日本が「安い国」になった現実 二重価格と「途上国化」の足音

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「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と呼ばれた時代の終わり

1980年代の日本経済は、控えめに言っても絶・好・調だった。
アメリカ人が日本経済の強さを分析した『ジャパン・アズ・ナンバーワン』本が出版され、多くの外国人が日本に学ぼうとしたほどだ。
しかし、その後、世界を圧倒する勢いがあった日本は「失われた30年」を迎え、現在では「発展途上国化」の影が忍び寄っている(と個人的に感じる)。

その不吉なサインが、かつての東南アジアなどでよく見られた「二重価格」だ。今、日本国内にそれが現れ始めている。

発展途上国の象徴「二重価格」の洗礼

発展途上国では一般的に、外国人は「お金持ち」だと見なされている。そのため、観光客から高い料金を取る仕組みがあることは珍しくない。
たとえば、20年ほど前にインドでこんなことがあった。
宿の近くで、安くておいしい料理を出す素晴らしいレストランを発掘したから、次の日もそこへ行くことにした。席に着くと、「いらっしゃいませ」さえ言わない無表情な店員がメニューを持ってきたが、それを見て驚いた。
なんと、すべてのメニューが昨日の2〜3倍も値上がりしていたのだ!

「いや、これはさすがにおかしい」と思って店員を呼び問い詰めると、彼は「チッ」と舌打ちして、別のメニューを持ってきた。
そこには昨日と同じ安い値段が書かれていた。 つまり、その店は地元の人には良心的な値段で、外国人には「ボッタクリ価格」で出すために、2種類のメニューを用意していたわけだ。

昨日の店員はうっかり地元の人用のメニューを、日本人に出すという痛恨のミスをしてしまったのだ。 当時のインドでは「外国人=お金持ち」という認識が当たり前だったから、こうしたチート行為はよくあった。
世界遺産であるタージマハルの入場料にいたっては、外国人料金が地元の人の約38倍という、ケタ外れな設定だった。

【38倍】インドでタージマハルの外国人料金に驚く日本人 ①

ラーメン店の二重価格騒動

地元の人用と外国人用のメニューを分け、外国人には2倍、3倍の値段を請求する。
「持てる者」から多く取るという商習慣は、インドなどの発展途上国にはよくある光景だった。

しかし、こうした「途上国のような光景」がいま、日本で現実のものとなっている。
最近、大阪のラーメン店が、外国人観光客には日本人の約2倍の料金を請求し、それに気づいた外国人が怒りだすという事件が発生。

その店の券売機には日本語と英語の画面があり、日本語のラーメンは約1000円、英語では2000円に設定されていた。ある外国人がその差に気づき、返金を求めて警察を呼ぶほどのトラブルになったのだ。

このニュースを見て、ネット上では日本の衰退を感じる人がチラホラいた。

・日本人1200円、外国人1200ドルで良いんだが
・円安で日本人はビンボーになったもんな
・ボッタクリ過ぎなのでは?
多くても2割増しくらいにしとけば
・外人は2万、日本人は来店禁止
もうこれでいいよ
・観光客ナメすぎってイタリアボッタクリ店に憤慨してたあの頃が懐かしい

インドとは違う日本の「二重価格」

これだけを見ると、あのインドのボッタクリ店と変わらない。
しかし、店側の説明では、日本人と外国人で分けているのではなく、「日本語が分かる人とそうでない人」で区別しているため、差別ではないという。
また、英語のメニューには、(おそらく外国人用に)味やや具材も違うものになっている。
店側は二重価格を認めているが、券売機にはその説明を書いてあるという。
もしこうした配慮がしっかりされているのなら、インドのぼったくりレストランとは事情が違う。

それに今回の場合は、客側にも問題がありそうだ。
トラブルになった客は、外国人用の特別メニューを食べ終わったあとに文句を言い、差額を返せと要求し始めたという。店がそれを拒否すると、客が激怒した。
店側が「警察を呼びます」と言うと、客は謝罪したというから、この客の方に大きな非がありそうだ。

これまで日本は「おもてなし」を掲げ、正直で誠実なビジネスを美徳としてきた。そんな日本で、ボッタクリと受け取られかねない二重価格が登場し始めている。
姫路城では、外国人料金を日本人の4倍にする案が出たが、さまざまな理由で見送られた。

日本の給料はほとんど上がらない一方で、アジア諸国は経済成長を続け、賃金が上昇している。さらに円安が加わったせいで、日本の物価は外国人から見ると驚くほど安く、日本は「おトクな国」になりつつある。冷酷に言うなら「狩り場」だ。
とはいえ、日本は露骨に外国人をだます「安っぽい国」にはなっていない。

日本は「途上国」へ向かうのか、それとも陽はまた昇るか

30年ほど前、日本人は世界で「お金持ち」として振る舞っていた。しかし、国際社会の中での立ち位置は下がり、今ではかつて「途上国」と呼んでいた国に近づいている。
「外国人=金持ち」という認識が国内で広がっているのは、日本が他国に比べて相対的に「貧しくなっている」という厳しい現実の表れだ。それが「外国人料金(二重価格)」という具体的な形となって現れた。

どんな愛国者でも、日本の国力が落ちていることは否定できないだろう。
円安の影響も大きいが、それだけが理由であるはずがない。
2、30年前、日本のラーメン屋で外国人料金をめぐってトラブルが起きるなんて、夢にも思わなかった。 外国人料金で得た利益をテコにして、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と呼ばれた強い日本が戻ってくることを願う。

