日米のトイレ事情　「３K」のアメリカ／快適＆清潔の日本

2025年9月27日

知り合いのアメリカ人男性は日本に住んでいて、たまに母国に帰って１ヶ月ほど過ごしている。日米を往復する彼には、「日本に戻ってきな」と実感する瞬間がある。それはニューヨークから戻ってきて、東京の空港でトイレの扉を開けた瞬間だ。便器カバーがカパッと自動的に開くのを見ると、思わず「ハロー、マイフレンド！」と声をかけてしまうという。
彼が日本の生活でとても気に入っているのは、トイレがとても清潔＆快適なことだ。今では、ウォッシュレット付きのトイレが無い生活なんて考えられない。

先日、ドジャースの佐々木朗希投手が７回に登板すると、強打者を３球三振でしとめるなど好投を見せ、監督から「ファンタスティック」と絶賛された。
昨年、この才能にあふれた投手を獲得するため、ドジャースはヤンキースやメッツなどと争奪戦を繰り広げた。佐々木選手がドジャースに大きな魅力を感じたのは、トイレだった。
そのころ、ドジャースはクラブハウスを新しくする計画をしていて、佐々木選手が「日本製のトイレを設置しますか？」と聞いた。交渉をしていたドジャースのCEOは「変な質問だな」と思ったけれど、彼にとってこれは重要なことだとわかると、すぐにそれを約束。
最近、これが佐々木選手のドジャース入りの“決定打”になったという記事を見た。

佐々木選手が求めた「日本製トイレ」というのは、ウォシュレット付きのトイレのことだろう。ネットには佐々木選手のアンチも多いが、このリクエストについては共感する人が多かった。

・僕はいいけど肛門がってね
・このエピソードが広まれば選手コーチ含め球団職員全員が佐々木に感謝するだろう
・TOTOのcm決まったなおめ
・これはしゃーない
・シャワートイレがないのはキレていいと思う。

日本人にとって、きれいなトイレの有無は仕事のパフォーマンスに影響する。佐々木投手の「ファンタスティック」を支えたのは日本製トイレだ。しらんけど。

日本人にとっては、トイレにあって当然のウォシュレットは海外では一般的ではなく、「ぜいたく品」になることもある。
昨年、アメリカの有名コメディアンが家族で日本を旅行したら、どこのトイレもきれいで、アメリカの手術室よりも清潔だったからショックを受けたという。彼はアメリカ社会について、悪いところはあるが、全体的には他国よりも整っていると思っているが、日本のトイレを体験した今では、アメリカが不潔な国に感じるという。

日本の小中学校で英語を教えていて、今はニューヨークに住んでいるアメリカ人と話をしていたとき、日本について恋しく思うことをたずねたら、彼女は真っ先にトイレを挙げた。
アメリカ基準だと高級ホテルにあるようなトイレが、日本では高速道路のサービスエリアにある。たまにハズレもあったけれど、日本の公衆トイレはとても清潔で、アメリカのように臭い・汚い・危険の「３Ｋトイレ」を見なかったという。
アメリカではトイレが犯罪現場になることがあるため、個室の上下に大きな隙間があって、中にいるのが１人か複数かなど、様子がある程度わかるようになっている。日本人がアメリカへ行くと、この「見える化」にビックリすることが多い。

日本人の場合、トイレの使い方も「きれい」だと思う。
ネット上にある京都人が集まるグループの投稿を見ていると、外国人観光客が多い観光地のトイレは「終わっている」と報告する人が後を絶たない。写真を見ると、トイレットペーパーが床に散乱していたり、便座に靴底の跡があったりする。
清掃員から、トイレ掃除が大変になったとか、トイレットペーパーなどの備品がすぐに無くなって困るといった話を聞いた人もいた。
個人的には、観光地では公衆トイレを有料にしてもいいと思っている。

日本では外出中に用を足したくなると公衆トイレを使うか、コンビニに駆け込むことが一般的だ。しかし、アメリカではそうはいかない。公衆トイレは絶望的に少なく、１０万人に対して８個しかないというデータもある。そのため、アメリカではスターバックスやマクドナルドなどが、買い物をしなくても店内のトイレを利用できるようにし、行政の怠慢をカバーしていた。
しかし、このサービスは店側の忍耐の限界を超えたらしい。ことし１月、米CNNの記事（Starbucks ends its ‘open-door’ policies：January 14, 2025）にこんなことが書いてあった。

「Starbucks doesn’t want to be America’s public bathroom anymore.」
（スターバックスは、もうアメリカの公衆トイレであり続けることを望まない。）

アメリカでスタバは公共インフラの一部だったが、もう無料トイレの提供を廃止すると宣言した。かといって、行政がトイレを整備するとは思えない。
日米のトイレ事情にはもともと大きな差があったが、これからさらに拡大する予感しかない。アメリカへ行く日本人は覚悟するべし。