今回登場する国は、中南米にあるカリブ海の島国、バハマ。この国は観光業が盛んで、豚やサメと泳ぐというユニークな体験ができる。
だがしかし、日本からは遠く、歴史的にもほとんど縁がないから、知名度も低い。
ネットで調べると、最近、世界最高峰のラグジュアリークルーズ船『シーニック・エクリプスⅡ』が初めて新潟港に入港したというニュースを見つけた。
新潟市の職員やマスコットキャラの「よしあきくん」が歓迎していたから、かなり力が入っている様子。乗客は田んぼを見学したり、日本酒を楽しんだりすることを楽しみにしているらしい。
気になったのは、ニュースに出てくる乗客が全員白人だったこと。
バハマは約700の島々からなる国で、基本スペックは次の通りだ。
面積:13,880平方キロメートル(福島県とほぼ同じ)
人口:41.0万人(2022年)
首都:ナッソー
民族:アフリカ系(90.6%)、欧州系白人(4.7%)、混血(2.1%)、その他
言語:英語(公用語)
宗教:キリスト教(プロテスタント、英国国教会、カトリック等)等
ソース:外務省HP「バハマ国(Commonwealth of The Bahamas)基礎データ」
1492年、コロンブスがアメリカ大陸に到達した時、バハマも“発見”された。1782年にスペイン領となったが、翌年にはイギリス領となり、1973年に独立するまでその状態が続いた。
先日、知人のアメリカ人女性と話をしていたとき、そんなバハマが話題に出てきた。
ーー「最近、何かありましたか?」という文をアプリで翻訳すると、「Has anything happened recently?」と出てきたけど、これで合ってる?
いや〜、その文はちょっと固いし、悪いことがあったのか尋ねているように聞こえるな〜。相手が友だちなら、「What’s new?」か「What’s new with you?」でOK。
ーーそれはすごくラク。じゃ、さっそくワッツニュー?
この前バハマに行ってきてん。
ーーバハマか〜、いいよね〜。どこにあるんだっけ?
フロリダのちょっと先。近くて行きやすいし、アメリカ人ならビザもいらない。海はめちゃくちゃキレイだし、英語も通じるし、治安もいいから、バハマはアメリカ人に人気の観光地なわけよ。
ーー治安が良いってのはやや意外。メキシコとかエルサルバドルとか、中米はまとめて「危険地帯」と思い込んでいた。
アメリカでは、「バハマには黒人が多いから治安が悪い」って差別的なステレオタイプを持っている人もいる。でも、バハマは観光に力を入れているから、実は観光地はとても治安がいい。一般の場所はわからないけど、観光客が多いところはわりと安心・快適なのよ。
ーー日本とは逆だな。
京都や鎌倉では外国人観光客が増えすぎて、市民がバスや電車に乗りにくくなったり、ゴミが散乱したり、交通トラブルが起きたりしている。オーバーツーリズムのせいで、住みにくくなったと文句を言う住民は多い。治安が悪くなったわけじゃないけど、快適さはなくなっている。
それは、バハマが観光業で成立している国だからでしょー。政府は観光客を守るためにすごく力を入れている。観光地はほとんど外国人だし、ある意味「住み分け」ができているから、オーバーツーリズムの問題は少ないんじゃないかな。
日本の観光地には外国人も日本人もいて、ごちゃ混ぜ状態だった。でも、バハマの観光地では、従業員は現地の人であとは外国人ばっか。ある意味、「住み分け」ができているから、オーバーツーリズムはないんじゃないの?
ーー京都の「錦市場」は、外国人向けに物価が上がって、日本人観光客が減ったと聞いたことがある。日本の観光地も「二極化」が進んでいるのかもしれない。
*データの年代は不明ながら、バハマでは観光業が国内総生産(GDP)の約50%を占め、約40%の雇用を生んでいる最大の産業になっているという。
ーーそんなバハマにどのくらいいた?
3泊4日。
ーー意外と短いな。日本で言うと、台湾や韓国みたいな感じか。で、バハマではどんなカルチャーショックを感じた?
別に…。いつもアメリカ人の観光客に囲まれていたし、生活に必要な物資はアメリカから運ばれてくるから、見慣れたものが売られていた。文化的にはアメリカに近いし、3泊だけだったから、日本で「活け造り」を見たときのようなショックは受けなかった。
あえて言うなら、物価かな。
ーーそりゃ、アメリカに比べたら安いだろうね。日本では外国人観光客をターゲットに、1万円を超える「インバウン丼」なんて丼ものがあって、日本人がドン引きしている。
(観光地の値段設定でも二極化が進んでいる?)
いやいや、逆。バハマはリゾート地なのにオールインクルーシブじゃないから、物価はアメリカより高かったのよ〜。
オールインクルーシブとは、宿泊料金に食事や飲み物、アクティビティなどがすべて含まれる宿泊プランのこと。いわば「全部入り」。追加料金がかからないから、あとで請求金額を見て後悔しなくすむ。最近は、日本でもオールインクルーシブの宿泊施設が増えてきた。
彼女は観光地にいたから、一般のバハマの物価とは違う世界を経験していたはず。
今回、話をしていて印象的だったのは、バハマではたくさんの選択肢が用意されていること。たとえば、子どもも利用できるプールは無料で、大人専用のプールは有料だったり、ビーチやプールで使うイスもいくつかの「レベル」に分かれている。プラスチック製の座るだけのイスなら無料で、寝転がることができるものは有料、テントのようなものにカウチやテレビがあるものはもっと高い。
つまり、お金を払うことで、得られる楽しみや快適さが細かく分かれている。「すべては金しだい」で、アメリカの資本主義の嫌なところが表れていると思ったけど、彼女は、選択肢が増えるからむしろ良いことだと言っていた。
一般的に、日本人は他人の目を気にしたり、自分と他人を比べたりすることが多いが、アメリカ人はその傾向が少ない。露骨な「階層化」の背後には、そんな違いがある予感。
初代大統領は「ナカヤマさん」 かつて日本領だったミクロネシア
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