アジア人で初めてノーベル賞をとったのは、ベンガル人の詩人で思想家のタゴールさん。
彼は1913年にノーベル文学賞を受賞した。タゴールは何度も日本に来たことがあり、日本人の自然に対する態度について、次のように語った。
「日本は自然を支配することを自慢しない。この上ない配慮と喜びをもって数々の愛の捧げものを自然に向かってさしだす。」
ソース:日本バングラデシュ協会のHP「タゴールの日本文明論と世界平和」
大正時代に来日し、伝統的な日本家屋でくつろくタゴール(1916年)
今回は、日本に住んでいる2人のバングラデシュ人から聞いた話を紹介しよう。
※バングラデシュとは「ベンガル人の国」という意味。
1人はヒンドゥー教徒の男性、もう1人はイスラム教徒の女性だ。2人とも20代で、ここでは、男性をディパク、女性をアイシャと呼ぶことにする。
これは、これから記事を書くためのメモ的なもので、要点を簡単に書いていく。
◯バングラデシュのいいところ
ディパク:日本に来てから、「バングラデシュのほうがいいな」と思ったのは、簡単に薬を買えること。バングラデシュでは処方せんがなくても、薬屋に行って症状を説明すると、すぐに薬をくれる。
アイシャ:バングラデシュと比べると、日本は何でも慎重すぎると思う。手続きが多くて、「これって本当に必要?」と思うことがよくあるし。日本の社会には「過保護」な部分があるんじゃないかな。
ディパク:まぁ、何でもテキトーなバングラデシュもどうかと思うけどねw。
◯バングラデシュの食文化
ディパク:バングラデシュ人は米と魚をよく食べる。それが食文化の中心だから、バングラデシュは「米と魚の国」とも呼ばれている。
アイシャ:日本人も寿司や海鮮丼を食べるし、「米と魚の国」という点では、日本とバングラデシュは同じね。
ディパク:バングラデシュにも、日本の神嘗祭(かんなめさい)のような収穫祭がある。それが、秋におこなわれる「ナバンナ(Nabanna)」ってお祭り。その年に収穫された最初の稲を神に捧げて、豊かな収穫を感謝するんだ。
メヘンディ
◯メヘンディについて
アイシャ:「ヘナ」は素材の名前で、ヘナを使って描く模様を「メヘンディ」っていう。前に、あの模様を「ヘナ」と誤解している日本人がいたのよ。
メヘンディはインドやバングラデシュの文化で、宗教的な意味はないから、ヒンドゥー教徒やイスラム教徒でもすることができる。結婚式なんかのお祝いのときにやることが多い。気分がアガるのよ。
最近、イスラム教の祭り(イード)があったから、手のひらにメヘンディを描いてみた。
◯新車の「お祓い」について
ディパク:ヒンドゥー教にも、新しく車を買ったり家を建てたりしたときに、まずプージャ(儀式・祭り)をする習慣がある。ヒンドゥー教ではガネーシャは「始まりの神」とされているから、何かを始める前にまずガネーシャに祈るんだ。
アイシャ:車は分からないけど、家を新しく建てたときは、自分で聖典「コーラン」の言葉を唱えて、アッラー(神)の祝福を求めることならある。文字の読めない人や知識のない人は、イマーム(イスラム教の専門家)に言葉を選んで唱えてもらう。
◯日本の特徴
ディパク:日本はかわいいモノがたくさんあって、ユニークな国だね。浜松駅を出ると、すぐに『家康くん』が出迎えてくれたのは印象的だった。バングラデシュにいた時から、「招き猫」は知っていた。でも、それ以外にも、日本にはいろんなラッキーアイテムがあって興味深い。
アイシャ:私も招き猫はかわいくて好き。でも、イスラム教で信じていいのはアッラーだけ。だから、「ラッキーアイテム」という考え方は良くないし、招き猫みたいに特別な意味を持つ像を置くことは禁止されてるの。
◯祭りについて
ディパク:バングラデシュ人にとって大事なイベントは、信じる宗教によって違う。イスラム教徒ならイード、ヒンドゥー教徒ならドゥルガーフェスティバル、キリスト教徒ならクリスマスと、それぞれの宗教ごとに祭りがあって、信者たちはそれを大切にしている。
アイシャ:宗教を抜きにすると、2月のバレンタインデーのころに行われる「ポヘラ・ファルグン(Pohela Falgun)」かしらね。これは春の到来を祝うイベントで、宗教に関係なく、すべてのバングラデシュ国民が参加できるの。
◯日本で大変なこと
アイシャ:日本の生活で気をつけないといけないのは、日本ではイスラム教の影響がほとんどないから、うっかりタブーを破らないようにすること。たとえば、スーパーで買い物をしたり、日本人から何か食べ物をもらったりするときは、その中にイスラム教で禁止されている豚肉やアルコールが含まれていないか確認しないといけない。これが地味に面倒くさいの。
ディパク:わかる! 僕も牛肉と豚肉を食べられないから、知らない食べ物を食べる前に、それを事前にチェックしないといけない。でも、数が少ないから、イスラム教徒ほど大変じゃない。日本人が好意で食べ物をくれて、それを断らないといけないときは心が痛む。
コメント
コメント一覧 (1件)
> アイシャ:バングラデシュと比べると、日本は何でも慎重すぎると思う。手続きが多くて、「これって本当に必要?」と思うことがよくあるし。日本の社会には「過保護」な部分があるんじゃないかな。
> その中にイスラム教で禁止されている豚肉やアルコールが含まれていないか確認しないといけない。これが地味に面倒くさいの。
その社会で何が「過保護」であり、何が「保護されていないので、いちいち自分で確認しないといけない」かは、その国民・民族によって違うのですよ。日本人にとっては(イスラム教の)食のタブーよりも、薬禍に対する安全確保の方がはるかに上です。
まあ現代日本人的な感覚で言うと、宗教的・民族的なタブーにあまりこだわるのは、率直に言って時間の無駄としか思えないですけどね。でもそれが大事なのであれば、そうすればいいと思います。