元徴用工問題の解決案、代位弁済を親日的な韓国人はどう思う？

知人の韓国人女性が10年ほど前、ワーキングホリデーで日本へやって来て、バイトをしながら東京に住んでいた。
このまえその韓国人とチャットをしていて、最近の日本では韓国の食べ物や化粧品なんかが人気で、韓国商品だけを売る「韓ビニ」（韓国とコンビニの合成語と思われ）という店が増えていると話すと、「え？本当ですか！」とビックリする。
そんな現状は、彼女がいたころの日本では想像できないと。
一方で、日本政府がコロナ規制を解除すると、「むぁってました～」と韓国人の観光客が一斉にやってきたように、韓国での日本人気もなんだかんだ言って高い。

だがしかし、政治的には戦後最悪と言われるほど、両国関係が悪化していることは間違いない。
その最大の原因は、2018年に日本企業へ元徴用工への賠償を命じた韓国最高裁の判決にある。
この「徴用」をめぐる問題で、もし韓国にある日本企業の財産が現金化されたら、それはもう後戻りできない一線を越えたことを意味する。

中央日報の記事（2022.06.28）

現金化が現実化する場合、韓日関係は元に戻すのが難しい破局に追いやられるという根本的危機感を両国ともに共有している。

韓日「現金化時限爆弾」どのように止めるか［上］日本企業含む「自発的基金」で徴用補償…代位弁済が急浮上

いまの日韓関係を吹き飛ばす、この時限爆弾の導火線にはすでに火がついていて、「Xデー」は刻々と近づいているから、とにかくもう時間がないのだ。
といってもこの問題は、1965年の請求権協定で日韓両政府が解決を確認しているから、日本側は賠償や謝罪に応じることはできない。
かといって、それでは原告側や世論を納得させられないから、韓国政府は現金化爆弾の暴発を防ぐために、とりあえず第３の機関が賠償金（に相当する額）を原告に渡す「代位弁済」を考えているところだ。
上の記事の出た半年前は、”日本企業含む”ということだったが、最近では、韓国側が財団や企業からお金を集めて原告側に渡すという案が浮上している。
韓国サイドは、後で日本からもお金を出してもらう気らしいのだけど、このへんはまだハッキリしていない。

この案について韓国政府が最後の討論会を開いて、国内の意見をまとめたうえで解決策を発表するようだ。
中央日報の記事（2023.01.05）

韓国政府、「強制徴用賠償」討論会を１２日開催…事実上最後の意見収れん

さて冒頭の韓国人は日本語能力を活かして、いまは韓国にある日本企業で働いている。
そんな彼女に、とりあえず韓国側ですべて負担するという案（代位弁済）について、どう思うか聞いてみると、「韓国と日本で『100：０』では原告や世論の説得がむずかしくて、きっと無理ですね」とにべもない（そっけない）。
ただ、「徴用」をめぐる問題については、日本との合意を破った韓国側に解決の責任があると彼女は考えている。
客観的には日本の主張がきっと正しい。
でもその正しさを押し通して、韓国世論が納得するとも思えない。
”国民不在”のまま政府が日本との関係改善や問題解決に急ぐと、慰安婦合意のように、いつか問題が浮上してきっとまたモメルことになる。

それで彼女の提案としては、いま日本政府がしている対韓輸出の厳格化を解除すればOKだ。
ぶっちゃたけた話、原告側がどこから賠償金をもらっても、または一切もらわなかったとしても、ほかの国民には直接関係ない。
それよりも、”輸出規制”のほうが韓国経済にあたえる影響は大きいし、2019年の「ノージャパン運動」では、これが国民の怒りをかき立ててトリガーになったから、過去の歴史問題より、この輸出問題に強い関心を持っている韓国人は多い。特に若い世代で。
だから、この解除と引き換えのうえので代位弁済案なら、それでも原告側は納得しないだろうけど、多くの国民は受け入れるだろうと彼女はみる。
（個人的にも韓国相手に”完勝”は求めないで、これぐらいの譲歩は必要だと思う。）

そう話す彼女は、自分は日本が好きで、日本企業に働く親日的な韓国人というわりと特殊な立場にいるから、この見方には願望も入っていることは自覚している。
自身の希望的観測もあるのだろうけど、対韓輸出の厳格化が無くなって、日本との関係が良くなることのメリットを強調すれば、韓国にはもともと日本を好きな人は多いから、「徴用」をめぐる問題もきっと解決するとこの韓国人はけっこう楽観的に考えていた。

とりあえず12日の討論会で、何が起きるか見てみよう（とトランプ風に言ってみる）。