あるアメリカ人が日本の地方都市から、大都会へ引っ越した。そこで彼を待っていたのは、日本の通勤ラッシュだった。
しかし、満員電車は肉体的な苦痛だけでなく、「精神的な恐怖」もあることを知った。それは、アメリカではまったく聞いたことがない不条理なものだった。
浜松から東京へ。ビジネスパーソンを襲う満員電車の衝撃
知人のアメリカ人男性は以前、浜松市内の学校で英語を教えていて、いまは東京でビジネスマン、おっとビジネスパーソンをしている。久しぶりに彼と会ったとき、東京での新生活について不満を聞いたら、「電車通勤だね。あれは地獄だ」とのこと。
彼が浜松にいたころ、自転車で学校へ行くことはとても気持ちよく、楽しみのひとつになっていた。だから、東京の朝の満員電車は、その光景を見ただけで窒息しそうな気がした。
そしていまだに、これだけには慣れることができない。
東京の鉄道網は世界屈指の利便性を誇るが、その一方で、朝のピーク時の混雑率は100%を軽く超え、乗客が押し込められるような状態が続く。
この異常な「密着空間」は単に乗客を疲労させるだけでなく、別の大きなリスクが潜んでいることを彼は同僚から教わった。
「痛勤電車」で突きつけられた、痴漢冤罪という新たなリスク
ある日、職場の同僚と「痛勤電車」の話をしていると、「おまえ、これにはマジで気を付けろよ」と痴漢の冤罪(えんざい)について聞かされた。満員電車と痴漢については聞いたことがあったけれど、この問題は初耳で驚いたという。
何もしてもいないのに、「この人です!」と女性に言われ、男性が犯人にされてしまう事件が実際に起きている。
日本では一度逮捕されると、有罪になる確率がとても高いといわれている。だから、無実を証明することは並大抵のことではない。
彼は毎朝、満員電車に揺られながら通勤しているが、そこに自分の人生やキャリアを破壊しかねないリスクが潜んでいることは、まったく想像していなかった。
裁判で勝ち取った無罪。しかし失われた時間は戻らない
しかし、それは現実だ。きのう読売新聞にこんな記事があった(2021年4月13日)。
痴漢で起訴された男性に無罪判決 「別人の可能性を払拭できない」
女性の胸を触ったとして40歳代の男性が東京都迷惑防止条例違反に問われたものの、「被害女性が別人と取り違えた可能性を払拭できない」と東京地裁は無罪を言い渡す。
有罪だった場合に払う、罰金30万円はそれほど大きな額ではない。
それよりも、2019年からずっと無実を主張してきた男性の精神的苦痛のほうがはるかに大きいはずだ。しかも彼はきょねん在宅起訴されている。
ちなみに被害を訴えた女性は「犯人から目を離していない」と話し、池袋駅で降りるときに男性のカバンをつかんだと説明したという。
この事件に世の男たちの感想は?
・痴漢冤罪でも千回に一回は無罪を勝ち取れるんだな、裁判で失った時間は戻ってこないが
・どうせ高裁で覆る
・で、冤罪の男性が逆襲の民事訴訟をやると、これまた負ける
・触ってきた手に画鋲か安全ピン差しこんでおけば
・カバンつかむより、手を引っ掻けばよかったね。
皮膚のDNA検査でハッキリしたのに。
平井駅の事件が浮き彫りにした「無実の証言」の軽さ
痴漢に対して女性は非力で、冤罪に対して男性は無力だ。
2017年には総武線平井駅で、痴漢被害を主張する女性がある男性を犯人扱いし、殴る蹴るの暴行を加えたうえ、非常停止ボタンを押してさらに警察へ通報するという事件が発生した。
このとき車内の目撃者は、男性は片手でスマートフォンを操作してもう一方の手で吊革をつかんでいたから、「痴漢冤罪だ」「男性は無実」と証言した。それにもかかわらず、駆け付けた警察官は男性を電車から下ろして警察署(交番?)へ連行。
結果的には無罪となったが、当時のネットでは「女性に叫ばれたら、男が何を言っても無駄」という無力感がただよった。
平井駅の痴漢の案件で分かったこと
車内に100人のって超満員と仮定する
疑われた人を含め99人が無罪を主張
1人が痴漢を主張
痴漢を主張した人が疑われた人を殴る蹴るする
↓
最終結果警察はどんなに無罪主張多数でも痴漢したと主張したひとを最優先し疑われた人を逮捕する
— ト口リン (@toro_6437) June 3, 2017
平井駅の冤罪まとめ見たけど、周りの乗客が冤罪だと言ってるし証人もいるのに警察に強制執行されて連行されるのであれば、線路下りてでも逃げるしかないって結論になるよな。こういう所から改善しろやと。加計とかよりこっちを国会で議論すべきでしょ
— じょえ (@joe_turboR) June 2, 2017
アメリカ人が見た日本の今
話を東京のアメリカ人に戻そう。
彼は同僚の男性だけでなく、知り合った女性からも同じことを言われた。一度痴漢の疑いをかけられたら、かなり面倒なことになる。特に彼のように、日本語が母国語でない場合、うまく状況を説明できずに大きなトラブルになりかねない。
だから電車の中にいるときは両腕を挙げて「やってませんアピール」をしたほうがいい、というアドバイスを彼は得た。
「バカげている! 常に両手を挙げてる状態なんて、まるでいつも銃を突きつけられているようなものじゃないか」と彼は不満を言うが、実際、そんな緊張感を感じる乗客はいるだろう。
彼としては、自転車通勤していた浜松での日々がたまらなくなつかしい。
彼がアメリカに住んでいたときには、痴漢と冤罪なんて聞いたことがなかった。
*アメリカでそうした行為が一切ない、というわけでもない。
だから、母国の家族や友人に話しても、日本の満員電車の「恐ろしさ」がなかなか伝わらないらしい。
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コメント
コメント一覧 (1件)
東京の通勤ラッシュの電車では無理かもしれませんが、そこまで混まない電車であれば、最近は、スマホやタブレットを両手で操作していることによって、痴漢冤罪被害を避けるようになってきているみたいですよ。そういう考え方もありでしょうね。