「カミカゼドローン」 日本人から離れ、世界語となった言葉

前回、カンボジアとタイの国境紛争についての記事を書いていたとき、海外メディアの記事で「Kamikaze Drone」という単語を何度も見かけた。タイ軍がカンボジアへの攻撃で自爆型ドローンを使ったという内容だ。
無人機を遠隔操作するという発想は昔からあった。現代のドローンの始まりはイギリス空軍が1930年代に開発した「クイーンビー」とされる。この「女王バチ」に対応する形で、小型の無人航空機が「ドローン(雄バチ)」と名付けられたという。

「Kamikaze」という言葉は第二次世界大戦の末期、日本軍の神風特攻隊が行った自爆攻撃に由来する。
爆弾をかかえて米艦船に突っ込み、自らの命を犠牲にして敵に大きなダメージを与えるーー。
当時の日本軍は兵士の命を粗末に考えていたから、そんな戦法は常識的だった、ということは決してない。日本軍にとってもこんな発想は非常識で、「特攻隊の生みの親」ともいわれる大西瀧治郎でも「作戦の外道」と表現したほどだった。

神風特攻隊が欧米人に与えた衝撃はすさまじく、この言葉は戦後も別の場面で使われるようになった。
現代の戦争において「Kamikaze」という用語は、攻撃目標を攻撃する際にそれ自体も破壊される攻撃車両(通常は無人)を指す表現として使われている。その一つに「神風ドローン」がある。

The term is used generically in modern warfare for an attacking vehicle, often unmanned, which is itself destroyed when attacking a target; for example, a kamikaze drone.

Kamikaze

 

爆薬を積んだ無人機が何時間も上空をうろつき(飛行し)、ターゲットを見つけたらそれに突っ込んで自爆攻撃を行う兵器を「徘徊型兵器」という。自爆ドローンはその代表例で、海外では一般的に「Kamikaze Drone(神風ドローン)」と呼ばれている。
先日、タイの領内に墜落したミャンマー軍のドローンも、海外メディアは「Kamikaze Drone」と表現していた。

「神風」のこういう使い方は、日本人の心情からすると受け入れにくい。
23歳で散った特攻隊員・穴澤利夫が婚約者の女性にあてた最後の手紙には、こんな言葉が書かれている。

「あなたの幸せを希ふ(ねがう)以外に何物もない」
「あなたは,今後の一時(いっとき)一時(いっとき)の現実の中に生きるのだ。穴澤は現実の世界には,もう存在しない」
「今後は明るく朗(ほが)らかに。自分も負けずに,朗(ほが)らかに笑って征(ゆ)く」

知覧特攻平和会館:資料名:遺書・手紙類 (恋人へ)

 

こういう思いにふれると、自爆ドローンに「神風」と名付ける発想は出てこない。しかし、最近の世界では、「Kamikaze」とローマ字になって日本人から離れて、新兵器とセットになって定着してしまっている。

ちなみに、「特攻」を発案した人物は、桜花の専門部隊である「神雷部隊」を率いた岡村基春とされる。特攻隊に志願する人はとても多く、ミツバチは相手を刺したら自分も死ぬことから、岡村は彼らを「蜂の大群」と呼んだ。

 

 

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この記事を書いた人

今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。
また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。

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