「日本人とチップ」について、外国人はどう考えている?

明治時代に日本を旅行したイギリス人女性、イザベラ・バードが書いた旅行記にこんな話がある。
彼女が日本人のお世話係(馬子)と移動中、荷物がなくなっていることに気づいた。それを知った馬子は、すでに周りが暗くなっていたにもかかわらず、一里も戻って荷物を探してくれた。バードは感謝の気持ちを伝えようと小銭を渡そうとしたが、彼は「旅の終りまで無事届けるのが当然の責任だ」と言って、お金をどうしても受け取ろうとしなかった。

「最初に約束した以上のお金は受け取らない」という精神は、現代の日本人にも受け継がれている。しかし、それが美徳になるかどうかは、文化や価値観によって違っていて、小銭を拒否されると、感謝の気持ちまで拒絶されたように感じる人もいるだろう。
アメリカの社会は日本と違って、レストランやタクシーを利用したら、料金の15~20%をチップとして渡すことが常識になっている。もし客がチップを渡さないと、それは「店に不満がある」という意思表示と受け取られることもある。
こうした文化の違いがぶつかると、面倒なことになる場合もある。

以前、日本に住んでいたアメリカ人からこんな話を聞いた。
あるとき、アメリカから両親が日本にやって来て、彼は2人を日本のチェーンレストランに連れて行った。食事を終え、レジでお金を払おうとすると、父親が財布から千円札を取り出して、チップとして渡したいと言い出す。
「店員に聞いたら、それは困るってよ」と伝えると、父は「そんなはずはない。お金をもらって困る人間がいるわけない」と言ってどうしても渡したがる。彼は「それはむしろ、日本ではマナー違反になる。『ありがとう』と言うだけで十分だ」と重ねて言って、親を説得した。
お金を払って店を出るだけだったのに、日米の文化の板ばさみになって彼は疲れてしまった。

 

チップの文化で言うと、オーストラリアは日本とアメリカの間にある。
以前、日本への旅行を考えていたあるオーストラリア人が、SNSにこんな投稿をしていた。

「I am coming from Australia, where tipping is not commonplace or expected, however is appreciated when given after a restaurant meal, or for good service, for example.」

「オーストラリアではチップは一般的ではなく、期待もされていない。でも、レストランで食事を終えた後や良いサービスを受けた場合には、チップを渡すと喜ばれる。

彼(彼女)は日本では適切で礼儀正しく行動しようと考えていて、場合によってはチップを渡したいと思っていた。でも、ネットで日本にはチップの習慣がないと知り、日本の事情をよく知っている人に、チップを渡すのは一切ダメなのか、それとも状況によってはOKなのか、はっきりした基準を知りたかったという。

その質問を見て、日本を知る外国人が以下のようにコメントした。

・日本にはチップの習慣がないので、渡す必要はありません。

・たとえ良いサービスだと思っても、チップは渡さないでください。日本人はきっと戸惑いますから。

・私は日本に20年以上住んでいます。日本でチップの習慣はないと言っていいでしょう。暑い夏の日、ある日本人が一日中働いてくれた庭師に「ビール代」としてチップを渡したことを知っています。でも、それは旅行者には関係ない話です。

・一部の外国人観光客が日本にチップの文化を持ち込もうとしていますが、日本人はそれを望んでいないので、するべきではありません。

・旅館という伝統的なホテルに泊まると、「中居」と呼ばれる女性が部屋まで案内してくれることがあります。その時に、チップを渡すことはできるかもしれません。また、タクシーに乗った時、お釣りをチップとして渡すことができるそうです。

・日本人は結婚式に参加する時にお金を渡します。これはチップの考え方に近いと思います。

・日本を旅行中、旅館の従業員のサービスがとても良かったので、私がチップを渡そうとすると、彼はお礼を言って受け取ってくれました。しかし、チェックアウトの時、「チップのお礼です」と言って小さな贈り物をくれました。正直言うと、私はそれを受け取りたくありませんでした。感謝の気持ちを台無しにされた気がしたからです。

・日本の人たちはお金を渡されると、精神的な負担を感じることがあります。もし感謝の気持ちを伝えたいなら、あなたの国のペンやピンバッジ、石鹸など、小さな贈り物をすることをおすすめします。

・最近、日本から戻ってきました。旅行前にオーストラリアのソペス(軽食)やマカダミアクッキーを小さな袋に入れたものをいくつか用意しました。ガイドやホテルの受付スタッフ、清掃員に渡したら、みんな本当に喜んでくれました。手間をかけた価値がありました。

・チップを快く受け取ってくれたのは、ゴールデン街のバーテンダーさんだけ!

・私たちは1ヶ月ほど日本に滞在しましたが、チップは一切渡しませんでした。その代わり、イギリスから持ってきたペンやピンバッジなどを渡すと、みんな「ありがとう」と言って受け取ってくれました。私にとって、良い経験でした。

・チップを払うことを当然と思っている人には、レストランの伝票に書かれている金額と、最終的に支払う金額が一致していることに慣れるのは難しいかもしれません。おかしな発想だとは思いますが。

・「良いサービスのためにチップは必要だ」と断言する人たちは日本へ来てみろ! 素晴らしいサービスや笑顔に、チップは不要だとわかるはずだ。チップなんて、小売店のオーナーが従業員にわずかな給料しか払わなくて済むための口実に過ぎない。

 

 

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この記事を書いた人

今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。
また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。

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