なんだかんだ言っても、日本人は韓国に対抗心を持っているから、スポーツの試合で韓国が相手だと燃える。マスコミも高視聴率が期待できるから、「運命の日韓戦」や「宿命のライバル」とその心に火をつける。
でも、対抗心の強さでは日本の完敗だ。「日本にはジャンケンでも負けられない」というフレーズがあるほど、日本人は韓国戦に熱くなれない。
「必ず日本を倒す!」という韓国の人たちの強い思いは、むしろ「闘争心」や「敵対心」と言った方が適切だ。とはいえ、最近はその気持ちも変わりつつあるようだ。韓国でそんな変化を感じさせる出来事があった。
今月、韓国で女子バレーボールの国際大会が開催され、その中で運命の日韓戦がおこなわれた。両チームの力はほぼ互角で、試合は一進一退の攻防を繰り広げた結果、韓国が3−2で勝利を収めた。しかし、試合の後、韓国のファンは激怒した。その理由は、試合中に「疑惑」ではなく、明らかな誤審がいくつもあったからだ。
審判と副審を務めたのは韓国人で、韓国に有利な判定が続いた。特に第5セット、11-10で試合を決定づける場面では、韓国のサーブがライン外に落ちたのに、審判は「イン」と判断。ありえないジャッジに日本の選手やコーチが抗議したが、ビデオ判定はなく、判定は変わらなかった。
試合は韓国の勝利に終わったが、韓国のネットでは「誤審だらけで公平性に欠けた試合だった」と批判が巻き起こる。この大会は韓国がホスト国となって世界のチームを招待して開かれたため、それが炎上を激化させた。
ネット上から、韓国の人たちの声を拾ってみた。
심판들은 배구를 모욕했고 한국팀 일본팀 모두를 모욕했다. 당장 징계가 내려져야 한다.
(審判たちはバレーボールを侮辱し、韓国チームと日本チームをも侮辱しました。すぐに懲戒処分が下されるべきです。)
한국인으로써 편파판정으로 인해 정말 부끄럽게 생각합니다.일본이 이긴경기입니다.스포츠정신에 어긋나는 경기였습니다.한국심판에 대해 엄중한 처벌을 원하고 일본팬들게 정말 죄송합니다.
(韓国人として、偏った判定を本当に恥ずかしく思います。日本が勝った試合で、スポーツ精神に反する試合でした。韓国の審判には厳正な処分を求めます。日本のバレーボールファンには本当に申し訳ない気持ちです。)
※以下は日本語訳のみ。
・審判が何度も誤審をして、試合を見ていてつらくなった。
・これが親善試合ですか? 審判のせいで試合は台無しになり、韓国バレーをさらに恥ずかしくさせた。
・初めて日本チームに申し訳ないと思った。
・もう世界のどのチームも、韓国で開かれる大会には参加したくないでしょう。
・日本は今後、韓国が主催する大会に来てはいけません。
・こんな馬鹿げた審判は追放するべき。国際的な恥だ。
ザッと見たところ、審判を擁護したり、韓国チームを支持する人はほとんどいなかった。韓日戦で韓国が勝ったのに、ここまで一方的に非難されるのを見たのは、これが初めてかもしれない。
「情状酌量」をすれば、韓国の女子バレーボールはこれまで約4年間、日本に一度も勝てず、先月千葉で行われた日韓戦でも0−3でストレート負けをしていた。
そして、今回の韓日戦がおこなわれたのは「光復節」の翌日だ。
1945年8月15日、日本はアメリカに降伏し、韓国は日本の統治から解放された。現代の韓国でこの日は「光復節」という祝日になっている。この前後は1年の中で、「反日感情」が特に高まる時期だ。
そんな背景があったため、審判たちは何とかして韓国を勝たせたいという気持ちが強くなり、それ以外のことが意識に入らなかったと愚考する。
試合後、日本でも批判や不満が噴出したが、韓国側の反応を知ってすぐに鎮火した。
この件は炎上だけでは終わらず、驚いたことに、政府が動いた。
国民の怒りを受けて、韓国の文化体育観光部(日本でいう文部科学省)が「スポーツ倫理センター」に、試合について調査させることを決めた。
中央日報の記事(2025.08.20)
これまでスポーツ選手の人権侵害や機関の不正などが主要調査対象だったが、特定の試合での審判の判定をめぐり事件が受理されたのは異例なことだ。
バレーボール韓日戦「不公正判定」議論、韓国スポーツ倫理センターが調査に着手
この調査結果によっては、今回の審判たちは懲戒処分を受ける可能性がある。彼らはこんな未来をまったく想像してなかっただろうし、きっと今ごろ震えて寝ている。
今までになかったような事態に発展したのは、「日本にはジャンケンでも負けられない」という闘争心が薄れ、スポーツの公平性を重視する価値観が強くなってきたからだろう。特に若い人たちの間で、そんな意識が高まっているはずだ。
知人の韓国人と話していたとき、最近の韓国では「知的財産権」を尊重する意識が高まっていて、30歳以下と50歳以上では、その意識に大きな差があると聞いた。傾向として、若い世代は公正さを重視するが、年配の世代は結果を優先し、多少のズルを見逃すことがある。世代間で、「不正」を嫌う気持ちの強さに大きな差があるという。
上記のコメントを見ていて、これを書いたのは若い世代が多いという印象を受けた。「異例の調査」がおこなわれることになったのも、若者たちが行動を起こした結果だと考えるのが自然だ。
韓日戦で韓国人の対抗心が低下し、不正を嫌う気持ちが強まったのは、日韓の経済格差が縮まったことと無関係とは思えない。
韓国の若い世代は、韓国が日本をいくつかの分野で上回っていることをよく分かっていて、国際社会の目を強く意識する。そのため、日本が相手でも試合結果にあまり執着しない。
今の韓国では公正さを重視する風潮が強まっているから、たとえ韓日戦で勝っても、怒りや恥が歓喜を上回ることがある。
その意識変化についていけない人は、懲戒処分を受けて退場することになる。

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