韓国ドラマや音楽に惹かれ、韓国に興味を持つ高校生は多い。しかし、日本と韓国では「スピード」と「安全」に対する価値観が大きく異なる。この記事では、パリパリ文化や日韓のリアルな違いについて解説する。
日本と韓国は古代から隣どうしで、昔から人と交流や物の移動があったから、文化的にはよく似ている。
たとえば、どっちも儒教の影響を受けて、年上には敬意をしめす文化があるから、韓国語にも敬語やタメ口がある。
高速道路、カバン、体温計は日本語の発音でそのまま韓国人に通じてしまう。
しかし、日韓の価値観には、「スピード感」という超えられないほど大きな壁がある。
これから、そんな文化の違いを見ていこう。
アニメやマンガで感じるテンポの差
韓国のドラマやアニメを見て、展開の早さを感じる日本人は多い。
AIに日韓のアニメやマンガの違いを質問すると、韓国のものは「アクションやテンポの速い展開が特徴」で、日本のものは「丁寧な作画や心理描写が特徴」という答えが返ってきた。
以前、「世界最強の高校生を決める!」という内容の韓国アニメ、『ゴッド・オブ・ハイスクール』を見てそれを実感したことがある。
バトルのアクションシーンは良かったけれど、テンポの早さが説明不足につながって、個人的にはついていけなかった。
日本人の評価を見ると、ほかにも「置いてけぼり」感を持つ人がいる。
次から次へ変化していくスピーディーな展開が好きな人はハマる。
スピードは韓国人の「誇り」
韓国の事情にくわしい人に聞くと、日本人との国民性の違いとして“スピード感”を挙げることはよくある。
韓国人にとってそれは自慢のタネだ。
10年前、知り合いの韓国人は「ネットにつながる速度は、我が国が世界最速なんです」と鼻高々に話していた。
後で述べるが、「漢江の奇跡」と言われる経済成長を誇りに思う韓国人は多い。
しかし、物事には常に表と裏がある。
韓国社会の圧倒的なスピードの裏側には、表面的には「見えないコスト」が隠されているのだ。
韓国の「スピード優先」と日本の「安全第一」という文化の違いは本当に対照的だ。この価値観の差に両国の「らしさ」がよく表れている。
韓国の火災で日本人が注目したところ
先日、ソウルで日本人が巻き込まれる痛ましい事故が起こった。
日本のメディア(TBS)が注目したのは、このホテルがスプリンクラーを設置していなかった事実だ。(3/16)
「スプリンクラーなかった」韓国・カプセルホテル火災 日本人親子の母親が意識不明の重体に ソウル中心部・明洞近く 市など緊急安全点検
しかし、このホテルにそれを設置する義務はなく、スプリンクラーに関しては法的な問題はなさそうだ。
日韓ではスプリンクラーの設置基準はそれぞれ違うが、法規制については日本のほうがとても厳しい。
厳しい日本の基準「遡及適用」とは
その理由は、日本では法律ができる前に建てられた古い建物にも、新しい法律が適用されるからだ(遡及適用)。
韓国では2018年に、6階以上の建物にはすべての階にスプリンクラーを設置することが義務づけられた。
しかし、このカプセルホテルはそれ以前に建てられていたため、その対象外となった。
日本ならこの場合、法律をさかのぼって、それ以前にあった建物にも新しい法が適用される。だから、ホテルにとっては数十万、数百万、それ以上の負担になるが、日本では国民に重大な影響を与えることに関しては「嫌です、やりたくありません」は通用しない。
今回のカプセルホテルは、日本に比べれば安全基準は低かった。
しかし、そうでなかったら、首都の繁華街という最高の立地で、3千円台からという格安で泊まることはできなかったはずだ。
おそらく韓国人の価値観からすると、新しくできた法律に合わせて、時間とお金をかけて既存の建物を改修する「遡及適用」の考え方はすごく嫌われる。
見た目重視で「見えない安全」は後回し?日韓の価値観のズレ
日本に住んでいたインド人が韓国旅行をしたと言うので、感想を聞いてみたら、
「ソウルは予想以上に発展していて、東京や大阪と変わらない。IT化が進んでいて、地下鉄は日本よりも便利だった」
と称賛していた。
しかし、見た目は同じでも、安全を最優先して厳しい基準を守る日本と、外観(見栄え)やスピードを重視する韓国では、いざというときに違いがあらわれる。
ただし、世界的な基準からみると、韓国が安全を軽視しているということはなく、日本がとくに厳しいのだと思う。
「スピード重視の韓国」vs「安全第一の日本」
なぜこのような違いが生まれるのか?
