12月に入って、今年も最終コーナーを回ってゴールテープが見えてきた。
そんなころ、日本で英語を教えているイギリス人がクリスマスの準備をするために、コストコへ行くと言うから、会員カードを持っていない僕もコバンザメみたいについて行って、買い物をした。
あとカフェで日本語と英語の違いについて話をしたので、これからその内容を紹介しよう。

イギリスを「イギリス」と呼ぶのは日本人だけ。
正式名は「グレートブリテン及び北アイルランド連合王国(United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland)ととても長いから、ふつう外国人はそれを略して「United Kingdom」、さらに省略して「UK」と呼んでいる。
日本語と英語のJK
アキラ: なあスカット、今年ももうすぐ終わりだけど、相変わらず日本語の勉強がんばってる? 最近、何か新しいことばを覚えた?
スカ: まず、人の名前を弾道ミサイルみたいに呼ばないで。それと、日本語はがんばってるよ、最近は「JK」って単語を覚えた。
アキラ: ……。前にインドネシア人に同じ質問をしたら、彼は「みそか」と言った。
ボクは知らなかったけど、30日(または月末の日)を日本語でそう言って、一年の終わりの12月31日を特に「大みそか」と呼ぶんだって。
日本語を学んでいる外国人は、ときどき斬新なことを知っている。だから、そんな新しい発見を期待して聞いたんだけど、「JK」って、それは「女子高生」のことだよね?
スカ: そうそう! わたし的にはこれは発見なの。英語で「JK」って言ったら「just kidding(冗談だよ)」って意味なのに、日本語だと「女子高生」になるって面白いよね!
アキラ: へー、それは世紀の大発見だ。でも、それはイギリス人が覚えなくていい日本語ランキングのかなり上位に入るやつだよ。特に外国人の男がそれを言うと、引かれる可能性が高い。英語を教えているときに、「女子高生 ≒ 冗談だよ」のネタにしか使えない気がする。
スカ: えー、そうなのかな? あと、「JK」って「自宅警備員」の意味にもなるんだって。
アキラ: それは初耳! 今、アプリで「自宅警備員」を英訳してみたら、「home security guard」って出てきた。「無職の引きこもり」が何かとんでもなく美変換されたけど、これは違うよね?
スカ: ぜんぜん違う! それこそ「JK」。

キットカットのクリスマスバージョン。
「njoy」は「enjoy」の省略形で「楽しんで!」、「thx」は「thanks(ありがとう)」のこと。
日本語と英語の略語
アキラ: 日本語を学んでいる外国人から、「日本人はなんでも短くして言う」とよく聞く。
言われてみると、パソコン、コンビニ、スマホ、コスパにタイパとか確かに短縮語が多い。作業効率に関しても、コスパ、タイパ、スペパ(スペースパフォーマンス)と3つもある。
スカ: それが日本語の特徴よね。私も前に「おざーす」や「あざーす」を知って、ラクだからそれを使ったら「外国人は言わないほうがいい」って言われちゃった。
アキラ: たぶん「JK」もそんな感じ。でも、英語にも言葉を省略することはあるでしょ?
スカ: もちろん。「wanna(want to)」や「kinda(kind of)」って言うし、ネットではOMG、LOL、ASAP(As Soon As Possible)、FYI(For Your Information)みたいな略語はたくさん使う。
英語能と日本語能
スカ: でも、日本語は次元が違うのよ。単語だけじゃなくて「主語」まで飛ばしちゃうから、理解するのが大変。
アキラ: 俺は逆に、英語の主語へのこだわりに慣れなかった。
「It’s sunny today」みたいに、訳さないのに付ける形式主語の「it」とか。「今日は晴れです」なら『Today is sunny』でいいじゃん!」って思ってた。
「It’s difficult to speak English」の構文は中学校で習うけど、仮主語(形式主語)と真主語(実質的な主語)と、主語が2つあるのもわかりにくい。
スカ: 日本人の「英語あるある」の一つね。英語脳には、最初に大ざっぱな状況や状態を伝えて、次に細かい具体的な情報を言ったほうがわかりやすい。
アキラ: 日本語能だと「英語を話すことは、むずかしい」でOK。
スカ: それだと頭でっかちでバランスが悪いよ。
他にも、日本人は真面目だから、「They sell cars at that store」という文を見ると、「“彼らは”その店で車を売っています」って律儀に訳しちゃう。
アキラ: そうそう。「Do you have the time?」(何時ですか?)も、「you」が邪魔に感じる。日本語を母語としていると、この「主語を必ず入れる」っていうルールを身につけるのに苦労する。
スカ: でも、「Please be quiet」みたいに、命令やお願いするときには主語をカットするから、「必ずしも」ってわけじゃないけどね。
日本人が主語をカットする理由は「タイパ」
スカ: 日本語は普通の会話でも主語をバンバン飛ばす。
アキラ: まあね。たとえば、「正直嫌だったけど、『行きたい』ってうるさいから、仕方なく行った」なんて、主語が一個もなくても意味がわかる。
これを英語で言ったら、I, he/she, we……って「誰が」をすべて明確にしなきゃいけない。
スカ: 日本人が主語をカットする理由をAIに聞いたら、「速く伝えてコミュニケーションの効率を上げるため」だって。まさにタイパで、パソコンやスマホと同じ理由ね。
日本人は意味さえ通じれば、無駄なものをどんどんカットしていくから、外国人には理解がむずかしいのよ。
アキラ: でも、発想としては合理的だから慣れるとラクだよね? 昔、今の年末年始の時期に、インド人やアメリカ人から「メリクリ」や「あけおめ」というメールをもらった。人類は省エネが好きなんだよ。
アキラ:そう言えば、前に生徒から「マ?」と「り!」を見せられて、意味を聞かれて困った。それで「マジで?」「了解!」なんだって。そうやって二酸化炭素の排出量を減らす日本人は地球にやさしいね。
日本人が主語をカットする理由は謙虚さ
アキラ: AIに日本語で聞いたら、他にも「直接的な言い方を避ける」という理由があるらしい。
「もう少し安くしてくれませんか?」って言うとき、英語なら「Can you〜?」と言うけど、日本人の感覚だと、「あなたが」と言うのは失礼に感じてはばかれるから、遠回しの言い方になる。
「安くしてくれると、嬉しいんですけど」で通じるから、いちいち「you」や「I」を言わなくていい。
スカ: どの言語にも、それを使う民族の文化や価値観が反映されている。
日本人のそういう控えめな性格が言葉に込められているから、違う文化圏の外国人には、日本語はあいまいでわかりにくいんだよ。

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