政府は日本らしい多文化共生社会を実現させるため、本格的に動き出した。
これは、日本の法律や文化を守る外国人を大切にする一方で、それらを無視する困った外国人をなくし、「秩序ある共生社会」を目指すというもの。
高市政権は「排外主義とは一線を画す」と強調していて、不法・迷惑行為をする外国人と国内の排外主義を同時に排除するつもりだ。
排外主義は世界中の国にあって、日本もその例外ではない。これから登場するインド人について、ネットで「淫土人」という差別的な書き込みを何度も見たことがある。
最近、日本に住む30代のインド人男性と会ったとき、インドでも「外国人嫌悪」や「排外主義」があるか尋ねたので、これからその内容を紹介しよう。
なお、これはデリー近郊のグルガオンに住んでいて、国際的な企業で働いていたインド人の個人的な意見ということを踏まえて、以下、読み進めてほしい。
インドと日本の「外国人の存在感」の違い
ーー最近、海外で日本は人気らしく、仕事や旅行でやって来る外国人が増えている。でも、その副作用として、外国人に対する排外主義が問題になっているんだけど、インドでもそんな空気はある?
そんな話は聞いたことがない。インドにいる外国人はとても少なくて、彼らは目立たないんだ。
ーー人口世界一の圧倒的なインド人の中で、外国人は存在感が薄いってことか。
それに、日本は先進国で、インドはまだ発展途上国だからね。日本人が「インドで人気のある国はどこ?」って聞いた場合、それは海外旅行先を想定しているだろ?
でも、インド人なら一般的に「働きに行く国」という観点で答える。
仕事を求めて海外へ行くインド人はたくさんいるけど、その逆パターンはない。
ーーこのところ日本は経済大国としての地位が低下して、超円安のおかげで物価が安くなって、外国人観光客の「狩り場」みたいになっている。
でも、「腐っても鯛」で、海外へ出稼ぎに行く日本人の話はまだ聞かない。一時期、「英語を学べて1ヶ月で50万円稼げる」という甘い話を聞いて日本人がオーストラリアへ殺到して、現実に返り討ちにされた。
日本人の同僚が「海外旅行に行く日本人が減った」と言っていた。あれも円安の影響なんだろうな。
ーーその直撃もあるし、日本の国力が低下したせいもある。最近は日本米すら高く感じるぐらいだし、残念ながら、国際社会の中で日本の地盤沈下は進んでいる。だから、外国人が増えて存在感が強くなったんだろうけど。

インドの高級レストランで、「炎のパフォーマンス」を見て喜ぶタイ人観光客。
京都には外国人観光客をターゲットにして「燃えるラーメン」を出すラーメン店がある。学生時代、ラーメン1杯1000円以下で食べた記憶があるのだけど、今ではラーメンを単品で注文できないらしい。
「ラーメン、和牛寿司(2貫)、唐揚げ、餃子、店のバッヂ」で7130円と、日本人離れした価格設定になっていて驚いた。
インド人と日本人の「外国人観」の違い
そもそも日本とインドでは外国人に対する見方が違う。インド人は外国人旅行者について「お金持ち」というイメージをもっているから、タージマハルの入場料みたいに外国人には高い価格が設定されている。
※タージマハルの入場料はインド人が約100円に対して、外国人は約2100円ナリ(2024年)。
だから、一般的に「外国人がたくさん来るほど、インドは豊かになる」とポジティブに考えられているんだ。
ーー旅行については、日本もそうなりつつあってギャップが開いている。5000円超えの「インバウン丼」を出すような店は外国人観光客を「福の神」として熱烈歓迎するけど、関係ない日本人はオーバーツーリズムの問題でウンザリしている。
個人的には観光地に外国人料金を設定して、地元の人に還元すればいいと思っている。
日本人が嫌な気持ちになる気持ちは理解できる。京都を旅行したとき、バスや電車に、でっかいスーツケースを何個も持ち込む外国人観光客と、それに冷ややかな視線を送る日本人を見たからな。
ーーSNSを見ていると、外国人観光客が来て生活が不便になったから、ぶっちゃけ「疫病神」みたいに感じている日本人は多い。それに加えて、あからさまに外国人客をターゲットにする店が増えたから、自分たちの地位が低下したことを実感する日本人もたくさんいる。
外国人を尊重すると言っても、いちばん大切なことは自分にとっての「損得」だ。
いまインドは発展途上にあって、外国人は利益をもたらしてくれるから、彼らを排除する雰囲気はない。
ーー日本で排外主義が生まれる大きな要因は、経済の低迷にあることはまず間違いない。日本で外国人の存在を「得」に感じる人が増えれば、そんな空気も薄くなるけど、今のところそんな気配は広がっていない。
インド人と日本人の「規律」の違い
ーーインドで外国人旅行客のマナーが悪くて、国民のヒンシュクを買うということは?
ないない。インド人のマナーはもっと悪いから。
インド人が日本へ来て印象的に感じるのは「規律」なんだ。人びとはどこでもきれいな列をつくって並んでいるし、電車の中では静かに過ごしている。それに路上にゴミが落ちていないというのは、規律正しい日本人にとっては当たり前のことでも、インド人には驚異的なことなんだ。
ーーほかの外国人もよくそんなことを言う。個人的に、その3つで母国と変わらないと言ったのはフィンランド人しか知らない。
日本人は規律の基準が高いから、外国人の行動に不満を感じやすい。俺も日本に住んでいるから、電車の中で大声で話す外国人を不快に感じるけど、インドにいたら気にならなかった。きっと、そんな外国人の存在に気がつかなかった。
ーー日本人は一般的に周囲に配慮して行動するから、外国人より「迷惑耐性」が低い。そこから感じる不満や怒りが排外主義への門になるんだろうな。
まとめ
日本経済が復活して、国内での日本人の立場が向上したら、「排外主義」の雰囲気も変わるのだろうが、その道は遠く険しい。
今のところは、即効性として政府が「秩序ある共生社会」の実現に本気で取り組んで、外国人に対する国民の不満や不安を減らし、長期的には日本経済を強くしていくことが理想的。
日本人に対して外国人が圧倒的な金持ちになり、料金の差が20倍以上になれば、外国人が「福の神」のように見えて排外主義が無くなるかもしれないが、そんな未来はイラナイ。

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