その根底には、韓国特有の「パリパリ文化」がある。
韓国語の「パリパリ(빨리빨리)」とは「早く早く」という意味で、食事の提供からネット回線の速度、新しい流行の取り入れ方に至るまで、韓国の人たちはとにかくスピードを優先する。
韓国が世界有数のIT大国へと急成長したのも、そんな国民性や文化のおかげだ。
しかし、日本レベルの「安全性」と韓国並みの「スピード」を両立させることは不可能だ。
韓国社会は「高速」を維持しながら、安全対策をおこなってきた。
そのため、全体的・表面的な見た目は立派でも、細かい部分が“おろそか”になっていることがあり、結果として全体の完成度は落ちてしまう。
そのパリパリの気質と、石橋を叩いて渡る日本の価値観の差が社会のさまざまな場面で表面化する。
韓国で相次ぐ「信じられない」事故の数々
韓国のニュースを見ていると、日本ではちょっと考えられないような事故が何度も起きている。
スピードを優先し、見えない安全が後まわしにされたことが、思わぬ事故を引き起こす原因になっている。
3年前、『日テレNEWS』に以下のニュースがあった。
【韓国・釜山】23階建て複合ビルが“火柱”…「一瞬で燃え広がった」
ビル火災は日本でも起こる。
しかし、上の動画を見ると、日本人の感覚では考えられないほど、ビルの外壁が激しく燃えている。
コメントを見ると、そこに違感感をおぼえたり、驚いたりする人が多かった。
「不思議な燃え方だな」
「毎度毎度かなり規模のでかい事故起こってるぞ。どうなってんだ」
「スプリンクラーとか消火器設置義務とかないの? これだけの高層で対策ないなんてあり得ない」
ニュース動画の中で火災を目撃した人が、「一瞬で上まで燃え広がった」と話していることを考えると、日本とは防災対策が違っていたとしか考えられない。
『ANNnews』の報道によると、2022年にも同じような事故が起きている(2022年12月29日)。
高速道路でバスとトラックが衝突する事故は日本でも起こりえるが、防音壁が激しく燃えていることに、日本のネットユーザーが驚いた(上の動画を見てほしい)。
そんな気持ちがこのコメントによく表れている。
「まさかこれ、防音壁の屋根材が可燃性の樹脂製なのか? 韓国って一体どういう建築基準なんだろ?」
実は韓国でも、以前から防音トンネルの構造が問題視されていたのだ。
施工がしやすく、工期やコストを短縮できるという理由で、熱可塑性プラスチックを使って建設すると、火災が発生すると相対的に危険度は高くなるという分析があった。
しかし、結局は「スピードや手軽さ」が優先され、今回の死亡事故の原因となった。
つまり、「人災」の面も大きい。
日本人が韓国の高速道路を見ると、「見た目」は日本と変わらないという印象を受けると思う。
しかし、日本基準と比較すると、韓国の建築物は全体的に耐火基準が低いため、事故が発生すると被害規模が大きくなる。
インフラ事故に見るスピード至上主義の代償
韓国のインフラ設備について、安全性に疑問を感じさせるニュースは後を絶たない。
ソウルにある鉄製の歩道橋が、安全点検をおこなって「A等級(異常なし)」という結果だったのに、その直後、突然アメのように大きく変形してしまった。
朝鮮日報の報道(2023/01/04)
歩道橋がぐにゃり、半月前の安全点検では「異常なし」だった /ソウル
また、車輪が外れたまま新幹線が走行し、脱線事故を起こして多数の乗客がけがをするという事故も日本では聞いたことがない。
朝鮮日報の記事(2022/01/07)
