日中の文化の違い|洗濯物の干し方・勤勉の象徴・『のらくろ』はNG

先月、静岡に住んでいるインド人・パキスタン人・中国人とハイキングをしながら色々な話をしたので、それをまとめて記事にした。

日本に住む中国人の話|スマホと国民性・自然観の違い・「梟」の字

今回もこのとき中国人から聞いた話を中心に書いていこう。

目次

洗濯物の干し方からわかる「プライバシー」の違い

 

道を歩いていると、家の前に上着やズボンなどの洗濯物が干してあった。
日本のどこにでもある景色を見て、インド人がこんな話をする。

「前にドイツ人の留学生から、ドイツではああやって洗濯物を外に干さないと聞きました。理由は2つあります。
インドより日照時間が短いことと、欧米には他人に私的なものを見せるのを“はしたない”と考える文化があるから、ということでした。」

※あとで調べたところ、アメリカやヨーロッパ北部の国では洗濯物を屋内に干すことが多く、日当たりが良い南部のスペインやイタリアなどでは屋外で干すことも一般的らしい。
地域差があるから、「欧米」という主語は大きすぎる。

 

ーーインド人はそう言っているけど、中国では逆で、洗濯物を堂々と外に干しているよね?
前に中国を旅行したとき、たくさんの外国人観光客がいる観光地でも、集合住宅の窓から棒が突き出ていて、女性用の真っ赤な下着が干してあったから驚いた!

中:それは新妻のものか、厄除けのためですね。
街を歩いていると水滴が落ちてきたから『雨か?』と思って見上げると、洗濯物だったなんてこともあります。

ーー生々しい情報をありがとう。
それが下着だったら、日本人なら気が狂いそうだな。

日本人も中国人も洗濯物を外で干す習慣がある。
衣類を自然乾燥させて、太陽光で殺菌する考え方では一致しているけど、ある『一線』を超えると、やはり文化や感覚の違いが出てくる。

中:中国人は大国らしく堂々としていて、日本人は控えめですね。

ーーそう。
プライバシーって中国語で「隐私」って書くけど、まったく隠そうとしない!

中国と日本ではプライバシーの概念が根本的に違うと思う。

中:「まったく」は言い過ぎですよ。
隠すべきものはちゃんと隠しています。

ーー 賄賂とか?

中: それはプライバシーとは言いません!
私事を隠すレベルが「欧米<日本<<<中国」という順でオープンになっているんです。

ーーだから、街中に監視カメラがあっても市民はあまり気にしない。

中:それも別の問題ですね。

 

※ 2015年、タイの国際空港のロビーで、中国人女性がピンクと黒の下着を背もたれに置いて「乾かしていた」という事案が発生した。
彼女は洗面所で自分の下着を手洗いしたらしい。

これにタイ人が「ありえないマナー違反だ!」と反発すると、中国のネットユーザーも「中国人と決めつけるな!」と怒って泥仕合になった。

消去法で考えると、タイ人の推理が正しいと思うのだけど…。

 

中国や台湾でありそうな街の風景

 

ハイキングの途中に小学校の跡地があって、懐かしい二宮金次郎の像を見た。

日本と中国の「勤勉」を体現する偉人

ーー 薪を背負いながら本を読んでいるこの少年は「二宮金次郎」といって、日本人が大切にしている「勤勉・努力・真面目」の価値観を体現しているんだ。

中:へ〜、それは立派ですね。

ーー 彼は江戸時代の人物で、苦学の末に小田原藩の財政改革を成功させた偉人だ。
昔は小学校の校庭に銅像があったけど、今は少なくなった。「歩きスマホを助長する」といった批判が出てね。

中:もう「言いがかり」じゃないですか。

ーー 学校は「外圧」に弱いから。
中国にも二宮金次郎みたいな人物はいる?

中:いますよ。
朱 買臣(しゅ ばいしん)といって、約2000年前の前漢の時代の人です。
彼は学ぶことが好きで熱心に勉学に励んでいましたが、とても貧しかったので妻に離婚されました。

ーーいい伏線だ。

中: でも、あるとき皇帝(武帝)に才能を認められたことがきっかけで、朱買臣は丞相(皇帝の補佐役)にまで大出世したんです。

ーー 「上昇幅」が二宮金次郎より大きい!

