宮沢賢治の代表作『注文の多い料理店』はザッと大体こんな内容だ。
2人の青年がお腹をすかせて山の中を歩いていると、「山猫軒」という看板を掲げた西洋料理店を見つけた。中に入ると、「注文の多い料理店ですから、どうかご承知ください」というメッセージがあった。
店では扉ごとに、以下のような注意書きが書かれていた。
「髪をとかして、履き物の泥を落とすこと」
「金属製のものをすべて外すこと」
そして、2人は最後に「体に塩をたくさんもみ込んでください」という注意書きを見て、じつは自分たちが食材として扱われていて、この料理店は「何者かが客を食べてしまう店」であることに気づき、絶望的な恐怖に襲われた——。
このあとはネタバレになるので、本を読んでほしい。
さて、日本の隣国さんも注文が多い。
韓国では一般的に「自国=被害国、日本=加害国」と考えられていて、日本に歴史に対する反省や謝罪、賠償を何度も要求するから、そのたびに日本ではウンザリ感が広がる。まさに悪循環だ。
ユン前大統領のように保守派の中には、日本はもう十分に謝罪したから、これ以上要求するべきではないと考える人もいる。この意見なら好循環につながるが、残念ながら韓国社会でそんな意見は少数派だ。
両国関係を前進させるために、韓国側では謝罪表明のほかに、「天皇訪韓」も以前から希望していた。この思いは強くあり、日韓の間で何か大きな動きがあると何度もこの案が浮上してきた。
7年前、日本で新しい天皇が即位した時も、これを日韓関係の“転換点”にしようという機運が盛り上がった。具体的には、関係改善のために新天皇が韓国を訪れるよう積極的に働きかけるという主張だ。
しかし、それを伝える韓国メディアは「新しい『日王』の即位」や「『日王』交代」と、天皇ではなく「王」という表現を使った。韓国日報は、「日王」には日本政府をけん制する役割を果たしてほしいと書いた。韓国には、自分たちの都合で天皇を利用できると誤解している人たちがいるらしい。
「王」は「皇帝(天皇)」のワンランク下の呼称で、朝鮮時代、朝鮮王朝は冊封体制下にあり、中国皇帝を主君とし、家臣である自身は朝鮮国王と名乗っていた。皇帝は王の上位にいて、王を支配することができる。
現在、欧米など海外メディアは「エンペラー」と呼び、中国でさえも「天皇」という呼称を使っている。天皇をあえて「日王」と呼ぶのは侮辱的で、そんなことをするのは世界で韓国メディアしかない(北朝鮮もそうかも)。
ちなみに、韓国政府は国際常識を採用し、「天皇」という言い方をしている。「天皇様」という呼称をした首相もいた。しかしその一方で、文喜相(ムン・ヒサン)国会議長のような人物もいる。2019年に文氏は当時の天皇(今の上皇様)を「戦争主犯の息子」と呼び、「慰安婦に謝罪すべき」と主張し、日本国民を激怒させた。日本の立場からしたら、文氏こそ日韓関係を悪化させた「戦犯」だ。
今年は日韓国交正常化60年の記念となる年だから、韓国では「天皇訪韓」を期待する声が上がったが、日本側にそれに応える動きは見られない。日本も関係前進を望んでいるけれど、それはハッキリ言って「ノーサンキュー」。
政府がそんなことを発表したら、国民から袋だたきされる未来しか見えない。
しかし、韓国は簡単にあきらめない。今は「上皇訪韓」を期待する雰囲気があり、それを提案する国会議員もいた。
今月、イ・ヒョク(李赫)駐日韓国大使がそれについて質問され、これはとてもデリケートな問題なので「慎重かつ思慮深く扱うべき」と述べ、上皇さまが訪韓されると良いと思うが自分の任期中にそれが実現するかどうかは言えないと、慎重に答えた。
韓国側が天皇(上皇)の訪韓を希望するのなら、前提として、日本国民の広い同意や共感を得る必要がある。
去年、韓国の全国紙・朝鮮日報のコラムが日本にこんな要求をした。(2024/10/13)
「朝鮮半島ではなく韓半島と書いてほしい」
日本では一般的に「朝鮮半島」という言葉を使っているが、韓国では「朝鮮」という言葉に抵抗を感じる人が多い。だから、日本も韓国の国民感情に配慮して、同じ表現を使ってほしいという。
その記事に対する日本人のコメントは、想像どおりのものがたくさんあった。
・その前に「日王」てのは直さんのか
・そういう韓国のメディアが天皇陛下を日王と書き続けるのはなぜかな?
・国会議員が「日王」とか言っているのに
・日王とか言ってる国がどの面下げて要求してんのさ
過去の歴史に対する反省や謝罪をしてほしい、天皇や上皇に訪韓してほしい、「韓半島」と書いてほしい…。
韓国が日本にする要求は本当に多く、まさにエンドレス。
日本に韓国の国民感情への配慮を求めるのなら、自分たちも日本国民の感情に配慮する必要がある。この中で実現する可能性が高いのは、天皇(上皇)訪韓だろう。
未来志向の日韓関係のためにそれを求めるなら、まず韓国メディアは「日王」の呼び方をやめて、政府や国際標準に合わせてはどうか?
余談
日韓友好を願う気持ちは日本も共有しているが、韓国側のリクエストにはあまり応じようとしない。『注文の多い料理店』とは客を食べてしまう店だったように、韓国の注文を聞くと、結局は韓国側に都合よく利用され、のみ込まれてしまうことを日本は警戒している気がする。

コメント
コメント一覧 (2件)
韓国、特に、韓国の左派には絶対に謝ってはいけません。
謝罪をするその瞬間から、日本は自分たちの”罪を認める”ことになり、永遠に罪人となって被害者(韓国)が許すまで無限の謝罪を続けなければなりません。2017年に朴槿恵大統領が弾劾されたのも、自らが悪かったと謝罪したからです。全く罪を犯してもいないし、謝ることではないのに、朴大統領は側近管理を疎かにしたという自責の念から謝罪し、永遠の罪人となり、その場から追い出され、監獄に入れられる身となってしまいました。数日前に亡くなった村山 富市 日本首相が日本の朝鮮支配を謝罪したことで、韓国人は実際に日本が朝鮮に罪を犯したことを知り、左派は今も日本を罪人と見なしています。
日本帝国の朝鮮支配は時代的な状況であり、朝鮮がしっかりと内治できなかったためであり、歴史です。 日本が隣国を併合し、それによって多くの朝鮮人が戦場で死亡し、差別を受けたことに対して謝罪することは両国の友好のために良いことですが、必ずしも謝罪しなければならない犯罪ではありません。歴史は歴史として残し、両国は先を見なければなりません。
>謝罪をするその瞬間から、日本は自分たちの”罪を認める”ことになり、永遠に罪人となって被害者(韓国)が許すまで無限の謝罪を続けなければなりません。
そのとおりです。謝罪すると終わりではなく、「始まり」になってしまいます。1965年と2015年に日韓両政府は過去問題の「最終的な解決」で合意しました。
日本がもう謝ることはないでしょう。