友人に、日本が好きなベトナム系アメリカ人の女性(30代)がいる。彼女はニューヨーク州の大学を卒業した後、日本で小中学校の英語の先生をして、今はアメリカのジョージア州で働いている。最近、彼女と話したので、これからその内容の要点を短く書いていこう。
・そうなんだ、いま日本では、田んぼに水を入れはじめる時期なんだ。なつかしいな。日本にいた時、毎朝バスで学校に行く途中に、田んぼを見るのがちょっとした楽しみだった。田んぼに水が張って、稲が少しずつ大きくなっていって、収穫されるとまた土に戻る。今のアメリカの生活では、そんなふうに季節の移り変わりを感じることはできないから。
・「ゾーニング」って聞いたことある? アメリカの都市設計では、土地を使用目的によって区画する「ゾーニング」という考え方がよく使われているの。私が住んでいる地域では、住宅地と農地がはっきり分かれていて、日常生活の中で田んぼや畑を見かけることはない。まぁ、ジョージア州でお米を作っているかは分からないけどね。
・6月の楽しみはホタルを見ること。でも、これは私の個人的な楽しみで、アメリカ人は一般的に虫を好きじゃない。日本ではホタル観賞が人気で、文化のひとつになっているけど、私には「ホタル観賞」を表す英語が思い浮かばない。ホタル観賞がアメリカの文化になることはないだろうなあ。
そういえば、日本語の勉強をしていて、同音異義語で悩んだのを思い出した。たとえば、鑑賞と観賞の違いって、外国人にはすごくむずかしいの。
※鑑賞と観賞では対象とするものが違う。主に絵画や音楽、演劇などの芸術作品が対象なら「鑑賞」を使い、自然の風景や動植物などが対象なら「観賞」を使う。
・ほら、私の見た目って、黒い目と髪をもつ完全なベトナム人でしょ。だから日本にいた時、「アメリカ人」って自己紹介したら、驚く日本人もいた。でも、それは仕方ないよね。もしベトナムで日系アメリカ人が「私はアメリカ人です」って言ったら、ベトナム人もきっと同じ反応をするだろうし。
・私はアメリカにいても、ベトナムの正月にはベトナム料理を作ってアイデンティティを大切にしている。料理の材料? それなら、韓国系の人が経営している食料品店で買える。アメリカ社会では、いろんな移民が自分の強みや特徴を活かしているから、それがとてもいいのよ。
※アメリカにある韓国系のスーパーマーケットチェーン店では「Hマート」が有名。店名は「ひとかかえ(の食料品)」を意味する韓国語の「ハナルム」に由来する。
※日本には衣替えの文化がある。もともとは平安時代の宮中行事で、夏服と冬服を着替えることを「更衣(こうい)」と呼んでいた。江戸時代、幕府は年4回の衣替えを制度化した。明治時代に政府が6月1日〜9月30日までを夏服、10月1日〜翌年5月31日までを冬服と定め、それが一般化して、現代の衣替えとなった。
・アメリカにも四季の移り変わりはあるけれど、衣替えという「文化」はなくて、もしするなら個人的にやる感じかな。アメリカの家は、日本の家と違って基本的に広いの。押入れじゃなくて、歩いて入れる「ウォークインクローゼット(walk-in closet)」って部屋があって、そこに一年中着る服がそろってるから、日本みたいに服を入れ替えることは普通はない。
・今、衣替えについてネットで調べたら、面白い感想を見つけた。その人は日本に住んでいたアメリカ人で、みんな同じ時期に服が変わるから、「全体主義みたい」って感じたんだって。これは極端な気がするけどね。
でも、私も学校でラジオ体操を見たときにそう思った。100人以上の子供たちが1人の先生の動きを真似していて、その統一感がちょっと「全体主義っぽいな」と思ったことがある。
※1941年日本軍が真珠湾を攻撃し、太平洋戦争がはじまった。アメリカでは、あの攻撃を「sneak attack(だまし討ち)」と考えて、今でも憎んでいると聞いた。
・そうなの? もちろん真珠湾攻撃は知っているけど、それが「だまし討ち」だってことは知らなかった。私はアメリカの学校で歴史を学んだことがないから、その辺の話はよく分からない。でも、アメリカの一般の人たちは、そんな80年以上前の出来事に興味はない。
私はこの国に15年ほど住んでいるけど、真珠湾攻撃の話を聞いたのは1、2回しかない。夫の祖父がその時ハワイにいたから、夫がおじいちゃんの話を聞いていて、私も夫からその話を聞いた。その時は「sneak attack」だなんて言っていなかった。
今のアメリカ人に聞いたら、遠い昔の日本軍よりも、トランプ大統領や中国のことを嫌っている人のほうが多いと思う。
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