【足を組む姿勢】欧米人には謎 日本でマナー違反になる理由

日本人が外国へ行けば、常識や文化の違いからカルチャーショックを受けることは避けられない。でも、それはお互いさまで、外国人も日本に来れば、そんな壁にぶち当たる。
あるイギリス人男性は、日本では建物に入るときに靴を脱ぐ習慣があることは知っていたが、日本人が靴を脱いだり履いたりするスピードが「尋常じゃないほど速い!」と驚いた。彼はいつも日本人を待たせてしまうから、申し訳ない気持ちになったという。
日本人が海外へ行けば、彼のような立場になることもある。

これまで何人もの欧米人から話を聞いた経験から、靴を脱ぐ日本の習慣に疑問を感じた人はいない。でも、日本では「足を組むことは失礼になる」という話を聞いて、不思議に思わなかった人はいなかった。
なぜ日本では、この行為はマナー違反になるのか?

目次

アメリカ人とイギリス人が日本の文化で驚いたこと

足を組む姿勢について、日米では見方が逆転する。
ニューヨーク出身のあるアメリカ人女性は、日本の学校で英語を教えることが決まり、来日して東京で研修を受け、日本で働く上で必要な常識やマナーについて学んだ。
そのとき彼女が驚いたのは、日本の文化では足を組むことが「マナー違反」と見なされるということだった。特に校長や教頭、上司と向かい合うときは、絶対にその姿勢をしないで、両足を床につけて話すように言われた。

アメリカでは、逆に足を組むことはリラックスしている証拠で、むしろマナーとしては正しいとされている。だから、アメリカの会社で就職の面接を受けるときに、入社を希望する人が足を組んだままで質問に答えることはまったく問題ない。日本なら、それだけで大幅に減点されるだろうけど。
ビックリしたのは彼女だけではなかった。
研修を受けている中でその話が出ると、会場がどよめき、「なぜ日本では足を組むのが失礼になるのか?」と質問する人が現れた。
しかし、担当者(おそらく日本人)もはっきりした理由はわからず、日本ではその態度は「偉そうで常識がない」と思われ、仕事をする上でマイナスになるから、とにかく足を組んではいけないと説明しただけだった。

 

以前、日本に5年以上住んでいるイギリス人と話をしていたとき、「足組み」の話題が出てきた。彼女がSNSで「外国人が日本で気をつけること」といったタイトルの動画を見つけ、何気なくクリックしたところ、目が点になった。
動画では、電車の中でおじいさんが隣に座っていた若い女性に向かって、「足を組んでいるのは失礼だ!」と怒り、新聞でバシバシと足を叩いていた。駆けつけた車掌は、「コイツが足を組んでいるから注意しただけだ」とキレ気味に話す。
動画をアップした外国人は、日本文化で足を組むことは「disrespectful(敬意に欠ける、失礼)」な行為とされ、外国人は絶対にしてはいけないと呼びかけた。
それを見たイギリス人は、その態度がマナー違反になることは知っていたが、日本人をそこまで怒らせるとは思っていなかったから、衝撃的だったという。

日本の電車で「足組む人」に対する外国人の反応

その動画はよくある「切り抜き」で、トラブルになるまでの過程がわからないため、何とも言えないけれど、足を組んでいるということだけで新聞で叩くのは沸点が低すぎる。それは一因で、彼を怒らせたほかにもあったのだろう。
外国人のコメントを見ると、

What does it mean when crossing the legs in Japan?
(日本で足を組む行為にはどのような意味があるのか?)

It’s a gesture that disrupts the harmony of shared spaces and signifies inattention or disregard for those nearby.
(それは共有空間の調和を乱す姿勢で、周囲への無関心や軽視をあらわしている。)

who made that rules?
( 誰がそのルールを決めたんだ?)

と戸惑う人が多かった。
この動画には本当に多くの外国人(おそらく欧米人が中心)がコメントを寄せていた。それを見ると、海外の視点や常識、価値観がわかるので、彼らの意見を日本語訳して紹介しよう。

・日本ではあのような態度は失礼です。特に向かい合って座るときには、背筋を伸ばして足をしっかり地面につけることが望ましいとされています。
・これまで聞いた中で最も馬鹿げたルールだ。全く意味が分からない。
・祖父母や両親、年長者の前では足を組んではいけません。公共の場で年配の方が隣や前に座っているときも同じです。
・オナラをするのは明らかに失礼な行為だ。なぜなら、不快な臭いで周囲の人を不快にさせるからです。しかし、足を組む行為は違う。なぜこれが失礼と見なされるのか、まったく理解できない。
・この行為が年長者への無礼を示すという根拠は何ですか?