中: とはいえ、最後は皇帝に殺されてしまうんですけどね。

ーー 中国史に出てくる偉人は、そういう「鬱アニメ」みたいな終わり方が多くないか?

 

インドと中国と『のらくろ』

ハイキングの途中、インド人が休憩所にあった募金箱(上)を見て、

「あっ! このキャラクターを知っています。昔、アニメで見ました」

と懐かしそうに言う。
インドで『のらくろ』が放送されていたというのは初耳だ。
でも、ほかのインド人は知らなかったから、一部地域で放送されていたのかもしれない。

 

ーー 君はこのアニメを知ってる?

中: いいえ。私は日本のアニメは好きですけど、このキャラクターは初めて見ました。

ーーだろうねえ。
これは『のらくろ』っていうんだけど、インドではOKでも、中国では放送できないアニメだから。

中: そうなんですか。

ーー 国によって価値観や文化が違うから、A国では良かった放送がB国では禁止されることはよくある。
ロシアでは日本の「異世界アニメ」が放送できない、みたいな。

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中国はそうした規制がとくに厳しい。
UFOのテレビ番組はよくて、心霊ものはダメっていう基準は日本人にはよく分からない。

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ーー 中国ではどんな表現や内容がヤバい?

中: 日本のアニメでありがちな、過激な性的表現や残酷な暴力シーンは放送できませんね。

ーー 日本の「表現の自由」の高さは世界トップレベルにあるから。
アメリカや韓国でも、日本のアニメやドラマをそのまま放送することができないから、モザイク処理しないといけないくらい。

中: 中国では、政治的なメッセージが含まれる内容もNGです。
簡単にいえば、共産党の価値観に合わないものはすべて放送することができません。

※具体例として『寄生獣』、『東京喰種トーキョーグール』、『ソードアート・オンライン』、『進撃の巨人』、『DEATH NOTE』などがある。

 

中国のホテルで見た「抗日神劇」

中国で『のらくろ』が放送できない理由

ーー 「中国の表現規制は日本よりめちゃ厳しい」ということを確認したところで、話を『のらくろ』に戻そう。
このマンガは1931年に雑誌で連載がはじまったんだ。
同じ年、中国では何が起きた?

中: 柳条湖事件が発生しました。

ーー そう。日中で軍事衝突が起きて、それが日中戦争(1937年〜)につながった。
日本は1931年から本格的な軍国主義に突き進んでいったから、このマンガにはそんな時代の空気が濃く反映されているわけだ。

中:不吉な予感しかしませんね。

ーー 『のらくろ』は黒い犬で、大日本帝国陸軍をモデルにした部隊(猛犬聯隊)の兵士という設定だから、見た目は日本軍と基本的に同じだ。
日本軍の軍服を着て、三八式歩兵銃や軍刀を持っている。

中:それはマズいですね。
中国では、むしろその「逆」が奨励されます。
悪逆非道な日本兵を正義の中国人がやっつける「抗日神劇」は、共産党の考え方に100%フィットしているので、昔から人気があって、今でも放送されています。

 

『のらくろ』のワンシーン。
動画は“ココ”で見ることができる。

 

ーー 『のらくろ』には、豚勝(トンカツ)将軍が支配する「豚の国」が出てきて、そこの国民は「〜ある」「〜よろし」としゃべっている。
申し訳ないが、「豚の国」のモデルは中国だ。

中: 最低ですね。

ーー 日本兵をイメージした『のらくろ』たちが、ズルくて弱い豚の兵隊と戦って打ち負かすという内容だ。

中:最悪ですね。

ーー戦前の日本はそういう空気だったんだよ。
『のらくろ』は日中戦争をマンガで表現したようなもので、日本では1930年代に映画館でアニメが上映されていた。

中:そんな作品を現代の中国で放送できるワケがありません。

ーー だろ?
インドと中国は戦後に何度か紛争を起こしていて、現在のインドでは中国に対する見方は厳しい。『のらくろ』のどの内容が放送されていたか分からないけど、「中国と戦う」という設定はインドではきっとウケがいい。

中: そうなんですかね。
とにかく、軍国主義時代にあった中国と戦うアニメなんて、現代の中国では天地がひっくり返っても放送されません。

ーー 中国共産党はそのテーマには超敏感だから、「紀元」なんて書いてあった二宮金次郎もダメかもね。

 

 

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この記事を書いた人

今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。
また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。

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