日本に15年以上住むネパール人が感じる、3つの「魅力」とは?

ネパールはインドと中国に挟まれた小さな国で、海から遠く離れた内陸部にあるため、海を見ることなく一生を終える人も多い。「海」にあこがれ、それを見るために調査兵団に入ったアルミンの気持ちが、世界一わかるのがネパール人と言われる(しらんけど)。
今回は、日本に15年ほど住んでいるネパール人の話を紹介しよう。
彼は愛知県の大学を卒業した後、山口や静岡などで働き、今は青春時代を過ごした愛知県で妻と子どもと暮らしている。
彼が家族のいる母国に戻らず、日本に残ることを決めた理由は何なのか?

目次

バツグンの安定性

「日本の生活のどんなところに魅力を感じるのか?」

それを聞くと、彼は「いまネパールで何が起こっているか知っているか?」と逆質問をした。それはニュースを見て衝撃を受けたから、もちろん知っている。
ネパール政府がSNSの使用を禁止すると国民が激怒し、首都カトマンズで抗議デモが発生してコントロール不能となった。暴徒は議会や最高裁などに侵入して建物に火をつけたり、政治家を襲撃したり、刑務所を襲って1万5千人が脱走したりしたため、いま社会は大混乱におちいっている。
この争乱ですでに約30人が死亡したという。
動画を見たい人は下をクリックしてくれ。

“SNSアクセス禁止”で大規模抗議デモ 死者25人に…議会や外資系ホテルへの放火も ネパール

彼の話では、ネパールは以前から政治的な状況が不安定で、騒乱や混乱などの問題が発生しやすかった。たとえば、1996年から2006年まで、政府軍とマオイスト(ネパール共産党毛沢東主義派)の間で内戦が続き、多くの人が亡くなった(ネパール内戦)
ネパール社会にはさまざまな地雷があるため、今回のようにいきなり大爆発することがあって、先が見通せない。
彼としてはそんな不安を抱えて生活したくない。

いっぽう、日本の安定感はバツグンだ。
これまで15年間ほど住んでいて、社会が混乱状態になったことは一度もないし、日本人の性格や考え方について理解を深めると、この国では暴動が発生して商店が略奪されたり、建物が放火されたりすることはないと確信できる。
日本の社会は安定しているから、理想の未来を描き、それに沿って生活設計を立てることができる。それはネパールにはない大きな魅力だ。
いま首都のあちこちから黒煙が上がって、戦争状態になっているような祖国を見ると、とても悲しい気持ちになるが、自分の選択は正しかったと実感している。
実際、日本にも政治に不満を持つ国民は多く、国会の前に集まって抗議活動をすることはある。でも、それが限界で、暴徒と化して中に侵入し、国会議事堂を破壊したり、燃やしたりすることはない。

とくに結婚して子どもが生まれると、彼にとって社会的な安定感はいちばん大きな魅力になった。
日本での生活について、彼が気に入っているものはそれ以外にもある。

便利な日本

ネパール人は一般的に日本を世界的な先進国で、とても豊かで発展した国だと考えている。ネパールが貧しい国であることは、国民がよく知っているから、日本が輝いて見える。
日本での経験が15年という、在日外国人としてはベテランの域に達している彼は、日本での生活の快適さはコンビニに象徴されていると言う。
店員の接客サービスはとても気持ちが良く、店内は明るく清潔で、品ぞろえも充実している。ネパールの一般的な商店は、残念ながらそのすべてにおいて負けている。
日本のコンビニは人や商品のクオリティーの高さを表していて、それが街のどこにでもあるから、日本の社会はとても住みやすい。

敬意あふれる社会

彼が日本人について心から素晴らしいと感じている点は、敬意をもって他人と接すること。最近、健康診断を受けたとき、医者や看護師の対応や言葉遣いが丁寧で、それを実感したという。
看護師は順番を待っている患者に向かって、「◯◯さま、◯◯さまはいらっしゃいますか?」と呼び、おばあさんが立ち上がって歩くと、「大丈夫ですから、ゆっくり歩いてくださいね」と自然と気づかいの言葉をかけて待っている。
検査をした医者は「はい、お疲れ様でした。外のイスに座ってお待ちください」と優しく言ってくれるし、外国人の彼が質問しても笑顔で答えてくれた。

病院はサービス業ではないから、彼がネパールにいた時は、こんな丁寧な対応を受けたことはなかったという。そんな態度で接してくれる看護師や医者もいたけれど、全体的には冷たく素っ気なかった。
患者側も医者に敬意を持っていない人がいて、治療に納得できないと、患者と身内などが勝手に部屋に入ってきて、医者に文句を言ったり脅したりすることもある。
彼は日本の病院では、医者・看護師・患者がお互いに相手を敬意をもって接していると感じて感動した。
これは病院限定ではなく、日本の社会には他者の気持ちを尊重する、素晴らしい雰囲気に満ちている。これも彼にとっては大きな魅力だ。

※彼は10年以上、ネパールの病院に行っていないから、この情報は古いかもしれない。

 

日本のストロングポイント

世界第2位の経済大国だった日本はもう遠い過去になって、今の日本はとても「金持ち国」とは言えない。最近では、来日外国人に割増料金を設定しようとする、30年前には考えられなかった動きもある。
しかし、日本の人や社会をよく知るネパール人が指摘した、社会の安定性・便利さ・敬意の「三位一体」は他国にはない大きな強みだ。

 

 

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この記事を書いた人

今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。
また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。

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