釜山出身のジャーナリスト、李 正宣さんが「JB press」に書いた記事を読んで、韓国人の“らしさ”がじわじわ伝わってきた。
「李在明氏、トランプ氏との電話会談を大統領選勝利から3日も待たされる羽目に、『これは尋常でない』と韓国中が狼狽」(2025.6.9)
キーワードは「スピード重視」と「基準は日本」だ。
これまで韓国では、新しい大統領が就任すると、その日にアメリカ大統領から電話でお祝いのメッセージをもらっていた。しかし、先日、大統領に選ばれた李在明(イ・ジェミョン)氏にはそれがなかった。3日後、ようやくトランプ大統領と電話で話すことができたから、韓国内では「コリア・パッシング」を不安視する声があがっている。
また、アメリカで新政権が誕生した際には、韓国の大統領が日本の首相よりも早く、そして長く米大統領と話すと、国民から高く評価されるという。だから、韓国外交では「日本より先」がとても重要になっている。
「빨리빨리(パリパリ:早く早く)」とスピードを優先することや、「日本より上か下か」が判断基準になっているところが、とても韓国らしい。
さて、今は韓国の日本企業で働いていて、日本語がペラペラの40代女性のキムさんと話をしたので、今回はその内容を紹介しよう。
ーーこんばんは。
アンニョンハセヨ(안녕하세요)。
ーー韓国語のアンニョンハセヨは「こんにちは」って意味だよね? いま日本は午後9時半だ。大韓帝国時代にあった、日本との約30分の時差はもう存在しない。もし、あったとしても、こんな時刻にも韓国では「こんにちは」でいいの?(韓国標準時)
それは一知半解というものだよ。日本語の「おはよう」、「こんにちは」、「こんばんは」と違って、「アンニョンハセヨ」は時間を超越している。これ1つ覚えたら、朝・昼・晩のいつでも使えるから、とても便利だ。
「1粒で2度おいしい」のグリコキャラメルよりもおいしい言葉だと思わない?
ーー「アンニョンハセヨ」の味がわからないから何とも…。
ところで、「アンニョン」を漢字にすると「安寧」になる。これには「平和で穏やか」という意味があるから、「アンニョンハセヨ」を直訳すれば「安寧(安らか)でいらっしゃいますか?」となって、とても丁寧な表現だと思う。
日本語を学んでいる外国人に好きな言葉を聞くと、「一期一会」という答えが返ってくることが多い。日本語については上級レベルにいるキムさんには、日本語で何か好きな言葉はある?
いいよねー、「一期一会」。出会いが大切だってことはみんなが知っているけれど、失って初めて本当の価値に気づく。でも、私は性格がひねくれているから、みんなが「いい」と思うものには背を向けたくなる。いま好きな日本語は「笑顔」かな。
ーー笑顔。それはすごく基本的な日本語で、逆に深い理由がありそうで聞きたくなる。
おいおい、勝手にハードルを上げないでくれ。
私が日本へ行ったり、日本人と話したりして、とても印象的だったのはそれだから。韓国人はとても素直で、喜怒哀楽の感情をはっきり顔や態度にあらわす。日本人よりはね。
ーーそれはそう思う。感情豊かな日本人と控えめな韓国人というのは、ここじゃなくて、別の世界線にいそう。
でも、韓国人の場合、その4つの感情が25%ずつ等分されていない。不満をふくめて「怒」が占める割合が多いなと、日本人の穏やか笑顔を見ていて感じるようになった。韓国人には普通のことでも、日本人からしたら不機嫌そうに見えたり、話しぶりが怒っているように聞こえたりすることがよくある。
ーー「アンニョンハセヨ(安らかでいらっしゃいますか)」と丁寧にあいさつとするのと矛盾しているような。
直訳を持ち出して、揚げ足を取らないでくれ。日本語の「検討します」は実際には、「この話はこれでおしまい」って意味で、そんな表現はたくさんあるじゃないか。私はこれまで何度もだまされてしまった。
私は日本人と一緒にいたり、日本語で話す時間が長くなったりして、自然とニコニコする時間が増えて、人生が変わったから、今は「笑顔」って日本語が好きなんだよ。
ーー知り合いのアメリカ人女性は、日本と韓国に住んだことがある。彼女は逆に、日本人にはウラオモテがあって、笑顔を見ても本当の気持ちがよく分からないから、韓国人のハッキリした性格のほうが好きだと言っていた。
私は彼女じゃない。私が語れるのは私の経験だけで、その有効範囲は私を超えることはない。私にとって、笑顔が増えたことで、周りの人から「話しかけやすくなった」と言われたのは重要な事実だから、今は「笑顔」って日本語が気に入っている。
それに私は全否定や全肯定もしていない。もともと性格をベースにして、日本人の良い要素を取り入れただけだ。
ーーなるほど。抽象的な「一期一会」よりも、その「笑顔」には実体験がともなっているから説得力や深みがある。
では、もう遅いので今回はここまでにしよう。おやすみなさい。
ハードルを超えられたようでホッとしたよ。안녕하세요。

コメント
コメント一覧 (2件)
> 今は韓国の日本企業で働いていて、日本語がペラペラの40代女性のキムさんと話をしたので、
だそうですが、私には、この記事で彼女の話し方がところどころ「男言葉」になっているのが気になりました。たとえば「おいおい、勝手にハードルを上げないでくれ」とか。
彼女は、そういうしゃべり方を「わざと」しているのですか? それとも他に何か理由が?
ちなみに、外国人(の男)は、日本語がうまくなればなるほど、「女言葉を使うようになる傾向がしばしば見られる」という話は聞いたことがあるのですが。まあでも、それはおそらく、その人の周囲に普段からいてよく会話をする日本人の影響なのでしょうね。
こうした言葉づかいは「キャラ設定」です。
無味乾燥で無表情の人よりはいいかなと思いまして。