・わたしはイスラム教徒ですが、教会での葬儀で足を組む人を見て、間違っていると感じました。イギリスでは許容されるかもしれませんが。
・わたしが通っていたカトリック教会では、誰も足を組んでいませんでした。文化や環境の違いによって、許容される行動や認識が変化することは本当に興味深いです。
・あのお年寄りは足を広げているけど、あの態度はいいのか?
・男性は女性より少し足を広げる必要があるんだ。女性にはないものを持っているからね。
・日本人は昔から家の中で靴を脱ぐ習慣があるから、靴の裏が自分につくのを嫌がる人が多い。だから、電車で足を組んでいる人の近くには座りたくないんだ。
(もしかしたら、外国人が「日本人は隣に座らない」と言う理由の一つかもしれない。)

・日本の伝統では、座って靴底を見せる行為は、自己重要感や傲慢さの表れで、周囲の人々よりも自分が重要だという意思表示になる。異なる文化を、私たちの基準で判断すべきではない。
・日本の文化では、正座がいちばん正しい座り方とされている。だから、イスに座っているときでも、足をそろえて背筋を伸ばすことが適切なんだ。

 

日本で重視されるのは緊張感、欧米ではリラックス

足を組んでいても、公共の場と職場では周囲の受け止め方が違って、問題にならないこともある。時と場所に左右されることはあるけれど、日本の文化では全体的に「マナー違反」と見なされることが多い。
欧米のように「相手に親近感を示している」といったポジティブな理解はされにくい。

その理由は、日本では「真面目」が評価され、欧米では「リラックスした態度」が評価されるからだろう。
日本人は仕事とプライベートの「オン・オフ」が比較的はっきりしている。だから、職場や商談で足を組むと、緊張感や真剣さが足りないと感じられ、自分や案件を軽視しているように思われて不快になる。こうなると信頼関係を築くことも難しくなる。
いっぽう、欧米では仕事でもリラックスしていることが重視され、その態度がエラそうだとか、だらしないとは思われないし、礼儀知らずにもならない。日本に比べて、欧米の社会にカジュアルな雰囲気があることは、敬語などの言葉づかいの違いからも分かる。

日米の文化や価値観の違いは、野球にもあらわれていて、アメリカの野球選手は試合中、当たり前のようにガムをかんでいる。
その理由をAIに英語で聞くと、「集中力を高め、リラックスした状態を保つため(to improve focus, stay relaxed)」という答えが返ってきた。
日本でも、集中力を高めることが重視されるのは同じだが、リラックスについては否定的で、ガムをかみながら試合をしていると、「みっともない」などと批判する視聴者は多い。
巨人軍は「常に紳士たれ」という理念に基づいて、2014年に「ガム禁止令」を出した。し、ほかの球団でもガムを禁止したところがある。
(現在、どの球団がどこまで認めているのかはわからない。)
大谷選手が試合中にガムをかんでいるのを見て、「日本人の心を失ってしまったのか?」と文句を言う人もいた。
日米の仕事に対する考え方の違いがわかる。

以前、京都のゲストハウスでこんな話を聞いた。
そこでは日本人や外国人のスタッフが好きな音楽を聴きながら、部屋や共有スペースを掃除していたが、日本人の客から「もっと真面目に仕事をしろ」といくつも苦情がきて、仕事中に音楽を聴くのを禁止した。外国人の客で文句を言ったのは1人もいなかった。

 

日本の文化では「真面目」が重視されるため、職場で足を組んでいるのは緊張感がなく、相手に悪い印象を与えがちになる。それに対して、欧米の文化では「リラックスさ」が重視されるため、足を組んで背中を背もたれに付けていても問題視されない。
電車の中で足を組んでいる人を見て不快に感じるのも(例外的だろうけど)、自分に対する敬意がないと感じるからだろう。男尊女卑の空気も影響しているかもしれない。

 

 

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この記事を書いた人

今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。
また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。

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