【日韓関係】ナンダカンダで日本が、韓国に譲歩した結果は?

 

いまから一週間ほど前、韓国の全国紙・中央日報のがこんな記事を載せた。(2019年05月23日)

日本の関係復元動きに韓国も肯定的対応を

戦後最悪といわれる、いまの日韓関係を韓国はとても心配している、という言い方は正しいけれど間違っている。
韓国が不安なのは関係そのものよりも、日本による経済制裁だから。

いま徴用工訴訟の原告側が日本企業の財産の現金化を進めている。
自国企業の財産が不当に奪われたとしたら、これは一線を越えたことになるから、日本政府は何らかの制裁に踏み切るはずだ。
「遺憾砲」をぶっ放すだけでは済まなくなる。

 

日本の制裁が現実的になったことで、韓国はあせりだし、なんとか日本との関係を改善させたいと思っているが、メンツやプライドにかかわることだから、自分たちから先にそれを言い出すことはむずかしい。
そんな隣国に配慮したのか、岩屋防衛大臣が口を開いた。

日本の外交イニシアチブが突然活発になった。岩屋毅防衛相が韓国との関係を「元に戻したい」と話した提案を歓迎する。韓国海軍哨戒機のレーダー照射論争解決への糸口として生かすべきだ。

日本の関係復元動きに韓国も肯定的対応を

 

「元に戻したい」

日本からこの言葉を言うのを待っていた中央日報は、韓国政府も肯定的対応をするべきだと主張する。

ここにある「提案」とは、一週間後にシンガポールで開かれる国際会議で岩屋防衛大臣が韓国の鄭景斗(チョン・ギョンドゥ)国防相と会談することをさす。
きょねん12月、韓国海軍が自衛隊機に射撃用レーダーを照射したことが原因で、日本と韓国の防衛面での交流が事実上、ストップしている。
韓国側が事実を認めて、一言謝罪したらこの件は終了だったらしいのだけど、韓国は日本に頭を下げることができなかった。
それどころか日本に対して、「自衛隊機が低空の威嚇飛行をした」と主張して逆に謝罪を要求する。
韓国側と話し合ってわかったことは、「いまの韓国とは話し合いで問題を解決することはできない」ということ。
だから日本はそれ以後、韓国を相手にしないようになる。

こういう背景があったから、岩屋防衛相の言葉に韓国側は飛びついたワケなんだが、これは果たして日本にとっていいことなのか?という不安がある。

でも、日本政府や防衛省も同じく心配になったのか、一度この話は流れてしまう。
日本は中国とは会談をおこなうけど、韓国とは「時期尚早」と判断したから、中央日報が今度は恨めしそうな記事を載せる。(2019年05月29日)

日本、韓国とはしないのに…中国とは防衛相会談を推進

「私とは会わないのに、あの人と会うなんて…」って、女子高生のメンタルじゃないんだから。
でもそれが功を奏したのか、直前で日本は韓国とも防衛会談をすることにした。

で、日本が韓国に譲歩した結果はどうだったのか?

 

 

きのう6月1日、シンガポールで岩屋防衛大臣と鄭(チョン)国防相が30分ほど非公式で会談をおこなった。

TBSニュース(2019/0602)

日韓防衛相“レーダー照射”後初の非公式会談、問題を事実上棚上げ

このとき岩屋大臣はレーダー照射問題を持ち出したのだけど、韓国側は謝罪はもちろん、事実の認定すら拒否。
「どちらかが譲って答えが出てくるのかというと、ちょっとそういう状況ではない」という理由で、岩屋大臣は韓国に配慮して、この問題についてはもう韓国に説明や謝罪を求めることはしないという。
岩屋大臣は「未来志向の日韓防衛当局間の関係を作っていくため一歩前に踏み出したい」と強調。
結局、韓国側は謝罪も事実認定もしないで、「未来志向の韓日関係」を手に入れることができたワケだ。
日本のネットでは当然、非難ごうごうだ。

 

この会談を韓国の視点から見てみよう。
これは中央日報の記事(2019年06月02日)。

哨戒機問題後初の韓日国防相会談…日本は謝罪の代わりに不満だけ話す

あちらはあちらで、日本批判を展開している。
「低空威嚇飛行の事実を認めなかった」と日本の不誠実を非難し、「日本が依然として哨戒機問題に対し責任はないという主張を繰り返している」ために韓日関係の信頼は完全に回復していないという。

レーダー照射問題については、韓国の鄭(チョン)国防相が岩屋防衛相に「明白な事実無根であることを説明した」という。
さらに法を守っていた日本側に「国際法の順守を強調した」というのだから、言葉が出てこない。
ボクの不安は的中してしまったらしい。

もちろん、「未来志向の韓日関係」については鄭国防相も同意している。
それでも韓国は日本に対して2つ不満があるらしい。
まずひとつは、「今回の問題の原因を認めない日本が後からまた異なる話をしかねないという懸念の声も少なくない」ということ。
また韓国軍の関係者は、「最小でも遺憾水準で日本の立場を取り付けられなかったのは残念」と話したという。
これがタイトルの「日本は謝罪の代わりに不満だけ話す」になる。

なるほど、だがマテ。
法を守って飛んでいた自衛隊機に、韓国軍がレーダーを照射して始まったのが今回の一件だ。
それなのに韓国は日本に謝罪をさせたかったと。
最低でも日本に「遺憾」と言わせたかったのだけど、今回の会談ではそれすらできなかったことが「残念」だったという。
いつの間にか、立場が逆転してないか?

日本が「関係復元の動きに韓国も肯定的対応を!」と動いた結果、「日本は謝罪もしなかった」と文句を言われてしまった。
そんな会談について、日本のネット民の反応は?

・おーい、いつの間にか日本が加害者になっとる
・ほらみろ。非公式でも会談をすれば、このように利用される。
・小野寺さん再登板でお願いします。
岩屋さんの対応は納得行きません。
・本当馬鹿げてる
こうやって歴代の政権が韓国を甘やかした
・ほーら、ちょうと譲歩するとこうなる

今回の件で成果があったとしたら、今月おこなわれるG20で、安倍首相と文大統領の会談が”なくなった”ことぐらいか。
いまのままなら、首脳会談なんてしないほうがいい。

 

おまけに書いておくと、「日本は韓国に対して譲歩してならない」ということはノンフィクション作家の門田隆将氏も書いている。
産経新聞の加藤前ソウル支局長が2014年、大統領の名誉をき損したということで、ソウル中央地検から在宅起訴された。
でも加藤前支局長はいろいろな圧迫に負けず、裁判で戦い続けた結果、無罪を勝ち取った。
その教訓から門田氏は、韓国に「譲歩」では何も生まれないことを日本人は知るべきだと提言する。
韓国がいまのままなら、日本は「戦略的無視」を続けるしかない。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。