というジャーティ(サブカースト)がある。チューラーはバンギーとも呼ばれ、個人的にはバンギーという言葉をよく耳にしたので、ここではその用語を使うことにする。歴史的に彼らは清掃やし尿処理の仕事を請け負い、「汚れ」を扱うことから上位カーストの差別対象となってきた。現在、インドには約1500万人のバンギーがいると言われている。
バンギーはもともとヒンドゥー教を信仰していたが、イギリス植民地時代にシク教やイスラム教、キリスト教に改宗した人も多かった。現在、パンジャーブ地方のチューラー(バンギー)は主にシーク教を信仰しているという。
many Chuhras converted to Sikhism, Islam and Christianity during the colonial era in India. Today, Chuhras in Indian Punjab are largely followers of Sikhism.
イスラム王朝のムガル帝国時代、イスラム教への改宗を拒否したために床掃除などの雑用をさせられたことが「バンギー」の起源だと主張する人もいる。
トップ画像はインド北西部、ラジャスタン州の都市ジョードプルで、後ろに見えるのは「メヘラーンガル城」、かつてマハラジャ(王)が住んでいた城であり宮殿だ。右側にはイギリス植民地時代の置き土産である時計塔が見える。その時計塔の下に、女性がいるのに気づいただろうか。

この時、インド人のドライバーと車で旅行していて、次の目的地が遠くにあるため、夜明け前にジョードプルを出発することになった。周囲に人はなく、時間が止まったような街中で、女性が1人で掃き掃除をしている様子は目立つ。
ドライバーによれば、彼女は清掃カーストのバンギーで、今でもバンギーを不可触賤民とし、見ると「穢れる」と考える人もいるという。上位カーストの中には、バンギーを直接見ることを避ける人もいるため、彼らが外に出る前に、バンギーの人たちは街を清掃することになっているという。バンギーにとっても、石を投げられるといった嫌がらせを受けずに済むから、お互いに顔を合わせないことは“ウィン・ウィン”になるらしい。
憲法でカースト差別が禁止され、教育を受ける人が増え、社会全体の意識も変わり、人権重視の方向に進んでいるとドライバーは言う。それでも、こうした「朝の習慣」は残っているのだ。50年前、彼らが受けていた差別はちょっと想像できない。
最近、インド政府は次の国勢調査でカーストの所属を尋ねることを決めたと発表した。前回、それが行われたのはイギリス植民地時代の1931年で、国勢調査にはカースト、宗教、職業の項目があった。戦後、インドが独立した後、ネルー首相は社会の分裂を避けるため、個人のカーストを記録しなかった。その後、州ごとに独自の調査が行われたことがある。
今回、約100年ぶりにカーストを尋ねる目的は、インドで教育、医療、社会保障、職業などの面で下位カーストの人々が不利益を受けているため、それを是正するためだという。インド政府機関の雇用や大学の入学では、低カーストの人々を優遇し、「全体の○%を彼らに割り当てる」というルールがある。国としてカーストを把握し、低カーストの人々に対する「アファーマティブ・アクション(積極的差別是正措置)」に活用するらしい。
つまり、社会的な平等を実現するためだが、社会の分裂を危惧する声もある。
カースト差別とは無関係の日本のネット民の感想がこちら。
・禁止されてたのか
・デジタル化で身分がさらに固定されるだけだろ
・政府高官も官僚もカースト上位何じゃないの?
差別是正なんてできるのかな
・その前に、カレーは手で食べるかスプーンで食べるか調べろよ
・スターリンや毛沢東みたいな人物が現れて共産化すれば一気に解決。その後はどうなるかはわからんwww
あのバンギーの女性の子どもはもう、「未明の清掃」をしなくて済むのだろうか。

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