【正義の味方より】コロナ禍ではびこる、独善・ど迷惑な日本人

 

ことしの正月、医科大学で働いている優秀な知人と会って、彼の仕事についてアレコレ話を聞いていると「ちょっと困ったことがある」と言いだす。

彼の大学では動物実験をしていてキャンパス内には、人間の命のために尊い犠牲となった動物たちを追悼する慰霊碑がある。
それで最近、動物愛護の声が高まっているせいか、「おまえたちのしていることは人殺しと変わらない。すぐに実験をやめろ」という電話があった。
先輩の話ではこういう電話が10年ぐらい前から、ごくマレにくるようになったという。

きのうの記事でチラリと書いたのだけど、自分のしていることが悪いことと気づいている場合は、罪悪感や後ろめたさがブレーキとなるから他人に迷惑をかけることは少ない。
でもその自覚がないどころか、自分のしていることが正義と思い込んでしまうと、まともな判断力がなくなる。結果、正しい動機からうまれる悪事は、かなりタチが悪い。

2002年に大学へ不法侵入して実験用の犬を盗み出し、窃盗と建造物侵入の疑いで逮捕された動物愛好家はその好例。
命を救い出す!という正義の自分に心酔した被告に対し裁判官は、「研究者が真摯に研究を続けている大学に、独善的な考えで動物実験反対を唱え侵入したことは建造物不法侵入である」ともっともなことを言う。

その詳細はここで確認されたし。

ストップ・ハンティンドン・アニマル・クルエルティの事件 

 

正義を自称する人間は独善的になりがちだ。

きょねんはコロナの感染拡大と一緒に、マスクをしていない人をどなりつけるマスク警察や、営業している店のドアに「店を閉めろ」といった紙を貼ってまわる自粛警察というド迷惑な人たちが全国に現れた。

これはそんな風潮を非難する毎日新聞の社説(2020年8月25日)

感染した人や家族を非難する声は収まらない。自分の「正義」を振りかざし、マスクをしない人をとがめる「マスク警察」の現象は今も続く。

コロナの時代 つながりの再構築 「お互いさま」を広げたい

 

こんなことを言っていた昨年の夏に比べて、いまでは1日の感染者がとんでもなく増加してヒドイ状況になっている。
それで政府が緊急事態宣言を発令するのは仕方がないし、飲食店には営業時間の短縮を要請するのもやむを得ないが、それを無視した店には店名を公表するというのはいやいやチョットマテ。
これではその店を「公共の敵」として悪者認定するのと同じで、マスク警察や自粛警察など自分で自分を”正義”と祭り上げる人たちのリンチを誘発するのは目に見えている。

これについては産経新聞が言うように「本来は、特措法改正で補償や罰則規定を設けるのが筋」だろう。
実際、まだ店名の公表は始まっていないにもかかわらず、時短要請に応じず営業を続ける東京都内の飲食店には「非国民」、「日本国の恥」、「ただちに営業をやめろ」といった紙が張られる迷惑行為が発生している。情報番組によれば。
こういう嫌がらせをした人間が「正義の味方より」というのだから、この独善はもはや絶望的で救いようがない。

でも、これに対するネットの反応は賛否が半々といったところか。

・発想がムラ社会だな
・仕方ないやろ。他に代案あんのか
・諸刃の剣だよねー
宣伝効果にもなるわけで。
・数が増えりゃ私刑すりゃできないことに気づけよ。
・飲食店居酒屋対策不十分の所が多数、客だけが悪いわけではない。フィフティフィフティだ
・街から人出が全く減ってないから無意味
・要請に応じなければ公表するのは、脅迫罪に抵触しそうだな。
・晒された店の横でコンビニとか普通に営業してる光景が見れるな

 

信頼性の高い情報を「マスゴミの虚偽報道」と片づけて、自分の頭で考えた結果、フェイクニュースを妄信して猛進する日本人が多いことに驚いてきのうこんな記事を書いてみた。

「マスゴミの虚偽報道」と怒るも、真実が見えない日本人

英BBC、米CNN、NHKや朝日・読売新聞など内外の大手メディアの報道より、なんで自分の判断が正しいと思えるのか?
その自信はどこからワイてくるのか?
さっぱりわからないが、負けが確定にしているトランプ大統領が実は勝利し、反対派の米政治家や日本の政治家などが大量に逮捕されるというトンデモ空間に生きている人はけっこういる。
前にこのブログの記事で「コロナ禍」と書いたら、「コロナを本気で信じてる方なんですね。」というコメントがきた。
同じ空間を生きているとは思えない人が現実にいる。

「おまえたちのしていることは人殺しと変わらない」と大学に電話する人間も、マスク警察も自粛警察も本質的には同じ精神構造をしていて、自分こそが正義の味方、真実を知る者と思い込んでいる。
コロナ禍のいま政府がこういう独善を助長するようなことをするのは、「正義の味方より」を野に放つようなものだ。

 

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4 件のコメント

  • コロナ禍に伴う「自粛警察」は、そのうち感染が収束すれば自然消滅するのでしょうが。

    >2002年に大学へ不法侵入して実験用の犬を盗み出し、窃盗と建造物侵入の疑いで逮捕された動物愛好家はその好例。(改行) 命を救い出す!という正義の自分に心酔した被告・・・
    こちらは、ヨーロッパを中心とした動物愛護・環境保護運動の一角であるだけに、ちょっと収まりそうにはありませんね。「クジラを食べるな、犬を食べるな」と主張する欧米の人達と同じ考え方の過激派です。この種の運動は既に20世紀後半から起きていて、その恐ろしさと愚かさは例えば小説「ストロング・メディスン(アーサー・ヘイリー著、1986年)」にも活写されています。

    >英BBC、米CNN、NHKや朝日・読売新聞など内外の大手メディアの報道より、なんで自分の判断が正しいと思えるのか?(改行)その自信はどこからワイてくるのか?
    それはその通りだと思います。大手メディアはプロですから情報の扱いに対してある程度のレベルは保持されている。ある程度の自己修整能力もある。報道情報の正確性はSNSなんかと比較すればずっと高いです。
    ただし、大手メディアの報道にも、間違いや嘘は多い。これまで世の中で広く信じられてきたよりもずっと多いのです。そのことに、SNSなど普及して現場からの直接情報が入手しやすくなったので、多くの人々が気付いてしまった。その結果、既存大手メディアに対する不信感が今は高まっているのだと思います。たとえ大手メディアの報道と言えども鵜呑みにせず、現代では、自分の頭で考えながら情報を消化しなくちゃならない。

    だからと言って、SNS情報なんか信頼する気には私はなれませんけど。それは愚の骨頂だ。

  • たった今、気づいたのですが。
    >【正義の味方より】コロナ禍ではこびる、 → はびこる(蔓延る) の間違いでは?
    少なくとも国語辞典とか見ると、そちらが正しいとされています。語源は知りませんが。
    なお、古い読み方では「ほびこる」というのもあるらしいです。

  • 早速不織布マスクの件で出没している模様で。
    この類のものでは海外のビーガンでしょ。鶏肉製造工場で自分の首を機械につなげたらスイッチを入れられてパニックになった話も。
    ああいう連中は自分達だけで済ませとけばいいのに何を勘違いしているのか他人にまで強要してくる事なので。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。