 

 

外国人から見た不思議の国・日本 「目次」

東南アジアを知りましょ! 「目次」 ②

そうだったのか!旅人の敵「外国人料金」の理由 in カンボジア

タイで日本人が感じる不満・外国人料金、やっと廃止へ前進

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この記事を書いた人

今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。
また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。

コメント

コメント一覧 (2件)

  • いつも楽しくかつ感心させられながら拝読しております。
    私は北海道在住の菊池と申します。
    ともやんさんの文章は共感させられるものも多いのですが、たまに「あれ?」と感じさせられるものもあります。
    今回の「日本が安い国になった……」という文章も、私としては二重価格問題は日本が相対的に貧しくなったためではなく、オーバーツーリズム対策だと認識していたので、これはどうかなと感じましたので、とりあえずAIに聞いてみました。いささか長くなりましたがその回答を以下にご紹介します。
    (以下AIの回答)
    制度設計の観点から見てもかなり筋が通っています。
    「二重価格=日本が貧しくなった証拠」という単線的な説明は、構造的に粗い。むしろ近年の日本で起きている“制度としての二重価格”は、**オーバーツーリズム対策としての合理的な価格差別(price discrimination)**という側面の方が強い、と考える方が整合的です。
    以下、論点を整理してみます。

    1. 国レベルで二重価格が議論される背景は“貧困化”ではなく、観光客の過剰集中
    近年の日本で議論されている二重価格の多くは、次のような文脈で登場しています。
    • 京都・鎌倉・富士山などでの観光客過多
    • 地元住民の生活圧迫(交通混雑・騒音・ゴミ・マナー問題)
    • 文化財の維持費の増大
    • 円安による外国人観光客の急増(2023〜2024年は過去最高水準)
    つまり、**「外国人=金持ちだから取れるだけ取る」ではなく、「観光負荷を価格で調整する」**という政策的発想が中心です。
    これは世界中の観光都市が採用している手法で、典型例は以下。
    • ベネチア:日帰り観光客に入市税
    • バルセロナ:観光税の大幅引き上げ
    • ハワイ:自然保護区の入場料を州外者にのみ課金
    • アメリカ国立公園:州民と州外者で料金差
    これらは「貧困化」とは無関係で、観光資源の保護と住民生活の維持が目的です。

    2. 日本の“国レベルの二重価格”の典型例は、むしろ制度的に正当化されている
    例として挙げられるのは:
    • 富士山の入山料(外国人に高めの設定案)
    • 姫路城の外国人料金案
    • 国立博物館の外国人料金検討
    • 京都市の宿泊税引き上げ議論
    これらはすべて「観光負荷の調整」「文化財維持費の確保」が理由として明示されています。
    「日本が貧しくなったから外国人から搾り取る」という説明は、制度的根拠が弱い。
    むしろ、
    “観光客が多すぎて、現行制度では維持できない”
    という制度的限界が先にある。

    3. 途上国型の“ぼったくり二重価格”とは構造が違う
    ブログで紹介されていたインドの例は、典型的な「非公式・非制度的な二重価格」です。
    • 店が勝手に外国人を高くする
    • 説明なし
    • メニューを隠す
    • 価格差が極端(数倍〜数十倍)
    一方、日本のケースは:
    • 行政が制度として議論
    • 価格差の理由を明示
    • 文化財保護や混雑緩和が目的
    • 価格差は数割〜数倍程度
    つまり、制度設計の透明性・目的・正当性がまったく違う。
    「日本が相対的に貧しくなったから二重価格が出てきた」という説明は、制度的整合性が弱い。

    4. “相対的な貧困化”は背景要因として存在するが、直接原因ではない
    もちろん、円安や賃金停滞が「外国人にとって日本が安すぎる」という状況を生み、
    観光客が爆発的に増えた
    という点では、間接的に影響しています。
    しかし、二重価格の導入理由はあくまで:
    • 観光客の急増
    • 文化財維持費の不足
    • 地元住民の生活圧迫
    • 観光資源の持続可能性
    であり、
    「日本が貧しくなったから外国人から搾取する」という構造ではない。

    5. 制度設計の観点からの結論

    ✔ 日本の二重価格は「途上国型の搾取」ではなく
    ✔ 「観光負荷の調整」と「文化財維持費の確保」という政策的手段
    ✔ 背景に“相対的な物価差”はあるが、直接原因ではない
    ✔ 国の貧困化を示す指標として二重価格を使うのは論理的に飛躍がある
    制度設計の観点から見ても、
    “オーバーツーリズム対策”としての二重価格
    という説明の方が、圧倒的に整合的です。
    (ここまでがAIの回答)

    AIもたまに間違えますし、私の質問の仕方の問題もあるかもしれませんが、私と同じような疑問を感じた読者もおられると思いましたので参考までにお伝えしました。
    今後もともやんさんのますますのご活躍を期待しております。

  • >今後もともやんさんのますますのご活躍を期待しております。

    おお〜、これは心温まるメッセージをありがとうございます。
    今回ラーメン店の二重価格のニュースを知って、インドのレストランを思い出しました。個人的には、その体験と重なる部分が多いので、それをベースに記事をつくりました。
    2〜30年前と比べると、今の日本には経済的な勢いが感じられません。当時は、日本に外国人価格が登場するとは思っていなかったので、「日本が安い国になった」と書きました。まぁ誇張表現かもしれませんが。

    なお、年のために名前はこちらで消させもらいました。

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