日本人にとって「初めてなのに懐かしい」という場所が台湾。
日本は1895年から1945年まで台湾を統治していて、今でもその時代の建物が残っているから、台湾に行ったとき、明治・大正時代にタイムスリップしたような気分になった。
最近、日本に住んでいる5人の外国人と、愛知県の三河湾に浮かぶ佐久島を旅行した。その中には、5年以上日本に住んでいる20代のミャンマー人女性がいて、彼女も初めて来たのに「懐かしさ」を感じたところがあった。
日本にありながら、“ミャンマーっぽい雰囲気”を感じさせる場所とは?
佐久島行きのフェリーが出発するまでに30分ほどあったので、港にある朝市に寄ってみた。

その日の朝に市場で仕入れた新鮮なシーフードを提供する店を見て、彼女は「デジャブ」を感じた。
※デジャブとは、初めてなのに、すでに体験したことがあるように感じる現象のこと。
道から店内が丸見えで、エアコンはなく、扇風機が全力で客に風を送っている。イスやテーブルなどもシンプルで飾り気がなく、とても庶民的。
彼女は日本のレストランについて、かわいい飾りや置き物があってオシャレでハイセンス、というイメージを持っていた。でも、この店は開放感があってシンプルで、ややごちゃごちゃした雰囲気は、ミャンマーの街中でよく見かける飲食店と重なった。
さらに、日本の店ではスタッフが「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」と礼儀正しく接し、客と一定の距離を保つことが多い。
でもここでは、店員が外国人と目が合うとすぐに笑顔を浮かべ、「どこから来たの?」「日本語うまいね〜」「フェリーの時間まで、ここで何か食べて時間をつぶしなよ」「今日のおすすめはエビと大アサリだ」と、いろいろ話しかける。
店内で食事をしていると、別の店員が「よかったら、みなさんの写真を撮りますので声をかけてくださいね」と気さくに声をかけてくれた。
そのミャンマー人は日本の店でよく「壁」を感じ、それに少しさみしい思いをすることが多かった。だから、この店のフレンドリーな接客は、ミャンマーの店員を思い出してうれしかったという。
その後、フェリーに乗って佐久島に到着。島内をブラブラ歩いていると道に迷ってしまい、でも、そんなことは言い出せず、「まぁ、きっと何とかなる」と思っていたとき、この店を見つけた。

小さな島の佐久島の大きな魅力は「何もないこと」。
5時間ほど島を歩き回って、走っている車を見かけたのは2回しかない。聞こえてくる音といえば、風と波の音がほとんどで、本当に静かだ。のんびりした島には信号機もない。事情はよく分からないが、ノーヘルでバイクに乗っている人も見かけた。
日本の社会では当たり前のコンビニやスーパーもここにはないため、島の人たちは昭和の日本によくあった個人商店で、食料品や日用雑貨を手に入れている。
彼女の話では、今のミャンマーでコンビニがあるのはヤンゴンなどの大都市だけで、全国的には家族経営の小さな商店が多い。
客にアピールする派手な飾りはなく、少し薄暗い中で商品を並べるこの店を見て、彼女は日本のコンビニやスーパーでは感じたことのない親しみをおぼえたという。
現在のミャンマー社会の発展段階は、都市部にコンビニが登場したころの昭和の日本に近いのかもしれない。
昔の日本にあったシンプルな店で、人懐っこい店員がいたら、ミャンマー人はきっとそこで母国を感じるだろう。

佐久島の最高速度は20キロらしい。実際、この島ではそれ以上のスピードは必要ない。

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