アメリカの反ドイツ感情 食べ物・犬・病気の名前まで変えた

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英語を「敵性語」として排除した日本

前回の記事では、太平洋戦争中の日本で「英語(敵性語)」が禁止されていたという話を書いた。
アメリカとの戦争が近づくと日本では反米感情が高まり、英語が敵性語として排除された。そして、日本らしい言葉に変更された。
たとえば、タバコのゴールデンバットは「金鵄」になり、野球のストライクは「よし1本」と言い換えられるようになった。

【鬼畜欧米】ゴールデンバット→日本人らしく”金鵄”へ

令和の日本で「圏外」というと、携帯の電波の届かない状態を指すが、反米感情の強かった昭和初期には、野球のファールを「圏外!」とか「だめ!」と言っていた。
こんなバカなことをするのは、世界で日本人ぐらいだ。
…ということはなく、「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」の精神はアメリカ人にもあった。

「総力戦」の幕開け

1914年のきょう7月28日、オーストリア=ハンガリー帝国がセルビアに宣戦布告して第一次世界大戦がぼっ発した。

・協商国(連合国): イギリス、フランス、ロシア、日本、アメリカ(1917年〜)など
・同盟国: ドイツ、オーストリア、オスマン帝国など

近代兵器の導入によって、両陣営の死傷者は合計で約1000万人におよび、この大戦は国家の全資源を注ぎ込む「総力戦」となった。それによって、国民の「意識」の中までもが変えられた。

ハンバーガーは敵?「自由(Liberty)」に塗り替えられた食文化

当時のアメリカでは、敵国ドイツへの憎悪がピークに達し、生活の中にある「ドイツ由来の名称」が次々と改名された。

1. ザワークラウト → 「リバティー・キャベツ(自由のキャベツ)」

ドイツ料理の代名詞だったこの食べ物が、反独感情によって「リバティー・キャベツ(liberty cabbage)」に改名された。ちなみに、ドイツ語でキャベツを指す「Kraut(クラウト)」は、ドイツ人をバカにする侮辱語として使われることもあった。
「あのキャベツ野郎!」みたいな感じで。

2. ハンバーガー → 「リバティー・ステーキ」

「ハンバーガー」も、名前の由来がドイツの都市ハンブルクであることから攻撃の対象になり、「リバティー・サンドイッチ(liberty sandwich)」や「リバティー・ステーキ(liberty steak)」に変更された。(liberty cabbage

ドイツ生まれのアメリカ料理・ハンバーク その歴史や語源

 

徹底的なドイツ排除 犬や王室もターゲットに!

アメリカ人の怒りは、動植物や果ては王室の家名にまで及んだ。

1. ダックスフントは「自由の猟犬」へ

ドイツのシンボルとして親しまれていたダックスフント(アナグマ犬)。

※この言葉は、アナグマを意味するドイツ語のダックス(Dachs)と、犬を意味するフント(Hund)を合わせてつくられた。

一次世界大戦が始まると、この犬の人気はガタ落ちし、飼い主たちはこの犬を「リバティー・ハウンド(自由の猟犬)」と呼ぶこともあった。

As a result, they were often called “liberty hounds” by their owners similar to “liberty cabbage” becoming a term for sauerkraut mostly in North America.

Dachshund・Symbol of Germany

ダックスフントを「自由の小犬(liberty pups)」と呼ぶこともあったらしい。
こうして、アメリカの人たちは無理やりドイツ色を消し去った。

 

巣穴にいるアナグマを捕らえるために、ダックスフント(アナグマ犬)は手足を短く改良された。

イギリス王室の「ウィンザー家」誕生秘話

実はイギリスでも同じことが起きていた。
当時のイギリス国王ジョージ5世は、自身の家名がドイツ系の「サクス=コバーグ=ゴータ」であることを国民がどう思うか、とても危惧していた。
そこで、1917年にイギリス風の「ウィンザー」へと家名を変更。
これが、現在まで続くウィンザー朝の始まりだ。

【反ドイツ感情】英王室がいまのウインザー家に変更したワケ

病名まで「自由」にするセンスの謎

アメリカ人が「反ドイツ」の感情から、ザワークラウトを「自由のキャベツ」、ダックスフンドを「自由の猟犬」に変えたくなった気持ちは理解できる。
ご先祖がファールを「圏外!」に変えたのと同じ気持ちだろう。

でも、これはどうだろう?

当時、アメリカでは、「風疹」(German measle=ドイツ麻疹)という病名から「ドイツ」を削除し、「自由の麻疹(liberty measles)」と呼び変えた。

嫌な病気なら、むしろ敵国の名前を残しておけばいいのに、と個人的には思うのだけど。

まとめ:言葉の背景にある「ナショナリズム」

ナショナリズムや敵国への憎悪が高まると、身近な言葉を言い換える動きが出てくる。
日本の「圏外」やアメリカの「自由のサンドイッチ」はその具体例で、他の国でもあったはずだ。
戦争という異常な状況は人間を非合理的にさせる。
「総力戦」では、民間人が武器を作るだけでなく、人々の「言葉」や「感情」まで統制されるのだ。

 

 

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この記事を書いた人

今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。
また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。

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