【日本とナウルの関係】占領中に悲劇もあったが、戦後は良好

ナウルでもっとも有名な日本語は、「ETCカードが挿入されていません」だった。
これから、戦前からつづく日本とナウルの関係について書いていこう。

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ナウル「参戦」の理由

先日、フィンランドで複数の政治家が「つり目」をして、東アジアの人々を侮辱する行為をおこない、多くの日本人を怒らせた。
もちろん、これはフィンランド全体の価値観を代表するものではない。日本との友好関係を大切にするフィンランドの首相は、「個々の政治家による侮辱的なSNSの投稿に対して、心からお詫び申し上げます」と日本語で謝罪した。

そんな騒ぎの中で、日本のナウル共和国政府観光局の公式「X」アカウントがフィンランドの政治家に対して、普遍的な人権意識から差別的な行為を批判した。
それに感謝する日本人もいれば、こんな吐きゼリフをする日本人もいた。

「お前は日本のなんなんだ。なんで代理戦争を勝手に始めているんだ」

それに対して、ナウル共和国政府観光局が「X」で投稿したのはこんなメッセージだった。

「昭和17年から昭和20年までは日本統治下でしたよ。」

 

ナウル共和国政府観光局の「X」公式アカウント
プロフィール画像はおそらく日本軍が残した兵器

ナウルという国

ナウルという国名は現地のことばで「わたしはビーチへ行く」という意味だとか。
しかし、ナウルは日本から南へ約5000kmのところにある島国だから、そう簡単に行くことはできない。
ちなみに、フィンランド語で「笑う」も「ナウル(Nauru)」という。

ナウルの面積は約21平方キロメートル(東京・品川区とほぼ同じ)で、国としてはバチカン市国、モナコに次いで世界で3番目に小さい。共和国としては世界最小で、人口は約1万3000人。
首都を「ヤレン」といって、2023年の「M-1グランプリ」で準優勝したお笑いコンビとほぼ同じだ。

日本軍がナウルでしたこと

太平洋戦争がはじまると、そんなナウルに日本軍が迫ってきた。
1942年2月、オーストラリアの歴史で初めてとなる、他国勢力による大規模な本土への直接攻撃である「ダーウィン空襲」がおこわれ、この攻撃はナウルに大きな衝撃を与えた。
その年の8月、日本がナウル島を占領。
日本軍はナウルに日本学校を開校し、多くのナウル人が日本語を学んだ。また、日本軍がお祝い行事を開催する際には現地の踊り手を雇い、ナウルの人たちの収入源になったという。

They opened a Japanese school, a language which many Nauruans learned during the war, and hired native dancers for celebrations they organized, which brought the Nauruans extra money.

Japanese occupation of Nauru

 

しかし、ナウルに人口が集中し過密状態になると、日本軍は住民を強制的に移住させ、結果的に多くの人々が命を落とした。
ナウルはその悲劇を歴史の一部としてとらえ、日本に対して謝罪や賠償を要求することはなかった。

戦後の日本とナウル

戦後の日本とナウルの関係は良好だ。
ナウルはリン鉱石の採掘で大きな富を得て、国民も裕福になった。1980年代、日本は世界第2位の経済大国だったが、一人あたりのGNPではナウルのほうが高く、日本の約2倍もあった。
ナウル航空が鹿児島と那覇空港へ直行便を出していて、日本への観光旅行にやってくるナウル人も多かった。しかし、リン鉱石が枯渇するとナウルの経済が急激に悪化し、日本への直行便も廃止され、一般人の交流もなくなった。

無風状態だった日本に、「地殻変動」が起こったのは2020年の10月1日。
この日、ナウル共和国政府観光局の日本事務所ができ、Twitterアカウントも開設され、こんな投稿がされるようになった。

Q. ナウルで最も有名な日本語は?
A. ETCカードが挿入されていません

日本から中古車が輸出され、そのまま使われているから、こんな音声案内が流れるらしい。
こんなユルくてユニークな投稿がバズって、フォロワー数は50万人を超えたけれど、「日本人観光客は年間3人」という寂しいつぶやきもあった。
ということで、日本とは戦前から縁のあるナウルへぜひ旅行に出かけよう、と言って簡単に行ける国ではないから、まずは興味を持つことからはじめてみよう。

 

 

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この記事を書いた人

今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。
また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。

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