欧米人やアジア人など、さまざまな国の外国人をどこかに連れて行くなら、ハイキングは「ハズレ」の少ない選択肢だ。ゴルゴ13の狙撃成功率(99%以上)ほどではないが、自然を楽しむ気持ちに宗教や民族は関係ない。
今回は、ドイツ人、リトアニア人、カナダ人、台湾人、インド人、バングラデシュ人を愛知県新城市の「乳岩峡」へ連れて行ったところ、かなり好評だった。
それでは、これから彼らから聞いた話を紹介しよう。
◯日本で気に入ったもの
ドイツ人とカナダ人は偶然、サントリーの「伊右衛門 ゆず茶」を持ってきていたので、それを選んだ理由を聞いてみた。
ドイツ人:「ゆず茶は日本で初めて知って気に入りました。ゆずはレモンともライムとも違って、独特の味がありますね。暑い時期に、さわやかなゆず茶はちょうどいいです。」
カナダ人:「私はカナダにいたころからゆずを知っていました。でも、カナダではゆずは誰もが知っているフルーツというわけではなく、一部でファンがいる感じです。」
※ゆずは海外でもそのまま日本語が使われていて、英語版ウィキペディアには「Yuzu」という項目がある。2022年には、アメリカのスーパー大手「Whole Foods Market(ホールフーズマーケット)」が発表した食品の10大トレンドにゆずが挙げられていた。海外でじわじわ人気が出てきているかもしれない。
◯日本での食事
ーー日本で食べたいものって何かある?
インド人:「あります。スッポンです。」
ーーは? その答えは初めて聞いた。なぜスッポン?
インド人:「私の出身地、西ベンガル州では亀を食べる人がいまて、子供のころ、市場で亀が売られているのを見たことがあります。きっと違法ですけどね。
ーー違法なのに、堂々と売られているのがまさにインド!
そのとき、母親に「食べてみたい」と言ったら、亀のさばき方がわからないと言われて却下されました。それ以来、亀の味が気になっていたんですよ。日本にはスッポンを食べる文化があると聞いたので、いつか挑戦してみたいです。」
バングラデシュ人:「亀はないわぁ…。私が食べてみたいのはラーメンです。イスラム教徒なので、宗教的に問題をクリアしたラーメンを食べてみたいですね。」
そういえば最近、あるラーメン屋で客がラーメンにウジ虫が入っているのを見つけて、それが全国ニュースになりました。私はそれを知って、『さすが日本だな』と感心しました。」
ーーちょっと何言っているか分からない。
バングラデシュ人:「私たちの国だったら、そのぐらいのことはニュースになったりしません。日本でそれが大騒ぎになるというのは、日本人が高い衛生基準を持っている証拠です。」
◯日本語のむずかしさ
カナダ人:「今日は太陽がまぶしいな」
ドイツ人:「『まぶしい』って何?」
カナダ人:「英語で言うなら『ブライト(bright)』? それとも『スパークリング(sparkling)』かな? 日本人に聞いてみよう。」
ーーどっちにも「輝く」って意味があるけど、水面に反射する光なら「スパークリング」、太陽の光なら「ブライト」が正解。ところで、外国人に聞くと、日本語のオノマトペ(擬音語や擬態語)に苦しむ人が多い。オノマトペを使うなら、スパークリングは「キラキラ」、太陽の光は「ギラギラ」だね。
カナダ&ドイツ人「さっぱりわかりません。」
ーー最上級の光を「ギンギラギン」と言うけど、まあ、これは覚えなくていいか。
台湾人:「ほかの外国人に比べたら、私は漢字で苦労しません。それで、日本語を学んでいるウクライナ人から「チート」と言われました。でも、日本の漢字には読み方がいくつもあるので、それを覚えるのが難しいです。」
ーー日本人だって、分からないときもある。たとえば、「木幡さん」の読み方には「こはた」、「こわた」、「こばた」、「きばた」、「きはた」と5種類もある。漢字を見ただけで、正しい読み方が分かるチート能力は日本人にもないし、ひたすら覚えるしかない。
◯日本とインドの治安
インド人:「あれ? ここではネットがつながらない。日本のスマホは衛星と直接通信できないんですか?」
ーーそれは知らない。インドではできるの? さすがIT先進国! コロナ患者の報告をファックスでする国とは違うね。」
インド人:「いえ、インドではできません。以前、ムンバイでテロ事件があったとき、テロリストたちが衛星電話を使っていたので、インド政府は衛星と直接接続するのを禁止したんです。」
※2008年にムンバイのホテルや鉄道駅で同時多発テロが発生し、約250人が犠牲になった。
ーーなるほど。その理由は想像できなかった。
「でしょうね。日本はそんな危険性がほとんどない国ですから。日本とインドの大きな違いは治安で、私が日本を好きな大きな理由もそれなんです。」
ーー昭和の時代、「日本は水と安全はタダ」と言われていた。この言葉は令和の今でも有効だったか。
◯その他
・インド人から見て、日本が魅力的なのはインフラが整備されていること。日本では、田舎でも広くて走りやすい道があるけれど、彼の親戚が住んでいるインドの田舎では、雨が降ると道路が泥沼になって、通行できなくなるらしい。
・リトアニア人とドイツ人はホタルを観賞したり、カブトムシを飼育する習慣を知らなかった。でも、台湾ならどっちもあるというから、日本人と台湾人はきっと虫を楽しむ感覚が似ている。
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