【韓国あるある】国際常識と国民情緒の板ばさみで苦しむ大臣

韓国でいま大騒ぎになっている、日本による原発処理水の海洋放出。
放射性物質が含まれている水を、海に流していいのかどうか？

この問題は国際原子力機関（ＩＡＥＡ）のグロッシ事務局長が、

「技術的に実行可能で、国際慣行に沿う」
「日本政府の発表を歓迎する」

と日本を支持した時点で終了している。
世界で最高の権威と知識のある国際機関がOKを出したのから、日本は国際基準を守りながら放出すればいい。
「国際慣行に沿う」とあるように、そもそもこれは韓国の原発を含め世界の国が行っている処理法なのだから。

でも、そういかないのが隣国さん。
韓国の国民と環境に深刻な被害が出ると文大統領は、国際海洋法裁判所への提訴を視野に入れると国内にアピール。
きょねん韓国政府のタスクフォースが、日本の処理水放出について「問題ない」と公表しているにもかかわらず。
政府やメディアが反日感情をあおるから、それに呼応する国民が出てくるのは当たり前。

ハンギョレ新聞の記事（2021-04-20）

忠清南道「“放射能倭乱”に立ち向かう」…汚染水の海洋放出決定を糾弾

「倭」とは日本への侮辱語。
匿名でネットに書き込むならまだしも、公の場で使っていい言葉ではない。という常識や配慮が通じる相手じゃなさそう。

忠清南道の住民が日本の対応を「韓国国民、全世界人類に対する核攻撃と同じ破滅的行為と規定する」と訴えて、直ちに撤回するよう要求したという。

国際原子力機関が認めた安全な措置が、韓国の国民情緒的には「核攻撃」になってしまう。そういや「核テロ」と表現した市民団体もあったっけ。

こうなると「国際慣行に沿う」という国際常識と国民感情との間で、板挟みとなる人間はひたすら苦しい思いをするしかない。
いまの犠牲者はチョン・ウィヨン外交部長官（外務大臣）だ。

聯合ニュースの記事（2021/04/20）

海洋放出巡る発言で与党も外相叱責「国民の情緒と違う」＝韓国国会

日本について、「国際原子力機関（ＩＡＥＡ）の基準に合う適合な手続きに従うならあえて反対しない」と述べたチョン長官は十字砲火をあびて火だるまになった。
これを聞いた同じ与党のイ・サンミン議員は「国民の情緒や要求と違い、混線を招く憂慮がある」と批判し、同じく与党のイ・ジェジョン議員は「日本の汚染水放出を防げないということを前提とし、無気力に対応した」とチョン長官を責め立てる。

「国民の情緒と違う」なんて理由が、国際舞台の場で通用するはずない。
外務大臣は国際社会の目を意識しないといけないし、国民の反日感情に迎合すればいいだけのお気楽な立場とは違う。
国内の「全世界人類に対する核攻撃」と、ＩＡＥＡの「日本政府の発表を歓迎する」の意見の間に挟まれたチョン外相としては、条件付きで「反対しない」と言うのがやっとのはずだ。

なんだろうこのデジャブ（既視感）。
最近どっかで見たような？
と思ったら2018年にもそんなことがあった。

このとき韓国は観艦式を主催し、海上自衛隊を招待していた。が旭日旗を掲げた艦船が参加するとわかって、国民が大反発して大騒ぎとなる。
といってもこれは世界が認める当たり前で、このあと中国が行った観艦式では、旭日旗を掲げた自衛隊の艦船が問題なく参加できている。
という理屈は通じず、韓国内で「戦犯旗」が翻るなんて国民感情が許さない。
これについて韓国の国会で質問された国防部長官（防衛大臣）は、「日本は参加することになっていて、国際慣例に従うほかない」と苦しそうに言う。

中央日報の記事（2018.10.02）

韓国国防部長官、旭日旗問題に「国際慣例に従うほかない事案」

「国民の情緒と違う」という理由で、国防部長官が国際慣例を否定するわけにはいかない。
国内と世界で常識がひっくり返ると、その狭間にいる人はいつも胃の痛む思いをする。
韓国あるあるのひとつだ。

大臣という立場ではないけど、国内の反日と世界の常識がぶつかって苦しむ人は他にもいる。

毎日新聞の記事（2021/04/20）

慰安婦訴訟ソウル中央地裁、原告側に日本資産差し押さえの懸念指摘

訴訟で「勝利」した原告側が、韓国内にある日本政府の資産を差し押さえるのは「国際法に違反する恐れがある」と韓国のソウル中央地裁が指摘した。
これは明らかに一線を超えているから、釘をさしたことになる。
といってもこれで、原告側が何も手に入れずに諦めるとは思えないし、国民感情という正義を前面に出して何らかの行動を起こすと思われ。
本当は政府が動くべきだけど、文政権が慰安婦訴訟で日本や国際法の側に立つことはないでしょ。