先月、浜松にいるアフリカ人、モンゴル人、ドイツ人を京都へ連れて行った。
事前にどこへ行きたいか聞くと、やっぱりド定番の金閣寺テンプルを挙げる人が多い。
実際、金閣寺を目の前にすると、あの日本庭園とキラキラ輝く建物は外国人の心に刺さるらしい。
ほかの外国人が写真撮影を終えるのを待っている間、「建物のいちばん上には何があるんですか?」とモンゴル人が質問する。
「あれはこんな鳥なんだよ」と拡大写真で鳳凰を見せると、「なんで屋根にニワトリがいるんですか?」と無邪気に聞く。
古代中国では、この世にすばらしい皇帝(聖天子)が誕生すると、それを祝福するために鳳凰が姿を見せるという。
そんなそんな伝説の霊鳥をフライドチキンと一緒にすんな。
この鳳凰は日本にも伝わって、とてもラッキーな生き物(瑞獣・瑞鳥)とされてきた。
平等院鳳凰堂の鳳凰は1万円札のデザインになっていると説明すると、「おお~」と外国人の間から感嘆の声がもれる。
鳳凰は朝鮮半島にも伝わって、韓国にはそれをモチーフにした伝統的な髪飾りがあるらしい。
それを韓国のアイドルがパリで披露すると、「韓国がわが国の文化を盗んだ!」と中国人が怒り、すると「それはこっちのセリフだ!」と韓国人が言い返して、全国紙がニュースにするような争いに発展する。
そんな中韓のバトルを見て、日本のネット民はこう思った。
・いいぞもっとやれ
・流石の兄さんでも父さんには敵わんよ
・アジア三兄弟の仲の悪さは異常
・そういやそもそも韓国特有の架空の生物って聞いたことないな
日本人にとってこれは対岸の大火事にすぎないが、いまの韓国人はあしたの日本人かもしれない。
日中韓には文化的な共通点がよくあって、その多くは鳳凰のように中国でうまれたから、中国大陸から日本へ「文化泥棒!」の声が上がることは想像できる。
特に金閣寺や平等院のように世界的に高く評価されているものだと、「あの鳳凰は中国文化だ。日本人はわが国の伝統文化を盗んだ」と言い出す中国人がいてもおかしくない。
そうなった場合、「いいぞもっとやれ」は韓国人のセリフだ。
でも、安心してほしい。
日中の鳳凰は別ものだから。
鳳凰はいろんな生き物のパーツをくっつけた想像上の鳥で、一般的に日本の鳳凰は中国のものより小さい。
中国の鳳凰は一般的に、頭が金鶏、くちばしはオウム、くびは龍、胴体の前部がオシドリ、後部がキリン、足はツル、翼はツバメ、尾はクジャクとされる。
それに対して日本の鳳凰は、頭とくちばしがニワトリ、くびはヘビ、胴体の前部がキリン、後部がシカ、背はカメ、あごはツバメ、尾は魚とされている。
日本の鳳凰は、日本人が独自の変化を加えて創造した「新しい鳳凰」だから、これは単なるパクリではない。
中国には無いから、これは日本文化と主張することができる。
韓国の「鳳凰の髪飾り」も独自のアレンジがあれば、それは韓国の伝統文化だ。
韓国から日本へ伝わったものも同じで、日本人がそれに新しい価値観や表現をあたえて、新しく作り変えればそれは日本文化になる。
「アジア三兄弟の仲の悪さは異常」だから、日本が文化盗用の議論に巻き込まれるのはアタリマエと思っていい。
以前、中国人とベトナム人とトルコ人、それと東ヨーロッパからきたリトアニア人と一緒に『浜松フラワーパーク』へ行った時、盆栽を見て、「ボンサイはヨーロッパでも有名な日本文化だ」とリトアニア人が言うと、「え?これは中国文化だ!」と中国人がその場で抗議した。
起源で争うことはできなくても、「盗んだ!」という言いがかりにはダンコ否定していないといけない。
盆栽の起源は中国にあっても、いま欧米人が楽しんでいるのは日本の盆栽だ。
日本人が中国や韓国に抗議するなら、その日本文化の独自性を把握する必要がある。
そうすると結果的に日本人の創意工夫を知ることができるから、「日本は文化を盗んだ!」という指摘はそう悪くない。
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