室町時代、村田珠光（じゅこう）が「わび茶」をはじめ、戦国時代の末期、千利休がそれを完成させて、彼は「茶聖」と呼ばれるようになった。このわび道が現代の茶道のルーツとなっている。
明治時代、岡倉天心がアメリカで『茶の本（The Book of Tea）』を出版し、茶道を広く紹介した。それだけではなく、彼は茶道を通して、日本人の美意識や思想、文化などを「Teaism（ティーイズム）」という言葉で表現し、日本の世界観も伝えた。
『茶の本』から１００年以上が過ぎた今、アメリカで茶道はどんな位置づけをされているのか？
「Good Life Tea」というサイトによると、アメリカ人は抹茶に夢中になっていて、その独特な風味と健康への効果を高く評価しているらしい。
Today, Americans are mostly obsessed with drinking matcha; appreciating it for its solitary flavor and the innumerable health benefits.
知人のアメリカ人女性は、日本の小中学校で英語を教えた経験があり、今はジョージア州に住んでいる。最近、彼女と話をしたので、その内容をこれから紹介しよう。
ちなみに彼女はベトナム系アメリカ人で、ここでは「グエン」と呼ぶことにする。
ーー今週、外国人を茶道体験に連れて行く予定なんだけど、グエンはアメリカで大学生だった時、茶道サークルで茶道を学んでいたよね？
正解、記憶力が腐っていなくて安心した。京都でホームステイしていた家で、はじめて茶道を体験して、それが気に入ったから、アメリカに帰ってからも続けることにしたの。
ーーグエンにとって茶道の魅力とは？
それはね〜、お茶を点てると、他のことを考える余裕がなくなるくらい集中して、精神統一ができることかな。それに、お茶を飲みながら話をするのも好き。茶道をすると、心が落ち着いてリフレッシュできるのよ。
ーーなるほど。アメリカでも、心を落ち着かせることを大切にする人は多いよね。茶道をする人はわりと多かったりする？
それはないかな。茶道を知っているのは、日本に興味がある一部の人だけで、一般的には知られていないと思う。アトランタ市内で弓道の看板はあったけど、茶道の看板は見たことない。心を落ち着かせることが目的なら、ヨガをはじめる人が多いと思う。
でも、ちょっと待って、今ネットで調べたら、アトランタにも茶道ができる場所があった！
ーーそうなんだ。（「現在、アメリカ人は抹茶に夢中」って何のこと？）
ーー他に茶道の魅力は何かある？
茶道では、平等と謙虚さが特に大切にされていて、一つ一つの動作に意味が込められているんだって。それを理解することで、日本人の考え方を学べることも良かった。
ーー具体的には？
たとえば、お茶碗を受け取るとき、それを回すでしょ？ あれは、ホストが一番良い部分を向けてくれるから、ゲストはあえてそれを避けることで平等と謙虚さを示している。
もちろん、アメリカ人も平等や謙虚さを大切にしているけど、表現の仕方はまったく違う。茶道をしていて、日本人らしい考え方が表れているって何度も感じた。
ーーそれが「Teaism」か。アメリカ人なら「サンキュー」と言って、一番良い部分を自分に向けたまま飲む気がする。
意味を知らなかったら、せっかくキレイな部分を向けたのに、それを避けられたら「失礼だな」って感じるでしょうね。作法の意味を知ると、日本人の精神がわかってくる。
でも、裏千家や表千家など、いろんな流派があって、それぞれにやり方があると知って、「茶道って奥が深すぎない？」って思ったのはたしかね。
ーー今でも茶道をする機会はある？
家に簡単な道具はあるし、韓国系アメリカ人が経営しているスーパーではアジアの食料品が充実しているから、そこで抹茶の粉を買うことができる。それで、何度か友だちに抹茶を点てたことがあるけど、ダメだったの。
ーー抹茶が苦すぎて、友だちには不評だった？
そうじゃなくて、「茶道は雰囲気が大事で、和室でないと良さが味わえない」ということに気づかされた。道具だけがそれっぽくても、ソファに座って足を組んでお茶を飲むのは、茶道とは言えないよね。やっぱり茶室でないと、茶道の魅力は引き出されないのよ。
ーーそれは邪道かな。
最近、アメリカで人気のある日本文化は何かある？
最近は、和太鼓の人気が有名になっている気がする。ジョージア州で何かの祭りで和太鼓の演奏を見たし、ネットでも何回か見かけた。茶道や弓道よりも、和太鼓の方が動きがダイナミックで分かりやすいから、アメリカ人に合っているんだと思う。
※調べてみると、２００５〜２００６年にはアメリカに約２００の和太鼓グループがあった。アカデミー賞やグラミー賞、シルク・ドゥ・ソレイユのラスベガスのショーなどでも和太鼓の演奏が披露されたことがあって、アメリカでの和太鼓の人気と知名度は上昇中らしい（Taiko）。
昨年、このビッグウェーブに乗ったて、「太鼓の達人」がアメリカに進出した。
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