安全確保がまさかの結果に マリー・アントワネットの致命的ミス

困ったことが起きて、状況を改善しようと行動したら、かえって事態が悪化してもっと困ってしまった。
イギリスに植民地支配されていたインドで、そんなまさかの出来事があった。
インド総督府は、猛毒を持つコブラを減らすため、コブラの死骸を持ってきた人に報酬を与えると宣伝した。すると、人々はコブラを飼育して個体を増やし、それを殺して当局から報酬を得るようになり、結果的にコブラは増えてしまった。

【コブラ効果】日本・インド・アメリカなどであった事例

総督府のイギリス人は民衆の気持ちを理解していなかったのだ。
民衆の気持ちを1ミリも理解していなかった歴史上の有名人といえば、フランス革命で処刑された悲劇の王妃、マリー・アントワネットがいる。
フランス革命が起きる前、彼女は飢饉で民衆には食べる物が無くなったと聞いて、「パンがなければケーキを食べればいいじゃない」と言い放った。…そう伝えられていたが、最近では、実は彼女はこのセリフを言っていなかったという説が有力だ。
でも、オーストリアの宮殿で生まれ、「蝶よ花よ」と大切に育てられたマリー・アントワネットに、下々の人々の気持ちがわかるわけがない。
それで彼女は致命的なミスをしてしてしまった。

 

優雅にハープを奏でるマリー・アントワネット。
このとき暗黒の未来はすぐそこまで迫っていた。

 

1789年にフランス革命がはじまると、フランスにいた貴族たちは周辺国へ逃げ出し、同じ貴族たちに革命の恐ろしさを訴えた。その影響もあってフランス革命政府と周辺国が対立し、1972年にフランス革命戦争がぼっ発。

その最中、命の危険を感じておびえていたマリー・アントワネットは、どうやって身の安全を確保するかを考えていた。彼女の出した答えは、「民衆を震え上がらせること」だった。
アントワネットは革命政府と戦っていた同盟軍の司令官、ブラウンシュヴァイク公爵へ、フランス国王一家の安全を保証する宣言を出してもらうことを懇願した。

ブラウンシュヴァイクはそれを受け入れ、1972年7月25日、彼はパリの市民に向けて、もしフランス国王とその家族に侮辱や危害が加えられたら、同盟軍はパリへの全面攻撃を開始し、街を焼き払うだろう、という内容の宣言を発表した。
マリー・アントワネットは「これで民衆は恐怖に震え、私たちに手出しができなくなるだろう」と思い、何なら「身の程をわきまえなさい、下賤な人間どもめ」とまで思ったかもしれない。

しかし、ブラウンシュヴァイク宣言は世界史に残る逆効果となった。
民衆を威嚇(いかく)して服従させるどころか、むしろ民衆を激怒させ、連合軍に対する恐怖と怒りを引き起こしてしまったのだ。

the Brunswick Manifesto, rather than intimidate the populace into submission, sent it into furious action and created fear and anger towards the Allies.

Brunswick Manifesto

ブラウンシュヴァイクの宣言が書かれた紙で、お尻を拭いたり、タバコに火をつけたりする人たち。

 

「敵の司令官がフランス国王を保護しようとしている。つまり、王はわれわれの敵だ。祖国フランスのために、王政を打倒するしかない」

パリの民衆の間でこんな認識が広まり、各地で王政廃止に賛成する署名活動がおこなわれた。宣言からおよそ2週間後、パリの民衆と軍隊がテュイルリー宮殿に押し寄せ、ルイ16世とマリー・アントワネットを捕らえ、タンプル塔に幽閉した。
ブラウンシュヴァイクの宣言は、結果的にフランス王制の破滅を招いた「8月10日事件」の引き金となる。
ブラウンシュヴァイクもヴァルミーの戦いで敗北し、司令官から降格された。

1793年10月16日、マリー・アントワネットは断頭台にのせられ、ギロチンで首をはねられた。彼女は本当に民衆の心を理解していなかった。
「命を守るための行動」として、ブラウンシュヴァイク宣言出してもらった翌年に、彼女は処刑された。全体の流れを考えると、あの宣言は壮大な死亡フラグだ。

 

 

【大政奉還】ヨーロッパ人を驚がくさせた日本的革命

【テロの由来】自由・平等のフランス革命ではじまる恐怖政治

【レストランの始まり】フランス革命が外食文化を生んだワケ

【ゲリラ戦】ナポレオン破滅の一因となった“スペインの潰瘍”

【地球は一つ】日本の天明大噴火、フランス革命の一因になる

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。
また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。

コメント

コメントする

目次