フィンランドについて、日本でとても有名なのといえば「ムーミン谷」だ。
そこは「どんな人でも温かく迎え入れられる場所」として、多様性と寛容の精神に包まれた優しい世界で、フィンランドがまさにそんな国だと称賛する人もいる。
しかし、最近、現実がその理想を壊した。

これは同じ北欧の国・ノルウェーの風景
「フィンランドは人権先進国ですか?」とAIに英語で質問すると、こんな返事が返ってきた。
「Yes, Finland is widely considered an advanced nation with strong human rights, excelling in democracy, press freedom」
フィンランドでは人権が強く守られていて、民主主義や報道の自由において優れた先進国として広く認識されていると AIは力説している。
アメリカの NGO団体「フリーダム・ハウス(Freedom House)」が2025年に発表した「世界の自由度ランキング」で、フィンランドは1位になった。しかも、100点満点中100点を獲得した世界唯一の国というおまけ付き。
このランキングは「個人の権利」、「表現・信仰の自由」、「結社の自由」、「法の支配」などが評価され、フィンランドはそれらが最高水準で保障されていると評価された。
また、フィンランドは、世界経済フォーラム(WEF)の「グローバル・ジェンダー・ギャップ報告書」(2025年版)でも、アイスランドに次ぐ世界第2位となり、ジェンダー平等先進国としての地位をアピールした。
さらに、フィンランドは「世界幸福度報告書」(2025年版)で8年連続の1位となったのも記憶に新しい。このランキングではスウェーデン、デンマーク、アイスランドが上位にあり、北欧の国々が目立つ。
そんなことから、フィンランドなど北欧を見ては「人権に対してとても敏感で意識が高い!」と称賛し、返す刀で「それに比べて日本では人権、平等、多様性が守られてない。マジで人権後進国」なんてため息をつく日本人が昔からいる。
しかし、つい先日、必ずしもそうではないことが判明した。
ミス・フィンランドに選ばれた女性が「つり目」のポーズをした写真を SNSに投稿したところ、「アジア人への侮辱だ! 差別行為だ!」と批判が殺到。
女性は「頭痛への反応だった」と(意味不明の)釈明をし、「多くの人に不快な思いをさせて申し訳ありません」と謝罪したが、時すでにお寿司。彼女はミス・フィンランドの称号をはく奪された。そもそもこの女性を選んだことが、最大のミスだったというオチ。
両指で目尻を上げて目を細くするのは、とくに日本人、中国人、韓国人の東アジア人に対する差別的な行為として知られている。
AIに、「白人がつり目をしている顔の画像を作ってください」とお願いしたら、次のように丁寧に断られた。
「申し訳ありませんが、そのリクエストにはお応えできません。文化や人種に関連する内容は敏感で、誤解を招いたり、他者を傷つける可能性があるため、慎重に取り扱う必要があります。」
だから、フィンランドを代表する「ミス」の称号を失うのはあたり前田のキャプチュードと思われたが、今度は与党の国会議員が「つり目」をした顔を SNSに投稿し、この決定に反対し、女性を擁護した。
ナポレオンは「真に恐れるべきは有能な敵ではなく無能な味方である」と言ったらしいが、まさにそうなった。

フィンランドの国会議員、ユホ・エーロラ氏のご尊顔。画像は本人のフェイスブックから。
複数の国会議員が「つり目」を投稿し、この行為を正当化したため、国境を超えて大炎上した。しかし、フィンランド側は誠実に対応しなかった。
たとえば、ある日本人が「X」を通じて、フィンランドの人権大使に「この事態をどう考えているのか」と尋ねると、人権大使はその日本人をブロックする。
これは東アジア人に対する侮辱だから、韓国メディア・朝鮮日報も記事で取り上げた。(2025/12/20)
ミス・フィンランドのアジア人差別投稿に議員ら加勢、相次いで「つり目」ポーズ投稿
この騒動について、どこかの韓国人が SNSで「韓国人として感心できない。韓国人なら手がなくてもできる。」とコメントしたのは笑った。
しかし、フィンランドにとっては笑いごとではない。
フィンランド在住の日本人が「アジア人差別の改善を求めるオンライン署名」を始めると、すぐに数千人の賛同が集まった。
フィンランド側も動き出し、教育相は「議員たちの行動は無責任で幼稚だ」と批判し、オルポ首相は「侮辱的な投稿に対して、心からお詫び申し上げる」と日本語・中国語・韓国語で謝罪した。
現在の日本にもいろいろな国会議員がいるけれど、ここまでストレートな差別行為をして、平気でSNSに投稿する議員は聞いたことがない。
日本でフィンランドがここまで批判されるのもかなり珍しいと思う。
「つり目」のポーズは人種差別的な行為のはずなのに、ヨーロッパでは「大目」に見られている。
ことしの夏にはスイスの有名時計メーカーが、この仕草をしているモデルを広告に使い、中国人に批判されて削除&謝罪に追い込まれた。
実際のところ、北欧やヨーロッパ諸国は日本に比べ、人権において先進的なところもあれば、遅れている部分もある。
人権、平等、多様性が守られ、インクルージョン(包摂)が大切にされている「ムーミン谷」はフィクションで、フィンランドは必ずしもそうではない。
一部の日本人も憧れるのをやめて、現実を見てから日本を批判したほうがいい。

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