【忍者(NINJA)】日本人とアメリカ人のイメージ・使われ方

 

きのう10月10日、日本一の忍者を決める「第38回全日本忍者選手権大会」が滋賀県の甲賀市で開催された。
16歳~64歳までの84人の忍者(自称)が手裏剣投げや城壁登り、水上走りなどの種目に挑戦して2021年度の日本最高のニンジャが決まったらしい。

ミャンマーではクーデターが発生して、マダガスカルでは前代未聞レベルの食糧難が起きているけど、日本はきょうも平和だった。

 

 

忍者については一か月前にこんな国際会議が開かれた。

中日新聞の記事(2021年9月12日)

忍者研究、多角的な視点で オンラインで国際学会、専門家ら成果披露

国内外の忍者の研究者らで構成される「国際忍者学会」の第四回甲賀大会が行われ、戦国・江戸時代の忍者をテーマにして「専門家や忍者の子孫らが多角的な視点で研究成果を発表した」という。

忍者発祥の地・日本ではこんなふうに話題集めや観光客誘致、またはガチの歴史学習で忍者が取り上げられることが多い。
アメリカではどうなのか?

 

日本で「国際忍者学会」が開かれたころ、アメリカのカリフォルニア州ではニンジャ(の格好をした人物)が陸軍の特殊部隊を襲撃した。
これは映画の撮影ではなくてリアルで。
9月18日の深夜、タバコを吸っていた軍曹に忍者姿の男が人物が近づいて、「私が誰かわかりますか?」と声をかける。
軍曹と少し言葉を交わしたニンジャはいきなり刀で斬りかかったから、軍曹は管理棟へ逃走し、そこにいた大尉がドアに鍵をかけて警察に通報。
ニンジャは建物に近づいてくると、ドアや窓を蹴ったり叩いたりしたあとに姿を消した。と思ったら、また戻ってきてアスファルトの塊を窓に投げ込んだという。

この忍者襲撃を伝える海外メディア(INSIDER)の記事を見ると、忍者や刀はすっかり英語になっていることが分かる。(Oct 2, 2021)

A person dressed as a ninja and wielding a katana attacked special operations soldiers training in California,

Police nabbed a man dressed as a sword-wielding ninja who attacked US special operations soldiers

 

このニンジャはその後、路上を歩いていたところを発見され身柄を拘束された。

これが襲われた建物と犯人が持っていた刀。

 

 

アメリカ陸軍の特殊部隊兵士(special operations soldiers)が、忍者に襲われたというニュースに日本のネット民の反応は?

・忍者vs米軍といえばニンジャウォリアーズだな
・忍者が戦う時は最終手段だ
もっと勉強しろ
・ぜんぜん忍んでない
・翻訳何とかしたら普通に国に家族をさらわれたNINJAの復讐劇に見えなくもない
・軍曹より忍者の方が強いんだな
・あいつら本当忍者好きだよね
・これは陽動で、本物はしっかり機密文書をゲット

 

このまえアメリカ人とご飯を食べに行く機会があったから、このニンジャ襲撃事件について聞いてみた。
「そんな頭のおかしいヤツの考えなんて、誰がしるか」としたうえで彼はこう話す。

マンガ「忍者タートルズ」やハリウッド映画の影響で忍者はアメリカで本当によく知られていて、日本のアイコンとしては一番の人気と知名度がある。
エンペラーを知らない人がいても、忍者を知らないアメリカ人は考えられない。
アメリカでは忍者に対して暗殺者のダークなイメージがあって、黒装束の格好を「カッコイイ」と思う人はとても多い。
アメリカ人はキホン忍者が大好きで、とんでもないクレージーなヤツもいるから、あんな中二病をわずらったようなバカが発生したのだろう。

 

アメリカ映画でニンジャはもう、ひとつのキャラクターとして定着している。

世界中で大ヒットした『G.I.ジョー』シリーズの最新作の舞台は日本で、漆黒の忍者ヒーロー「スネークアイズ」が日本に潜む巨悪を討つという設定だ。
そういや原作の設定では、G.I.ジョーチームはアメリカ軍の特殊部隊だっけ。

2020年に姫路城や岸和田城などで、ハリウッド映画史上最大規模の日本ロケ撮影が行われて、『G.I.ジョー』の世界観と日本古来の暗殺者が融合した忍者バトルアクションエンターテイメントが完成した。

 

 

ここに出てくる威厳のありそうな黒人男性は、忍びの神髄を教える忍術の達人というアメリカンな設定。

実際のところ、「第38回全日本忍者選手権大会」が世界に与える影響はゼロだけど、ハリウッド映画はとんでもないブランド価値を作ってくれる。
これは日本人じゃ無理。
この映画には「小僧寿し」や「どさん子」などが協賛して「漆黒キャンペーン」をするし、岸和田市は岸和田城とのコラボポスターやG.I.ジョーの「ロケ地マップ」を制作した。
アメリカ人が忍者に乗っかって映画をつくり、日本人がそれに乗っかった。

アメリカ人にとって忍者はエンターテインメント作品をより面白くさせる重要キャラで、日本人にとってはやっぱり話題作りに役立つアイテムらしい。

 

 

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。