お寺に来るのは参拝者だけではない。最近、山形県の酒田市で、体長約メートル、体重32キロのクマが、お寺の床下に入り込んで騒ぎになり、1週間ほどで捕まって山に戻された。
昔、ある地域ではクマが罠にかかると、棒で叩いて痛めつけてから山に放すという話を聞いたことがある。
仏教の考え方ではダメだろうし、現代的には動物虐待になるのだろうけど、クマが人里に近づかないように、体に恐怖を植えつけることが「共存」のポイントだという話には説得力があった。
さて最近、日本の学校で日本語を学んでいる台湾人、リトアニア人、カナダ人、韓国人を連れてお寺へ行ってきた。
彼らは全員20代の男性で、信仰については以下のような感じ。
台湾人:あまり熱心ではないが、道教と仏教を信じている。
リトアニア人:キリスト教(カトリック)を信じているが、信仰心はだんだんと薄くなっている。
カナダ人:イスラム教を信じている。
韓国人:子供のころはキリスト教を信じていたが、今は無宗教に近い。
*韓国では、無宗教をのぞけばキリスト教徒が最も多く、人口の3〜4割を占める。仏教徒はその半分ほどしかいない。
これから紹介するのは、日本のお寺や神社のマストアイテムのこれだ。

神様や仏様に近づくには、心身を清潔な状態にしておかないといけない。そのために手に水をかけたり、口に含んだりする行為を「手水(ちょうず、てみず)」といい、神社やお寺にはそれを行うための「手水舎(ちょうずや、てみずや)」が設置されている。
神や仏がとても尊い存在であることは海外でも変わらないはず。とすれば、手水のように心身をキレイにするという考え方や行為は他の国にもあるのだろうか?
それぞれの外国人に意見を聞いてみた。
台湾人:「道教の廟や仏教のお寺へ入るときに、そんなことをしたことはありません。何もしないで門をくぐって、そのまま中へ入ります。私が知らないだけで、手水のような特別な儀式をするところがあるかもしれません。」
韓国人:「私は教会へ通っていましたが、そんなことはしませんでした。お寺にはほとんど行ったことがないのでよく分かりませんが、そんな話は聞いたことがありませんね。」
リトアニア人:「あります。私が通っていた教会では、入口に聖水が入った入れ物が置いてあって、信者はそれに指で触れて十字を切ってから中へ入っていました。」
カナダ人:「イスラム教でも、手水ように『ウドゥ』をします。モスクには洗い場が設置されているので、蛇口をひねって水で手や口、腕、足などを洗います。神(アッラー)は心と体が清潔な人間を喜ばれるので、信者は身体を浄化してからモスクに入ることになっています。」
ということで、彼らに聞いたかぎりでは、手水の文化は日本に近い台湾や韓国には無く、遠いキリスト教やイスラム教の世界にはある。
心身を清浄にしてから神仏に近づくという考え方は、インド生まれの仏教ではなく、日本生まれの神道の発想で、現在では神社にもお寺にも手水があって、日本の一般的な風習になっている。手水は日本独自の行為だから、台湾や韓国に無くてもおかしくない。
とはいえ、聖水でケガレを洗い流すという考えや行為は世界的にあり、手水はその一形態、日本バージョンということだろう。

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