韓国高速鉄道脱線、事故現場の3キロ手前で車輪発見
大惨事に直結するこの事故の原因として、朝鮮日報は「車両の整備不良、部品の欠陥で車輪が脱落して事故が起きた人災である可能性を示す」と厳しい指摘をした。
韓国では一年あたりの鉄道事故の件数が、40件(2020年)→48件(2021年)→66件(2022年)と増加していたため、政府が韓国鉄道公社(KORAIL)に対し、「強化対策をとりなさい」と勧告をおこなった。
こうした事例の背後には、スピードや効率を最優先する文化があるはずだ。
なぜそこまで「スピード」を求めるのか? 急成長がもたらした光と影
韓国の人たちはスピードを追い求め、基本的にそれは「正しい」とされている。
3年前、ハンギョレ新聞の寄稿に興味深い分析があった(2023-01-18)。
有史以来、つまり人類が文字を獲得して以来、「韓国ほど急速な経済成長を遂げた国はない」と胸を張る。
戦後に奇跡的な復興を実現した日本やドイツ、さらには近年の中国でさえ「韓国と比較するほどではない」という。
1960年代にはじまった「漢江の奇跡」と呼ばれる経済成長によって、韓国は天にも昇るようなスピードで世界的な経済大国となった。
それを誇りに思う韓国人はとても多い。
しかし、その光の裏には大きな闇があった。
同紙は、経済的に大成功したにもかかわらず、「韓国人は次第に不幸になりつつある」と指摘している。
韓国社会にはスピードが速く、競争が激しいという特徴がある。
うつ病の発症率や自殺率は世界トップクラスになり、貧富の格差が開いて不平等が「おなじみの日常となった」という。
知人の韓国人に聞くと、いま韓国ではとくに若い世代で、速さよりも日本社会のような「心のゆとり」を求める人が多いという。
韓国の「スピード優先」のツケ
今回は韓国の「スピード重視」と日本の「安全重視」という文化の違いに焦点を当てたため、全体的に韓国社会のネガティブ面が浮かび上がったが、もちろんこれはどちらが「上か下か?」という単純な話ではない。
つまるところ、日韓では価値観や国民性が違うのだ。
1953年に朝鮮戦争が終わった時、韓国は全土が焦土となっていた。そこから経済的に大発展し、今では先進国と同じ水準の豊かな生活を実現している。
こんな猛スピードで成長した国は世界的にも例がなく、きっと「世界最速」だ。それを国民が自慢に思うのも当然。
もし、韓国が日本と同じ高い安全水準を維持していたら、こんな「奇跡」が起こることはなく、きっと今よりも貧しい生活をしていた。
「見えないところ」にお金をかける日本の強み
日本には「古いホテルにも最新の安全基準を守らせる」という厳しさがある。
くり返し言うけれど、日本がその面で高い基準を適用しているだけで、韓国の安全基準もきっと世界水準をクリアしている。
しかし、日本の「石橋を叩いて渡る」ような安全重視は、強い「リスク回避」の意識につながり、海外から「日本人は決定が遅い」「マニュアル社会だ」とよく批判される。
しかし、日本の社会は目立たないところに時間とお金をかけているから、安全に生活することができる。
それに対し、韓国の社会はスピードが優先されるから、変化が多くてダイナミックだ。
全方面での「ストロングポイント」を求めるのは、ぜい沢すぎる。
日韓では異なる文化を持っているからこそ面白いし、価値観の違いを知ることで、自分の参考にもなる。

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