暑くて(湿度で)重い夏がやっと消えて、さわやかな秋がやってきた。
散歩をするには絶好のタイミングなので、トロント出身のカナダ人(20代の男性)を連れて「浜名湖ガーデンパーク」へ行ってきて、そこでいろんな話を聞いたから、これからその様子を書いていこう。
コスモスを知らないカナダ人
ーー日本でコスモスは「秋の桜」と書いて、秋のシンボルになっている。カナダでもそう?
「コスモス」って何ですか?
ーーえっ?
えっ?
ーーアメリカ大陸原産のコスモスを知らない?
カナダでは聞いたことがありません。和製英語かと思いましたけど、今ネットで調べてみたら、コスモスという英語がありました。
ーーカナダ人からそんな言葉を聞くとは思わなかった。カナダでもガーデニング愛好家がコスモスを育てていると Googleさんが言ってるから、無いわけではないらしい。
カナダってめっちゃ広いんですよ。面積は日本の約27倍もあって、世界で2番目に広い国ですから、私が知らないカナダもたくさんあります。
困った和製英語
ーー日本語を学んでいる外国人に聞くと、和製英語という壁にぶつかって苦戦する人が多い。君も?
ぶつかって傷だらけですよ。和製英語はまったく違う意味になっていますから、正直イラッとします。最近、日本人の友だちとレストランへ行った時、彼女がニコニコして「テンションが上がる」って言ったんですよ。
ーー嬉しくなったり、興奮して気持ちが高ぶったりすると「ハイテンションになる」って言う。
和製英語ではそうなんですけど、英語の「ハイ・テンション」は緊張が高まることを意味します。本来の「ハイ・テンション」は緊張が高まって胸がドキドキする状態なのに、日本語ではワクワクする状態を表します。
核戦争の危険が高まった時に「テンションが上がった」と言いますが、彼女はスイーツを食べたときにそう言ったので、最初は全く意味がわかりませんでした。
ーーたしかに。英語のハイ・テンションには、「嬉しい」とか「楽しい」といった明るい意味はないよね。どっちかと言うと、ストレスを感じて健康に悪い。
そんな日本語のハイテンションを英語にすると?
文脈によりますけど、excited、energetic、hyperですね。

秋の象徴
ーー日本ではススキが秋の象徴で、月見ではこれを飾って団子を食べることになっている。カナダで秋のシンボルってなに?
メープル(カエデ)が色づいてきたり、オレンジを見たりすると秋の到来を感じます。月見のようなイベントで言うなら、カナダではハロウィーンが秋の風物詩ですね。
ーー知人のアメリカ人が言うには、日米ではハロウィーンの中身が違う。アメリカのハロウィーンはおもに子供がお菓子をもらうイベントで、日本では大人がコスプレを楽しむイベントになっている。カナダのハロウィーンはどう?
アメリカと同じですね。子供たちがお化けの格好をして、家を回って「トリック・オア・トリート」と言ってお菓子をもらいます。コスプレを楽しむ大人もいますが、どっちかと言うと、子供向けのイベントです。
ーー和製英語と同じで、海外から伝わった文化も日本では独自に進化してして別物になる。鯉のぼりやひな祭りの起源は中国にある。でも、日本に住んでいた中国人は鯉のぼりやひな祭りを見ても、すっかり日本化されていたから、そのルーツが中国文化にあるなんて1ミリも気がつかなかった。
カナダ料理
ーーカナダはアメリカ以上の移民大国で、人口の約25%が移民で占められている。この割合はG7(主要7か国)の中でもっとも高い。
たぶん、そこが日本といちばん違うところですね。日本は島国で、どこに行っても同じ日本人ばかりいます。
ーーオーストラリアもカナダと同じく移民が多い。前にオーストラリア人から、「日本人に『オーストラリア料理は何ですか?』と聞かれても、思い浮かばないから困る」と聞いた。カナダ料理って何かある?
カナダには世界中の料理がありますが、「カナダ料理」と呼べるものは少ないですね。有名なカナダ料理にプーティンがあります。フライドポテトとチーズカードのかけらにグレイビーソースをかけたファストフードです。あれはとてもおいしいんですけど、残念ながら、日本で見たことありません。

バリ・ヒンドゥー教の神像
日本人の信仰
ーーこれは、バリ島で信仰されているヒンドゥー教の神さま。『浜名湖ガーデンパーク』にはインドネシアの庭があって、今でもこの神像が置いてあるんだ。
目が半開きで“やる気”が感じられませんね。
ーー今日はテンションが低いんじゃない? ところで、日本語で「神」を表す言葉はそれしかないけど、英語には「God」と「deity(ディエティ)」の2つがある。これはどう違う? ヒンドゥー教の神はどっち?
・・・そんなこと考えたことありませんでした。ちょっと待ってください、ネットで調べてみます。えっと、キリスト教は一神教で「God」しか存在しなくて、それ以外のギリシャ神話や神道などの神は「deity」になるみたいです。
ーーということは、ヒンドゥー教の神は「deity」になるのか。ボクは外国人と英語で話すとき、「シントー・ゴッド」と言ってたけど。
それで問題ないですよ。ふつうの会話なら、「God」と「deity」を区別しなくて大丈夫です。「God」はキリスト教の神のことで、小文字の「god」なら神道やヒンドゥー教などの多神教の神を表します。
ーーなるほど。日本語でその道の達人を「◯◯の神」と呼んでいるけど、その場合は「god of ○○」になるのか。
カミが「God」「deity」「god」になるように、英語には宗教に関する言葉がたくさんあるよね? 日本では一般的に信仰に対して、それを信じる人と無宗教(nonreligious)の人の二択しかない。でも、英語はさらに細かく分かれている。
そうですね。カナダにはそのほかにも「atheist(エイシエスト)」や、「agnostic(アグノスティック)」がいます。エイシエスト(無神論者)は神の存在を否定する人で、アグノスティック(不可知論者)は神がいるかどうか分からないと考える人です。
ーー昔、アメリカ人女性から「わたしは宗教を信じていないけど、神の存在は信じている。あなたは?」と聞かれて答えに詰まった。
カナダやアメリカにはいろんな立場の人がいるので、宗教はとても複雑でデリケートな問題です。
ーー日本人は宗教に対する関心が薄いから、きっと言葉の種類も少ないんだ。

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