「謙譲」は美徳か失礼か? インドネシア人が日本で感じた文化の違い 

瑞穂(みずほ)の国・日本には、知識や技術があって、社会的に高い地位にいる人ほど、他人には丁寧に接することを意味する「実るほど頭(こうべ)を垂れる稲穂かな」という言葉がある。
日本人が嫌いなのは偉そう&ごう慢な人間で、こんな謙虚な姿勢を見せると、人として立派で、社会的に高く評価されることが多い。
しかし、「郷に入っては郷に従え」で、謙譲はすべての文化圏で「美徳」として通じるわけではない。

ネットを見ていたら、高校生が中学生のころカナダに留学していたとき、考え方が一変する体験をしたと書いていた。
ある日、カナダ人の友人が「あなたは絵がうまいね〜」と褒めてくれたから、「いやいや、大したことないよ〜」と返した。日本人なら「ホントうまいって〜」となっていたと思われるが、相手は少し怒った顔をして、「私は本当にそう思ってあなたを褒めている。だから、私の言葉を受け入れてほしい」と言う。予想外の展開に彼は言葉を失った。

この経験から、それまで謙虚でいることが正しいと思っていたが、考えが変わり、褒められたら素直に感謝するようになったという。

この話に、大人のネット民が思ったことは?

・知ってる!って返そう
・そんなことないよ(ニチャア)
コレが駄目なだけ
・勉強してきた?
ううん全然
・「おいしい!お店だせそう」なんて言われたら
「なら払えや、税抜1400円な」と返してしまいそう
大阪民です
・当たり前だ、俺を誰だと思ってる
とか言ってみたいな一生に一回くらいは

誰かに褒められたとき、まず相手が本気かお世辞かを見極めないと、かなりハズいことになる。
以前、「お前、すげーなあ」と言われて、「サンキュー、それなりに頑張ったから」と照れ笑いして返したら、相手に「え?」と意外そうな顔をされたことがある。社交辞令にマジレスしたことに気づくと、かなり恥ずかしい。
でも、本気で褒めているのに、「いえいえ、そんなことないです」と否定されると、謙遜だと分かるけど、あまり良い感じはしない。
小麦文化の欧米では、稲穂と違って、実るほど頭をまっすぐ上げているほうが好印象に見える傾向が強い。

 

知人のインドネシア人(20代の男性)が日本の大学に留学していたとき、「謙譲の美徳」にカルチャーショックを受けた。
国際交流パーティーで、日本人のおばさんから「あなたは日本語が上手ですね〜」と褒められたから、インドネシアの感覚で「はい! 私はがんばって勉強しましたから!」と元気よく答えた。
すると、あとでインドネシア人の先輩から、「オマエ、今度から誰かに褒められたら『いいえ、まだまだです』と言え。『相手の言葉を否定するのは失礼だ』というのはインドネシア人の感覚で、日本人はそうじゃない」と注意され、彼は思わず絶句した。

このインドネシア人からすると、否定するのは相手に対する非礼だけでなく、過度な謙遜は自分の価値を低く見せ、自信がないように見えてしまう。だから、「謙譲の美徳」は二重に相手に悪い印象を与えることになる。しかし、日本ではそれによって人間としての評価が高くなると知り、彼にとっては理解できないほどのカルチャーショックをうけた。
この経験から、彼は褒められたら「ありがとうございます」と受け入れ、「でも、まだまだです」と謙虚さを示すことがルーティンになる。

ちなみに、そんな彼に、京都人から「おたくの娘さん、ピアノが上手ですね〜」と褒められた場合、それが「やかましくて迷惑だ。しっかり教育しとけ!」という意味かもしれないと伝えると、彼は京都に住む自信を失った。

 

世界的に見れば、「いえいえ、大した事ないありません」や「まだまだです」が謙譲や美徳として通じる国はきっと少ない。とはいえ、0か100の二者択一ではないから、こういう返しのほうがいい場合もある。
でも、基本的に外国人相手なら、日本人はもっと堂々とした態度を見せていい。

 

 

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この記事を書いた人

今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。
また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。

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