あと1週間後にあの日、80年前、広島に人類史レベルの悲劇がおきた日がやってくる。
毎年8月6日、広島市では原子爆弾が投下された午前8時15分に、1分間の黙祷がおこなわれる。これは広島県民にとってとても重要で、県外に引っ越しても、8月6日午前8時15分になると、自発的に黙祷をささげる人もいる。
一方、これを「した側」はどう思っているのか?
アメリカでは広島・長崎へ原爆を投下にした理由について、「第二次世界大戦を終わらせるために必要な決断だった」と正当化することが一般的だ。
しかし、そんな公式見解がゆらいでいる。
最近、アメリカでおこなわれた世論調査では、原爆投下を「正当化できる」と答えた人が35%、「できない」と答えた人が31%で、ほぼ拮抗していることがわかった。10年前の調査では「正当化できる」が56%だったので、原爆投下を支持する人は確実に減っている。若い世代ほど、この傾向が強いという。
この結果を知って、日本のネット民はこう思った。
・ピカチュウの影響
・正当化するといずれ地球が崩壊するって理解するだろ
・原爆が無かったらどんな終わり方してたんだろ
・ロシアが戦争終わらせるためならウクライナに原爆落とすしかないって言ってるのと一緒
・進撃の巨人見せればいいよ。沢山の正義があって答えがない。
「戦争を早く終わらせて、できるだけ犠牲者を出さないため」ということが目的だったら、原子爆弾を人のいない場所に落としてその威力を示したうえで、日本に降伏を迫ってもよかった。アメリカには「落としたい理由」があったのだろう。

戦後、海底にいた怪獣が水爆実験をきっかけに東京に上陸し、街を破壊しまくって人間と戦う映画『ゴジラ』が上映された。
「ゴジラ」という名前はゴリラとクジラを合わせて作られた単純なネーミングだが、この怪獣が世界に与えたインパクトは大きかった。2014年にハリウッド映画『Godzilla』が公開されると、アメリカで初日の興行成績がその年の最高記録を塗り替える大ヒットとなる。
日米で『Godzilla』の評価は高かったが、イギリスの新聞『ガーディアン』は「日本のゴジラに込められていた反核の風刺が、この映画では滑稽なほど弱まっている」と批判した。
その背景は沖縄タイムスの記事を読めばわかる。(2023年01月21日)
【独自】米「ゴジラ」原爆批判のせりふ削除 国防総省の抗議で 2014年映画
アメリカの海軍と陸軍の協力を得られたことで、この映画は製作され、臨場感あふれるシーンに世界が興奮した。しかし、米軍は無条件で協力したわけではなく、制作過程であるシーンを知って強く反発した。
『Godzilla』の脚本には原爆投下の場面があり、アメリカ国防総省は、
「もしこれが広島と長崎に原爆を投下した決定への謝罪や疑問視を意味するなら、そこで終わりだ」
と製作陣を脅したという。
作品には当初、米海軍の司令官が核兵器を使ってゴジラを仕留めようとし、渡辺謙さん演じる科学者がそれを止めるために父の被爆体験を語るシーンがあった。
広島に原子爆弾が投下された直後、男性が目覚めると黒焦げの死体に囲まれていたーー。
男性の息子である科学者がそのことを語るシーンに、国防総省が「完全に不必要で不当だ」と激怒したため、このシーンはカットされてしまった。
実際の映画では、午前8時15分で針が止まった父の腕時計を米軍司令官に見せるシーンだけが公開されている。
原子投下を批判的に描くこととは反対に、国防総省は主人公の米軍兵を「好人物」に見せようとしたり、兵士の死者を減らしたりすることを求め、全体的に米軍を「美化」しようとした。
そもそもこの映画は「ゴジラ vs 米軍」という設定で、戦闘機や空母などを使った撮影ができなくなったら成り立たない。米軍の協力は必須だったため、製作側はすべての要求を受け入れるしかなかったという。

映画『ゴジラ』にあった反核兵器のメッセージが削られたのだから、「日本のゴジラに込められていた反核の風刺が、この映画では滑稽なほど弱まっている」という批判が出るのも当然だ。
米国防総省としては、アメリカの名誉を守るために削除要求をしたのだろうが、国民の意識は違う方向、原爆投下を正当化しない方向に傾いている。これも別の形でアメリカの名誉を守ることになる。

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